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赤い侯爵と白い花嫁  作者: 杉野みそら
第十三章 不穏な影

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あなたは何もかもを奪っていく

ベルダンディ家でのリディアの独白です。


※リディア視点です。

 静寂が支配する夜。


 密かに屋敷に戻ったリディアは冷え切った窓辺にそっと立っていた。

 カーテンの隙間から流れ込む月光が、床の上に冷たく落ちる。


 リディアはその光の中で、そっと囁きを落とした。


「……アリア。あなたはどうしてそんなに美しいの?」


 どうして?あなたは何もかもを持っていくのね。

 そして私から何もかもを奪っていくのだわ……


 微笑もうとした唇は震え、ひとしきり泣いたのか、リディアの頬には乾いた涙の跡がついていた。


「……あなたの笑顔を見ていると、息が苦しくなるの。だって、私が欲しかったものを、全部あなたが持っているから。全部あなたが奪っていくから。あの方の優しさも、ぬくもりも。視線さえ……」


 香水の入った小瓶がコトンと乾いた音を立てて転がる。


「……あなたにはわからないでしょうね。私がどんなにカリス様が欲しいか。私にとって彼は世界の全てだった。彼が笑うだけで、世界が少し明るくなる気がした……でも今は、彼の笑顔を見るたびに、胸が焼けるの」


 リディアは小さく笑う。その笑みがとても美しくて、痛々しくて。


 アリアを傷つけてめちゃくちゃに壊してやりたい!  


 ……その気持ちは、きっともう誰にも、私にも止められない。


 あなたを壊してしまえば、もう誰もあなたを愛せなくなるでしょう?

 そうしたら、カリス様はきっと私を見てくれるはずよ……


 リディアはうっとりと、まるで歌うように静かに囁く。


「ねぇ、アリア。私はあなたが羨ましかった……あなたが羨ましくて妬ましくて苦しくて、いつまで経っても終わらないのーー!」


 だからこそ……終わらせるのよ。


 この苦しみにも、この羨望にも、カリス様への想いも全部、全部……


(待っていなさい。いつかお前に……私が地獄を見せてあげるから)


「アハハハハ!!あはは!!」


 その瞬間、月光がリディアを包んだ。


 淡い銀色の光の中で、リディアは果たして泣いていたのだろうか。


 狂気に陥る中、その横顔はまるで祈るように美しかった……


リディアはどこか憎めない。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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