好きな時間に食べて寝て
屋敷に戻った二人。アリアはこれからは何でも一緒にしたいとカリスに提案する。
※カリス視点です。
森を抜けて屋敷に戻ると、白い息がまだ空に溶けていくような時間だった。
窓辺の花々は夜露をまとい、朝の光を受けてきらきらと輝いている。
すべてが新しく、生まれ変わったように見えた。
「わぁ!もう食事が用意されているわ!美味しそう」
「うちの女中たちは優秀だな」
アリアは侍女の案内で俺の隣に座る。
(カリス様と一緒の朝食……夢みたい。私はもう一人ではないのね)
アリアが俺の方を振り返って、意を決したように口を開く。
「カリス様……私、これからもカリス様と一緒に何でもしたいわ。何でも……」
「ああ……一緒にしような。なんでも」
アリアの顔がぱっと明るくなり、笑顔で俺の胸に飛び込んできた。
まるで子どものようだ。いや実質子どもみたいなものか。アリアはずっと満足に散歩にも行けず、じっと部屋の隅で孤独に過ごしてきたのだから……
「……一緒だ。これからは何でも……」
俺がアリアの髪の毛を撫でながらもう一度呟くと、腕の中のアリアが涙ぐみながら小さく頷いた。
(もう二度と、アリアを傷つけさせない。たとえ誰であっても……)
「と、その前に……」
「……??」
アリアが不思議そうに顔を挙げる。可愛い顔だな……いやそうじゃなくて……
「まずは腹ごしらえが先だ。何度も思ったことだがアリアは痩せすぎなんだ。これからはもっと太ってもらう!」
「ええっ!?ふ、太ってもらう?私そんなに痩せてますか??」
「ああ、おそらく実家でろくなものを食べてこなかったのが原因だ。これからはこのヴァレンティ家のしきたりに従ってもらう。まずは思い切りたらふく食べて好きな時に寝て過ごしてもらおう」
「ほほほ、それは素敵なご提案でございますね!」
側に控えていたミツキが耐えられないといった感じで笑いだす。
「アリア様は愛されていますね。ねえカリス様?」
「えっ??」
「ミツキ、余計なことを言うんじゃない」
ミツキが口元を押さえてくすくす笑うのを横目に、アリアは頬をほんのり赤く染めてうつむいた。
湯気の立つスープの香りが、あたたかく二人の間を満たしていく。
幸先がいいですね!これからどんどん二人の距離が縮まってくれると嬉しいな。
カリス様は中々愛を言葉にして出せないタイプです(今更)。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




