悲しまないで、私のカリス様
珍しく落ち込んでいるカリスの姿を見てアリアは……
※アリア視点です。
「カリス様ごめんなさい、私……カリス様にご迷惑を……」
「いや。俺の方こそごめん。リディア嬢の性格を知っていたのに。アリアを連れて行ってしまった」
そんな、カリス様はちっとも悪くないのに……
むしろカリス様は私を守ろうとして、怒ってくださっていたのに。
「俺は……君をあの場に連れていくべきじゃなかった」
カリス様がもう一度噛み締めるように言う。唇が悔しげに歪む。
(カリス様のこんな顔、初めて見た……)
こんなにも悲しみと、後悔の滲む顔は初めて。いつも凛としていらっしゃるのに。
「いいえ、行きたいと言ったのは私です。……私はカリス様と一緒にいたくて、舞踏会に行ったんです」
だからそんな顔をしないでください。
「それでも……君を傷つけたのは、あの場に連れて行った俺の責任だ」
その瞬間、胸が詰まった。
カリス様の指が、私の頬に触れる。
(カリス様の手、暖かい)
「……もう二度と、君の傷つく事や、悲しませるような事はしないと誓ったのにな」
「カリス様……そんなふうに思ってくれていたなんて、ありがとうございます。私はその気持ちだけで嬉しいです」
「俺は自分が情けないよ。まさかリディア嬢があんなに口汚く君を詰るなんて」
カリス様が珍しくひどく落ち込んでる。まるでご自身を責めるように、視線は伏せたまま。
……私も、ただ守られているだけじゃダメだわ。
カリス様といつも一緒にいたいのなら、怖くても……言葉をうまく紡げられなくても、自分の言葉で立ち向かわなきゃ。
すぐに倒れるような虚弱な体ではいけないわ!
「……カリス様、私リディア様にもう一度会ってみようと思います」
自分で決意したことなのに、声が震えた。
「アリア、君は何を言っているんだ……」
カリス様が呆れたように短くため息をこぼす。
「リディア様は私に個人的に恨みがあるような物言いでしたわ」
「駄目だ。今のアリアをリディア嬢に会わせるわけにはいかない」
「でも……」
いつか直接話さないといけない。
私のカリス様が……こんなにも顔を歪めて悲しみに沈んでいらっしゃるのだから……
いつか直接リディアとは話し合わないといけませんね。だってこのままじゃ何故憎まれているのか分からないもんね!
最後まで読んで頂きありがとうございました。




