崩れゆく理性
美しいアリアを誰にも見せたくなくて、カリスはどんどんどす黒い感情に支配されていく。
※カリス視点です。
どうしたというのだ俺は……こんな気持ちになったのは初めてだ。
アリアを誰にも見せたくなくて、閉じ込めたくなる。
泣かせたくないのに俺の言葉で泣かせたくなる。
それどころか、アリアの純粋な気持ちにつけ込んで、俺に依存させようとしている。
アリアが俺だけしか見ないように、俺だけ……
(……アリアには俺しかいない!)
ーー暗い気持ちが押し寄せてくる。
これは独占欲だ。醜くてドロドロの黒い感情だ。
「カリス様?」
その時、アリアの声がしてハッと思考が引き戻される。
「どうしたんですか?気分でもお悪いですか?」
「……いや、平気だよ。ありがとう」
アリアはふわっと微笑んだ。可愛いな、クソッ……
……ついつい下品な言葉が出てしまう。それというのもアリアが可愛いのがいけない。
「……よかったです。ずっと怖い顔をしてらっしゃるから、怒っているのかと思いました」
アリアは俺の気も知らず見当違いなことを言う。それさえも可愛いかった。
「怒ってなどいない。ただ、嫌なだけだ……」
「嫌?何がですか?」
「……君を見る皆の視線が嫌なんだ……」
「私を見る……視線……?」
「……気付いていないのか?さっきからずっと皆に見られているぞ」
「まぁ、気付きませんでした!でも私はカリス様が……」
心臓の音が高鳴った。アリアの次に続く言葉を期待してしまう。
「俺が、何……?」
わかっているのに聞く。今日の俺は本当に意地が悪い。
でもアリアの声で聞きたいのだ。仕方ない。
「私はカリス様が見てくだされば、それだけで嬉しいので……//」
「へぇ……」
どうしたらいい。
「アリア……」
このどうしようもなく暗い気持ちを。
「キスしたい……」
アリアの可愛いさに振り回される俺を。
「……こっ、こんなところで//皆んな見てるのに……」
俺の言葉でくるくると表情を変える君を。
「……ふふ、では見せればいい」
「そんな……//」
どうすればいいのかわからない……
「……んっ//」
死角に素早く入って、頬を染める可愛いアリアにそっと口付けた。
アリアが可愛いのがいけない。アリアが逃げないのが悪い。
「もう……カリス様ったら//」
照れて真っ赤になるアリア。俺だけしか知らないアリア。
「……たまらねぇな……」
「えっ」
「いや、なんでもない……」
……依存しているのは俺も一緒かもしれない。アリアの言葉に、仕草に、微笑みに、こんなにも振り回されて。
以前の俺からしたら考えられないことだった。
"氷の侯爵"と呼ばれていた頃の自分からは想像できなかった。
アリアが俺を変えたのか。先程まで尖っていた心のささくれが、アリアの言葉でほぐれていくのを感じた。
カリス様は完全に言葉遣いが崩れてます。
これもアリアのおかげ?なのでしょう。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




