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赤い侯爵と白い花嫁  作者: 杉野みそら
第二章 可愛い夫婦

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アリア・ヴァレンティ

アリアはカリスの腕に包まれながら自分の過去を話す。カリスは何も言わずただ頷きながらアリアの話に耳を傾けるのだった。


※カリス視点です

※重い話です

 母はついに言いました。『アリアは黙って頷いていればいいの。そうすれば大抵の事はうまくいく』と……


 母にはそれが、何もできない私の唯一できる事だと思ったのかもしれません。


 でもそれは、私には呪いの言葉でした。その言葉を胸の奥で反芻(はんすう)するたびに『私には何もできない、何だったら完璧にできるの?』と母に言われているようで……


 その内、私は母にも兄弟たちにも、侍女たちにさえ呆れられ……見放されたのです。


「でも……私は信じていたんです。いえ、信じたかったのかもしれません。母に愛されていると……」


 アリアの言葉は声を発するごとに震えて、風にかき消えてしまいそうだった。それでも絞り出すように続ける。


「カリス様との結婚式の当日、お母様は(つい)に私の部屋を訪ねてこなかった……。でも、それでも私は……それでも……」


 アリアは恐ろしいものでも見たかのように俺の胸に顔を埋める。


「……愛されたかった……」


 その瞬間、張り詰めた糸が切れたかのようにわっと泣き叫ぶアリア。叫びには絶望が混じり、一層悲惨だった。


 俺は黙ってその背中を必死に摩った。細い背中は、骨が浮いていて、今にも消えてしまいそうで……


 アリア……


 俺は大きな勘違いをしていた。俺がアリアにしてきた事は全部俺の自己満足だったにすぎない。  


 豪華な食事も、豪華な部屋も……豪華な装飾も……


 だがそんなのはアリアにとっては全部まやかしだった。アリアがどこにいても、どんな贅沢な装飾で取り繕っても、母親の呪いはアリアの胸に暗い影を落とすのだ。


 俺にできる事は何だろうか?何ができるだろうか……


「アリア……」


 いくらか落ち着いてきたアリアに、怯えさせないように優しく語りかける。


 アリア……じゃあこうしよう。


 これからの事は夫婦二人で決めよう。いつも一緒にいよう。そして過去の記憶を塗り替えるんだ。優しく楽しい思い出に……


 腕の中のアリアが小さく頷いたのがわかった。


 これが正しいかどうかはわからない。だが今のアリアには母親ではなく俺がいる。そして今の俺にはアリアがいる。


 一緒に生きていこう。


 アリア・ヴァレンティ。

カリス様は結婚した当初はアリアのことを「アリア・リリオーネ」と呼んでいたんです。無意識のうちにアリアと自分の間に壁を作っていたんですね。

大変結構なことですな!カリス様、アリアをよろしく!


アリアの重い過去を読んでくださってありがとうございました。これからはカリス様がいるので多分大丈夫です(多分?)。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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