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赤い侯爵と白い花嫁  作者: 杉野みそら
第六章 カリスとアリア

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その声を聞かせて

アリアはカリスの命令に逆らおうとしなかった。それが余計にカリスを掻き立てる。


※前半カリス視点です。

※米印以降はアリア視点です。

「は、い……//」


「……いい子だ、アリア。これからはお茶をしたくなったら俺の部屋に来るんだよ」


 できる事なら一日中俺の部屋に閉じ込めておきたい。でもそれだとアリアは前と同じ状況になるだけじゃないか。


「クソッ……」


「あの、カリス様……」


「?」


 アリアは椅子に座り直し、一口大に切ったお菓子を指した。


「このお菓子を食べなきゃ。ミツキにも言われたんです。私は太らないといけないので……」


 ん?……この娘は今の事を何とも思っていないのか?我ながら結構すごい事をしたと思うが……


「あの……カリス様?食べさせてくださいませんか?」


 そう言うとアリアは可愛い口を開く。


「……なっ!いや!それは良くない!!」


「えっ……でも今さっきカリス様は……」


「それとこれとは別なんだ!」


 アリアの突拍子もない申し出に、つい声が大きくなってしまう。


「カリス様、怒らないで……」


 アリアがまた瞳を潤ませる。


「……怒ってはいないよ。ただ驚いたというか……突然の事で」


 驚いた。アリアは時々大胆なことをする。それも無意識だ……


「ゴホン、仕方ないな……口を開けて……」


 俺はアリアの口に合わせて一口大にしてある菓子を摘んだ。


「はい、カリス様……」


「…………ッ!//」


 そうするとアリアは目を閉じ、まるでひな鳥のように口を開けた。


(あまりに素直すぎて、心配になるな……)


「まあ、可愛いからいいか……」


 俺はそう呟くと、アリアの口に菓子を持っていく。


「……うまいか?」


「……すごく美味しいです!」


「そうか……」


 幸せそうな顔をしてお菓子を食べるアリアに、俺はいつのまにかすっかり毒気を抜かれていた。


 * * *


 カリス様、時々すごく苦しそうな顔をなさる時がある。


 一体何故……?


 私は、カリス様が私を気にかけてくれることがとても嬉しい。

 実家では私が一人でお茶しようが、何をしようが気にかけてくれる人なんていなかった。


『アリア……』


 あんなに優しい声で、私の名前を呼んでくれる人もいなかった。


 私は、カリス様が褒めてくれるのがとても嬉しい……実家では、私を褒めてくれる人なんていなかった。


 カリス様。ずっと寂しかった私の心に入り込んで、暖かい風を吹かせてくれた方。


 カリス様の言葉なら、どんな事でも従いたい。


 (私をもっと褒めてください)


 でも勘違いしちゃダメ、アリア。


 カリス様は不遇な境遇だった可哀想な私に情けをかけてくださってるだけ。


 そのうちカリス様は私に飽きて、他の人と幸せになるかもしれない。


 "ズキッ……"


 (何で私、傷ついてるんだろう……)


 それでも今だけは、カリス様の声だけを聞いていたいの……


 最初で最後のわがままです。

 せめてあと少し、夢を見させて……


 その声で名前を呼んで欲しい。カリス様。

アリアがカリスに従っているのは、自己肯定感の低さからでした。泣


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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