リディアの過去
アリアが倒れ、舞踏会はお開きになってしまっていた。リディアは一人、屋敷に戻ってイライラしていた。
※今回の話はやや説明文ぽくて読みにくいかもしれません。
※リディア視点です
リディア・ベルダンディの屋敷は、王都の近くに堂々と構えている。
高く聳える門、磨き上げられた白亜の壁。
広大に広がる庭には真っ赤な薔薇ばかりがいくつも植えられている。その薔薇は血のように艶やかで、棘は光を呑むほど鋭い。
その名も「リディア」まさに自分の城だと言わんばかりにその性格の激しさと自己顕示欲の強さを庭でも表現しているのだ。
その屋敷の中で、リディア嬢は狼狽える侍従たちをよそに、一人右往左往していた。
応接間はリディアがひとしきり暴れたのか、砕けたティーカップの破片が床に散っている。
香水の甘い香りと、焦げた蝋燭の匂いが入り混じり、息苦しいほどに濃い空気が漂っていた。
「恥をかかされたわ!あの二人のせいで!全くなんなの?せっかく招待してやったのに!」
「リディア様、落ち着いてください」
侍女の一人が声をかける。
「ほっといてよ!誰があなたを雇ってると思っているの!あなたの主は誰?この屋敷の主人は誰?リディア・ベルダンディよ!」
「出過ぎた真似をして申し訳ないです……」
侍女は小さく身をすくめる。
その怯えた表情に、リディアは妙な快感を覚えた。
(そうよ……誰も、私を見下してはいけないのよ)
ムカつくムカつくムカつく!!久しぶりに見たけど、やっぱりムカつく。
あの女ーーアリア。
昔から私の好きな人はいつもアリアを遠巻きに眺めていた。
あの人もあの人もあの人も!
そしてーーついにカリス様まで。
ずっと前からお慕いしていた。
* * *
あれは私がまだ社交界にデビューして間もない頃だった。
オドオドしているつもりはなかったけど、私は必死に周りに見劣りしないように、お父様に恥をかかせないようにと虚勢を張っていた。
でも内心は人と香水の香りと、噂話の重さで押し潰されそうだった。
その時、私の前にまるで王子様のように現れたのがカリス様だった。
艶々の黒髪にまるでピジョン・ブラッドのような赤い瞳の……
そうは言っても、アリアは覚えてないのになぁ……
一体何がリディアをこうさせたのか。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




