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赤い侯爵と白い花嫁  作者: 杉野みそら
第三章 あまりに甘いキス

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新しい思い出の始まり

泣き疲れて寝てしまったアリア。その横でカリスは何を思うのか。


※カリス視点です。

 夜が降りていた。


 森の奥の小さな宿に明かりがともり、外では虫の音が絶え間なく続いている。

 泣き疲れたアリアは、今、俺の腕の中で静かに眠っていた。


 泣いていた時の余韻がまだ残っているのか、瞼の端には涙の跡がうっすらと光っている。小さな手は、眠ってもなお俺の服の端をぎゅっと掴んだままだった。

 まるで、離したらまたひとりになってしまうとでも思っているかのように。


(こんなに小さな体で、忌々しい記憶をずっと引きずって、耐えてきたのだな。アリアは……)


 俺はアリアが泣いて叫んでいた言葉を思い出していた。


『愛されたかった』


 この言葉は、俺にも言える。


 両親を早くに亡くし、以来俺は一人で領地を守ることに必死だった。


 誰も頼ることはできない。

 信じられるのは自分だけだ。


 だから、誰かに手を差し伸べることも、頼ることも忘れてしまった。

 いつしか俺は、"氷の侯爵""紅い悪魔"と呼ばれるようになった。


「氷の侯爵か……」


 前まではその二つ名がむしろ好都合だと思っていたが……


 アリア、君と結婚……いや、おそらく最初に君と出会った頃から俺は変わっていったんだ。


 あの日、君があまりにも白くて眩しくて思わず目が(くら)んだ。

 俺は胸の高鳴りを誤魔化すように君の手をとって抱き上げた。


 ーーあの日からきっと私、いや俺は……


「アリア……」


 俺の服の裾を掴んで眠るアリアの寝顔を覗き込む。


 まだあどけなさの残る可愛い寝顔。


「……この可愛い寝顔を見ても、誰も心が揺さぶられないとは……リリオーネは俺よりも冷酷なんだな」


 俺はここより遥か遠くのアリアの実家に毒付いた。


 でも今はーーアリアはもう俺のものだ。


「もう、誰にも傷つけさせない。泣かせたりはしない。俺がアリアを必ず……」


 そっと彼女の髪を指で梳いた。


 銀糸のような髪が日差しを受けて淡く光る。柔らかくて、細くて、壊れそうで……それでいて強くて。


 森の外では、風が穏やかに木々を揺らしている。

 遠くで鳥が羽ばたく音がした。


 アリアの寝息は穏やかで、その頬にはようやく安らぎの色が戻っていた。俺は静かに目を閉じた。


 どうかこの穏やかな時間が、アリアの「新しい思い出の始まり」になるようにとーー


いいですね。二人のこの距離感。大好きです!

カリス様の望む通り、二人にとっての新しい思い出の始まりになるといいですね。

なかなか発展しない二人ですみません。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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