呪いの終わり
湖畔で対峙したアリアとリディア。アリアはカリスへの想いをきちんと自分の意思で告げる。リディアの前にはもう昔の虚弱で暗かったアリアはいない。
※アリア視点です。
この子、前に会った時とは違う?すぐに倒れて被害者ぶっていたけど。今日のアリアからはそんな印象を受けないわ。
静かでも、確かで強い意思を感じる……
あの儚げで虚弱で暗くて、学校でもいつも一人でいたアリアが!?
ーー心臓が高鳴り、息が詰まった。
だって私は、今初めて自分の意思で言葉を発した。
カリス様のために……
【黙って頷いていれば、大抵のことはうまくいくのよ】
母の言葉に縛られ、これまでずっと頷いていればよかっただけの日々を過ごしていた。これからもそうやって、生きていくと思っていた。でも……それももう終わり……
過去の呪いに縛られていた私はいない。
カリス様が、私を強くしてくれたの!
私は再び呼吸を取り戻し、リディア様をはっきりと見つめる。
(そんなこと……そんなこと……)
「そんなことは許さない!!あなたは一生日陰でコソコソ生きていればいいのよ!!」
その瞬間、リディア様の手元で何かがきらりと光った。
月の光を受けて、銀の小瓶が輝いていた。
(……っ!!)
毒? それともーー。
私はとっさに息を呑んだ。
刹那、風が鳴り、木々の影が揺れた。
顔を挙げたそこには一ーカリス様が立っていた。
「もう十分だ、リディア」
低く、冷えた声。
その声が聞こえた途端、リディア様の表情が凍る。
「……やはり、見張っていたのね」
「アリアを罠にかけようとしたのは君だ。俺が黙っていると思ったか?」
カリス様はゆっくりと私の前に私を庇うかのように立った。その背中が、まるでおとぎ話に出てくる王子様のようで……
私は安心して、ようやく呼吸を取り戻した。
「カリス様、私は……」
「もういい。君はよく頑張った」
そう言って、カリス様は私の肩に手を置いた。
その手の温もりが、震える心を包み込んだ。私は思わず目を閉じる。
ああ、カリス様……
やはり私の言葉は嘘ではなかった。だってカリス様の手はこんなに暖かい。
カリス様の心はこんなにもぬくもりで満ちている……
いつのまにか、リディアは去り、薔薇の香りだけが微かに漂っていた。
カリス様現れ方のタイミングが助けにくるヒーローすぎてめちゃくちゃかっこいい。
アリアもただ守られてばっかりのヒロインじゃないもんね。でもリディアはこのままで終わりそうもないと思うけどな……
最後まで読んで頂きありがとうございました。




