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赤い侯爵と白い花嫁〜愛を知らない二人が描く、歪な愛の物語  作者: 杉野みそら
第五章 暗い影

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カリスの怒り

アリアとはぐれたカリスは、人目も憚らず焦りをあらわにした。そこでカリスが目にしたのはアリアに手を伸ばすランスだった。


※カリス視点です。

 アリアの手を離した覚えはなかった。

 だがふと振り返った瞬間、そこにアリアの姿はなく、代わりに波のような人混みだけが揺れていた。


 俺は焦った。血の気がザァーっと引いていくのがわかる。


「クソッ、アリア……どこへ行った」


 俺の声に人々が(ざわ)つく。


 "氷の侯爵"と言われていた頃の俺しか知らなかった人からすれば、俺の取り乱した様子はさぞ見せ物になっただろう。扇子(おうぎ)で口元を押さえて語り合うご婦人方。


 だがそんな事はどうでもいい。俺は人目も憚らずアリアを探した。


「アリア……アリア。どこに行った……」


 ……その時。聞き慣れた、しかし耳障りな声が聞こえてきた。


(ランス……)


 女好きなヤツの事だ。ランスなら何か知ってるかもしれないな……


 俺は見た。ランスが伸ばした手の先にいたのは……誰あろうアリアだった。

 俺は一気に頭の中が真っ白になり、同時に氷点下まで体温が下がったような感覚を覚えた。


 アリアの細い肩は強張り、逃げるところもなく怯えるばかりだ。


(アリア……!今行く!)


 だが足元はふわふわとおぼつかない。まるで地面と足が同化したかのように早く走れない。頭の中でぐわんぐわんと音がする。


 アリアに触れるな!!そればかりが思考を支配する。


(やめろ……アリアに触れるな……!俺のアリアに馴れ馴れしくするな!)


 その瞬間、俺の中で何かがぷつりと音を立ててキレた……


 俺は無言のまま歩み寄り、ランスの肩に手を置く。


「そこまでだ。ランス」


 自分でも聞いた事のないほど低い声が出た。


「……おや残念……王子様の登場か……」


 振り向いたランスの顔が引き攣り、一気に青ざめた。


「ひっ」


 俺を見た途端ヤツは小さな悲鳴をあげたかもしれない。


 ……知るか。


 アリアは俺を見つけた途端、涙をその瞳に浮かべて俺の胸に飛び込んできた。


「おっと」


 小さく震えながらーー必死に縋るように……


 腕が自然と彼女の背に回る。抱き寄せると、小鳥のような鼓動が手のひらへ伝わってきた。


(アリア……この体温と小さな体……少し離れていただけなのにもう愛おしい)


 大丈夫だ、もう離さない。

 

 俺は顔を上げ、ランスを見やった。


カリス視点での二人を見た様子です。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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