その愛は囁くように甘く
やっとアリアを見つけたカリスはアリアの無事を確認して安堵するが……
※カリス視点です。
やっと見つけたアリアは道の端、ひと気のない街の隅で震えていた。こんなところにいたのか……
「アリア……」
呼びかけるとアリアはびっくりしたように肩を震わせた。
「……カリス様……」
俺に気付いて立ち上がったアリアはこちらの様子を眺めている。ランスがいないのを確かめているのか?
「アリア、もうランスはいないよ。こっちにおいで」
「……ッ、カリス様」
俺がそう言うと堰を切ったようにアリアは俺の胸に飛び込んできた。腕の中で小さな体が震える。
やっと、やっと見つけた。
無事でよかった。
だがーー
安堵の奥に、じわりと別の感情が滲む。唇の奥に、鉄の味を感じた。
「……アリア、何で逃げたの」
アリアが驚いたように顔を挙げる。
「えっ、なんでって……ランス様が……」
「あいつが、何」
舌打ちしたくなる。あの時のことが脳裏に浮かぶ。
『おや、残念。もう少しでキスできたのに』
ーー吐き気がする。俺の妻に何ということを聞くのか……
「ねぇ……答えてよ」
「ぁっ……あの……」
俺はアリアの髪を優しく撫でながら唇を寄せ、低く囁く。ことさら優しく、怯えさせないように。
「……ランスが怖かったの?……それとも俺が、怖かったの?」
「あ……私……ランス様を見ると怖くて体が勝手に……、ごめんなさい……」
「どうして謝るの?」
優しい口調で、まるで言葉の檻でアリアを閉じ込めるかのように囁く。
とっくに許しているのに許さない。唇をなぞって続きを促すと、可愛い口から小さな声が漏れる。
「……カリス様の、そばを離れたからです……ぁ」
「……そう」
喉を撫でる。子猫をあやすように。
アリアは安心したように目を細めた。俺の中の何かが、ゆっくりと甘く壊れていく。
(カリス様が、私の喉を撫でて……まるで子猫にするみたいに優しい手つき……)
「……いい子だね。アリア……」
(よかった……カリス様、怒ってない……)
「……じゃあ、『これからは何があっても、カリス様のそばを離れない』って言ってみて」
「えっ」
俺は口だけで笑みを作る。
アリアがカリス様の中の何かを壊してしまったのかな?
それとも最初から壊れていたのかな……
最後まで読んで頂きありがとうございました。




