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赤い侯爵と白い花嫁  作者: 杉野みそら
第四章 森はどこまでも深く

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枯れ木に水を

アリアは森の奥にひっそりと佇む枯れ木を見つけた。


※アリア視点です。

 カリス様となんでも一緒……。ずっと一人でいた、これからも一人だと思っていた私には縁遠い言葉だと思っていたけれど……


(今の私にはカリス様がいる……!)


 思わずカリス様に抱きつく。


「……(可愛い……許す)何を見ていたんだ?」


 カリス様が私の頭にポンと手を乗せて、仕方なさそうに眉根を下げた。


「……//……」


 なんだろう……すごくくすぐったくて、嬉しい。


「……あの枯れ木を見ていたんです。あの木だけ枯れていたので不思議に思って……」


 カリスの目の前に、葉も落ち、命の色もない灰色の木が黒々と立っていた。


「ああ、この木か……この木は確か……」


「カリス様、何かご存知なんですか?」


「……俺の家に古くから伝わる書物にこう記してあったーーこの森の奥に、かつて『願いの木』があったと。滅多に花を咲かせないその木が花を咲かせた時、願いが叶うーーと。この木のことだったのか……」


「わぁ!なんて神秘的なお話なんでしょう。願いって……何でもかしら?」


 私は胸の前で手を組んで驚きに想いを馳せた。願いを叶えてくれる木なんて素敵……!


「……さあな……もう何百年もこの木には花が咲いていないから、書物に書いてある事も嘘かもしれないしな」


 カリス様ったら……ずいぶんと夢のないことをおっしゃるのね……


「……嘘かもしれない」と言うカリス様に、私はふふっと微笑んだ。


「でも、もし本当に願いを叶えてくれるんだったら素敵だと思いませんか?」


 私は水筒の水をコップに入れて枯れ木の根本に優しくかけた。 

 黒く乾いた土に触れた瞬間、水は吸い込まれていった。


「アリア?何を……」


「私、この木が花を咲かせた姿を見たいわ。カリス様にも見てほしいです。一緒に……」


 そう言ってカリス様を見上げると、カリス様は一瞬言葉を失ったように黙り込んで……次の瞬間、仕方なさそうに微笑んで私を抱きしめた。


「ッ!!//」


「アリア、君は可愛いな……」


「かっ、かわ……//」


「本当に可愛い、アリア」


 この木に花は何百年も咲いていない。それでも水をやり、咲いたら俺に花を見せたいなどと……なんといじらしい。


(きっとこの木は枯れたままだろう。けどそれでも……アリアの気持ちが嬉しいのだ)


「……カリス様……//」


 その時、一陣の風が吹いた。黒い森の木々がざわめき、光が二人の間をすり抜ける。


 ふと見ると、枯れ木の先端に一粒の露がきらりと光ったような気がした……


この木に花が咲く姿をカリスに見てもらいましょう!


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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