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赤い侯爵と白い花嫁  作者: 杉野みそら
第九章 狂気の隙間

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闇には静けさが似合う

カリスがアリアを見つけた頃、ランスはカリスの変わりように一人驚いていた。


※前半ランスの独白

*印以降はカリス視点です。

 城下町の片隅。街の喧騒から離れた路地裏で、ランスはさっき首に押し当てられたナイフの跡を指でなぞり、乾いた笑いを漏らした。


「……は、あいつ本気で殺すつもりだったな」


 あいつのあんな目は、初めて見たかもしれない。


 カリス・ヴァレンティ!


 いつもお行儀が良いだけの澄ましたヤツだと思っていたが。


『アリア!……クソッ!』


 あいつは汚い言葉も人目も憚らず使っていた。前まではそんな言葉を使う奴らを軽蔑していたのに?


『もしアリアに何かあったらその時は……お前の命は無いと思え』


 俺にナイフを突き立ててきた、あの時のカリスの目を見たか?

 赤い目が血走り、身も心も凍りつくような恐ろしい目を!


 俺は雲ひとつない青い空を見上げて呟く。


「……あれは、何の目だったか。まるで獲物を逃さない獣のような……」


 考えて俺は身震いをした。


 全く、恐ろしいねぇ……恋というのは。

 あそこまで理性的だった人間を狂わせてしまう……


 アリアという女性はどんな女だ……?


 あんなに冷静で、いつも澄ました目をしていたカリスを、あそこまで狂わせてしまうアリアとは……


 一見おとなしそうな顔をして、どのような毒を使ったのだ??


 ーー俄然興味が湧いてきた。


 俺も大概だな。


 人妻に興味が湧くなんて……


 * * *


「戻ろう、アリア」


「……はい」


 肩を並べて歩き出す。


 いつのまにか昼になっていたようだ。太陽の光が街を染め、穏やかな風が頬を撫でた。

 通りすがる人々の笑い声、パン屋から漂う甘い香り。


 アリアは時折こちらを見て微笑む。


 その微笑みを見るたび、心の奥で俺の何かが軋む。自分の中で少しずつ壊れていく音が聞こえる。


 それでも、構わないと思った。

 アリアを守るためなら、俺は壊れてもいい。


「アリア」


「はい」


「……今日、少し寄り道をしよう。君に似合いそうなドレスを見つけたんだ。前に言っていただろう。お出かけに着ていくドレスがないと……」


 俺は今のままでも平気だがな。アリアの光には、どんな豪華に着飾った娘でも遠く及ばない。


 その瞬間、アリアの瞳がぱっと輝く。


「いっ、いいんですか!?」


 俺は思わず笑ってしまった。先程までの怯えきった顔が嘘のように、アリアはもう笑顔を取り戻したようだ。


 それと同時に、俺の心にも暗いものが降りてきた。


 アリアのこの笑顔を守るためなら俺は何だってする……

 俺の邪魔をする奴がいたならその時は……


「カリス様?」


「ん、ああ、アリア……行こうか」


 俺は笑えていただろうか?

 

 俺のこの心の闇は、アリアに知られてはいけない。

 闇には静けさが似合う。太陽のような眩しい光は似合わない。


 アリアと手を繋いで歩く。


 いつのまにか俺の心は、不思議と凪いだ海のように穏やかになっていた。


 アリアが隣にいるから……


カリスにとっての光であるアリアにカリス様の歪んだ愛を知られるわけにはいかないけど、いつかは知ることになるのかな?ランスは相変わらず気持ち悪い。


最後まで読んで頂きありがとうございました。



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