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赤い侯爵と白い花嫁  作者: 杉野みそら
第四章 森はどこまでも深く

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黒い森とカリス様

黒い森へピクニックに来た二人。カリスが梨をアリアのために切っていると……


※アリア視点です。

「……アリア、これも食べるか?」


 そう言ってカリス様が手にしたのは梨だった。


「わぁ!美味しそう!食べます!」


 私がそう言うと、カリス様はナイフを取り出して器用に皮を剥き始めた。

 カリス様は先日から私を太らせようと頑張っている。私が痩せすぎているのを心配して……


(カリス様……私はその気持ちだけで嬉しいのに……)


 風が吹いて私の髪を撫でた。森のいい香りがする。気持ちいい……

『黒い森』ーー不吉な名前とは裏腹に、全てを包み込んでくれるような優しい木々たちがまるでカリス様みたいで……


「……カリス様みたいですね、この森」


「えっ!?」


 私が呟いた声に驚いたカリス様が持っていた梨を落っことしそうになる。


「私、少し奥の方まで見て来ます!」


「アリア、待て!まだ食べてないのに!!」


「すぐ戻ってきます!!」


 自分で言った言葉なのに、私は照れてそれを誤魔化すように森の奥へと足を運ぶ。


「……あれ?」


 しばらく歩いていると、視線の先に一本の枯れ木があった。


「この木だけ枯れてる……」


 周りの木々が青々と葉を茂らせる中で、その木だけが黒く、命の色もまるでなかった。


「カリス様が言っていた昔の災厄の名残りかしら?でも周りの木々はなんともないのに……」


『かつてこの森は、災厄の後で長い間枯れていた。黒い森というのはそこから呼ばれるようになった。だが今は再び木々は宿り、森は命を取り戻したのです』


 私はカリス様の言葉を思い出していた。


「ふふっ、あの頃はまだカリス様敬語を使ってたわ……」


 ここ数日で、私とカリス様の距離は縮まったのかな?……縮まってるよね?キ、キスもしてるし……//


 その時、枯れ木の隙間からまだ生きているかのような生命の輝きを一瞬だけ見た気がした。


「……まだ生きてる?」


(周りは生き生きと輝いているのに、この木は枯れたまま……)


 その姿が過去の私と被って見えた。兄弟姉妹は多いけど、いつも一人ぼっちだった私と……


 私は枯れ木がほっとけなくて、そっとその木の根本に触れた。


「アリア!一人で勝手に行くなよ……」


 カリス様が少し怒り気味に追って来た。


「カリス様……!ごめんなさい……怒らないで」


「怒ってはいないよ。ただ心配しただけだ……何でも一緒って約束しただろう?」


「ふふっ、そうでした」


 カリス様となんでも一緒……。ずっと一人でいた、これからも一人だと思っていた私には縁遠い言葉だと思っていたけれど……


(今の私にはカリス様がいる……!)


今まで一人で頑張ってきたアリアは誰かと一緒に何かをすることが嬉しいのです。

枯れ木が意味ありげに立っていますね……


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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