心と一緒に砕けた薔薇
リディアは暴れ続ける。幻想と現実と思い込みの中で。
※リディア視点の独壇場です。
カリス様は私の手を取って、とても自然にダンスを踊ってくださった。
その踊る姿がとても魅力的でスマートで……周りは小さな恋人同士みたいだと囃し立てる。その声に応えるようにカリス様が言ったの。
「私とまたこうして踊ってくださいね」
私はすっかり舞い上がってしまった……
幼い子供の戯言を鵜呑みにしてしまった私は、カリス様の存在だけを頼りに生きてきた。ご両親がお亡くなりになってからはすっかり音沙汰がなかったけれど……
私はずっとお慕いしていた!
そして、つい最近カリス様がご結婚されたと聞いた……
誰が?
誰と?
何が?
私はすっかり混乱してしまった!!
「……ッ……」
胸が焼けるように熱い。息をするたび、喉がひゅうひゅう鳴る。
私は震える指でカップを掴み、無造作に机に叩きつけた。
硬質な音が響き、白磁が粉々に砕ける。破片が床に跳ね、薔薇色のカーペットを切り裂いた。
(カリス様は仰った!!私とまた踊りたいと!それってつまり私と結婚したいってことじゃないの!?)
ねえカリス様!
思い出しただけで鼓動が速まる。頬が熱くなり、視界が霞む。
指先に力を込め、レースの袖が裂けても気づかない。
『アリア・リリオーネ』
アリア・リリオーネですって??
そんな、あのリリオーネ伯爵家の末っ子でいつも薄幸そうで、不気味な白い瞳の……王立貴族学校に通っていた、成績優秀以外には影のように幽霊のように過ごしていた女が?
そんなアリアが、カリス様のお相手?嘘でしょ??
私は机の端にあった銀の花瓶を掴んだ。
中の薔薇がバラバラと散り、花弁が床に赤い雨のように降り注ぐ。
はぁっ、はぁっ……
『私とまたこうして踊ってくださいね』
ねえカリス様、嘘でしょう?誰か嘘だと言って……
うそ、うそ、うそ、嘘嘘うそうそうそうそうそうそうそうそうそうそ!!
もう少しリディア視点のリディアの独白は続きます。
最後まで読んで頂きありがとうございました!




