カリスの後悔
アリアはリディアの罵倒にショックを受けて倒れ、そのまま寝込む。そのそばにはカリスがいた。
※アリア視点です。
目を開けたとき、見慣れた天井がぼんやりと霞んで見えた。
胸の奥に冷たい痛みが残っていて、呼吸をするたび、微かに喉が焼ける。
(ここは……私の部屋……?)
かすかな焦げ茶色の香り。
それは、カリス様の紅茶の匂いだった。
(カリス様、すぐ近くにいるの?)
ゆっくりと手を動かすと、ふかふかの布団の手触りと……
「……カリス様……?」
カリス様はベッドに突っ伏して寝ていた。
(カリス様、そばにいてくれたの?)
さらりとその黒髪を撫でる。
私、どうしてここにいるのかしら?確か、カリス様と一緒に舞踏会に行って……それで……
【まあ……相変わらずお人形さんみたいに整った顔ですこと。アリア?】
ドキッと、心臓が跳ねた。
(そうだ、私は確かにカリス様と一緒に舞踏会に行って、そこでリディア様に会って……)
【あなたは見た目も儚いし、大人しい性格だから、女を虐げて悦に浸りたいサディストな男達の注目の的だった】
違う、そんな事ないわ。
私はいつも目立たないようにしていたもの!
【どうせカリス様も、その虚弱で薄幸そうな雰囲気で虜にしたのでしょう?】
「違うわ!!」
「……ッアリア!起きたのか」
私の叫びに驚いたカリス様が顔を挙げて、私の頬を撫でた。
「……何か、怖い夢でも見た?」
カリス様は血の気が引いて、おそらく真っ青になっているだろう私の顔色を伺っていた。
「カリス様、私……リディア様に」
「すまない……怖い思いをさせたな」
カリス様……ものすごく悲しみに沈んだような声。どうしてそんなに悲しい声を……
「あの……リディア様は……」
カリス様は私の顔を抱き寄せ、耳元で囁きを落とす。
「いいんだよ。もう……アリアはリディア嬢に酷い事を言われて倒れたんだ……」
「……そうだったんですか、だから私は寝て……」
カリス様に言われてハッと気付く。もしかして、カリス様にご迷惑をおかけしたのでは……?
「カリス様ごめんなさい、私……カリス様にご迷惑を……」
「いや。俺の方こそごめん。リディア嬢の性格を知っていたのに。アリアを連れて行ってしまった」
アリアは虚弱だから倒れても仕方ないんだよ。
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