ランス・レオンハルト
階段を降り、二人は広間の方へ。そこで待っていたのはこの晩餐会にカリスとアリアを招待した男。ランス・レオンハルトだった。
※カリス視点です。
二人が階段を降りると、楽団の演奏が始まった。ヴァイオリンの音が柔らかく空気を満たす。
「わぁ……素敵ねぇ……」
「……」
「ぇ……」
カリス様が足を止めた。一瞬で目つきが冷たいものになり、その視線はある一点を見つめていた。
(……カリス様のこんな冷たい目……初めて見るわ)
* * *
「やあ、カリス!やっと会えたな!驚いたよ。結婚しただなんて……」
「ランス……悪かったな。式はあまり派手なものにしたくなかったんだ」
ランス・レオンハルト。
侯爵家の次男であり、女と金の話に事欠かない、軽薄な男。金髪を後ろで束ね、気取った笑みを浮かべている。
「お隣が、奥方様ですな。いや……これは美しい」
ランスの言葉に、アリアはどうしていいかわからないようで、俺の背に隠れるように身を縮めて俺の手を硬く握った。
それを見て、俺は少しだけ優越感を感じた。
アリアを安心させる事ができるのは俺だけ……
「紹介しよう。アリア・ヴァレンティ。俺の妻だ」
「……!!//」
少々声が大きかったか。ホールの空気が変わり、ざわめきが起こり、視線がこちらへと集まる。
ちょうどいい、こんな機会だ。皆にもアリアを見ていただこう。
……妙だな。先程まではアリアを誰にも見せたくなかったのに。今は見せびらかしたくてたまらない。
この美しくて可愛い人が俺の妻だと。
さあ思う存分嫉妬するがいい……
アリアの光には誰にも敵わないだろう。
「……//」
アリアが再び緊張して俯いてしまった。だが俯いたその姿さえ他の誰よりも美しかった。アリアが恐る恐るといった感じでランスの前に立つ。
「は、初めまして……アリアと申します」
「……っ!あ、ああ……こちらこそよろしく」
ランスは一瞬面食らったような顔をした。
当然の事だ。アリアは緊張しているとはいえ、その挨拶の仕方は完璧だった。
俺は自分のことのように誇らしかった。
そう言えばアリアは、行儀作法だけは厳しく教え込まれたと言っていたな……
「……いや、実に美しい奥方じゃないか。その白銀に輝く髪と瞳は、まるで雪の妖精だ」
(ふん、当然だ……本来ならお前などが話しかける事すら汚らわしいのだ!早く立ち去れ。ランスみたいな軽薄な男は俺のアリアに一目でも入れて欲しくない……)
「……そうだろう」
俺の声はまるで地の底から聞こえるかのように低く響いた。
新たな登場人物・ランス。パッと見た感じは好青年だけどこういう男に限っt
最後まで読んで頂きありがとうございました。




