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赤い侯爵と白い花嫁  作者: 杉野みそら
第五章 暗い影

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氷の侯爵・カリス

馴れ馴れしくアリアに話しかけるランスに、カリスは静かな怒りを見せるのだった。


※前半部分は前回と被る部分があります。

※カリス視点です。

 アリアは俺を見つけた途端、涙をその瞳に浮かべて俺の胸に飛び込んできた。


「おっと」


 小さく震えながらーー必死に縋るように……


 腕が自然と彼女の背に回る。抱き寄せると、小鳥のような鼓動が手のひらへ伝わってきた。


(アリア……この体温と小さな体……少し離れていただけなのにもう愛おしい)


 大丈夫だ、もう離さない。

 俺は顔を上げ、ランスを見やった。


 静かに、極めて冷静に。ひとつの笑みもなく。


 ーー氷の侯爵……


 ランスはゴクリと生唾を飲む。


(これが氷の侯爵たる所以か……噂は本当だったのだ!なんと恐ろしい。目が合っただけで殺されそうだ!)


「な、なんだよ。俺を殺さんばかりに睨んできやがって……言っとくけど俺は……」  


 ランスはなおも吠え続ける。


「……黙れ。戯言は終いだ」


 ランスがチラリとアリアを口惜しそうに見た。


 ……こいつ本当に殺してやろうか……?


 俺がランスの視線から守るようにアリアを背中に隠すとランスはようやく諦めたようだった。


「ははっ、参った参った。降参だ。今日のところは……」


 ランスはまだ惜しいようで、情けなく吠える。


「……は、まるで負け惜しみだ。早く立ち去れ」


「……クソッ」


 吐き捨てるような軽口と舌打ちをして、ランスは逃げていった。


(大丈夫か?アリア……)


 俺は腕の中で小刻みに震えているアリアにことさら優しい声音で語りかける。


「……カリス様……」


「もう大丈夫だ」


 アリアのこわばった体から力が抜けていくのがわかった。


「ああ……カリス様」


 俺にしがみつきながら、アリアは安堵の息を漏らした。


 アリアの見た目に反して高い体温が、俺の怒りで凍った心を溶かしていくようだった。


(誰にも触れさせない。アリアは俺のものだ……)


 俺は静かに息を()いた。

カリス様の噂は本当だったんですね!


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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