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赤い侯爵と白い花嫁〜愛を知らない二人が描く、歪な愛の物語  作者: 杉野みそら
第二章 可愛い夫婦

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森への誘い

はしゃぎすぎたことを後悔してしょげているアリアだったが、カリスはそんなことを全然気にしていない様子で……


※三人称ですが、時々視点が変わります。

 アリアは優しくされることに慣れていないので、カリスの優しい声音に戸惑い、目を伏せた。


(……なんだこの娘は。昨日あんなにはしゃいでいたのがまるで嘘のように今朝は大人しくなって……)


 笑ってほしい。またあの笑顔が見たい。私の心を揺さぶるあの笑顔……


 カリスはアリアの食べかけの朝食のトレイに目をやる。


「食事は口に合いますか?」


「……はい、美味しいです」


「……」


「……」


 ほんの一拍の沈黙。二人の間に、柔らかな朝日と、言葉にならないもどかしさが漂う。


「昨日は楽しかったですよ」


「……え?」


「この部屋を用意した甲斐がありました」


 カリスはまっすぐにアリアの方を見ていた。アリアは照れて真っ赤になっていた。


(カリス様に見られると顔が赤くなってしまう//なんで……?心臓もドキドキしてきた)


「……っ//あの、ありがとうございます。素敵な部屋を用意していただいて……あ!この置き物も可愛いです!」


 そう言ってアリアは陶器のうさぎを手に取り微笑む。


「……っ!!//」


(やはり可愛い……アリアは可愛い。いや可愛いからといって私の心がどうこうなるとかそういうのじゃないはずだ。断じて!)


「……ゴホン!アリア嬢、もし君さえよければ明日、黒い森に散歩に出かけないか」


 おかしいな、ただ散歩に行くだけなのにひどく喉が詰まる。言葉がうまく出て来ない。いつもはスラスラと誘い文句が出てくるのに……


「えっ!い、いいんですか!?行きたいです……」


(森の散歩なんてしたことない!前の家の散歩といえばせいぜい中庭くらいで……)


 またアリア嬢はそんなにキラキラ目を輝かせて……私の周りにはいなかったぞ。そんな純粋な喜びを私に浴びせてくる人間は……


「では、明日お待ちしています。私はこれで……」


 そう言ってカリスは出ていってしまった。てっきり昨日のことで怒られると思っていたアリアはしばらくその場から動けなかった。 


(えっ、怒られなかっただけじゃなく……お散歩に誘われた?私が?)


 胸に手を当てる。

 心臓はもはや暴れているみたいに跳ねている。


「よかった……昨日のことで怒られて、嫌われるのかと思ってた……」


「?何を怒る事がありますか。旦那様はアリア様の事を大変可愛いらしく思っておいでですよ。嫌うなんてとんでもない」


「ミツキ……そ、そうなの?」


 ミツキはアリアに就く前に、カリスの侍女だったということをアリアは思い出した。


「ええ、旦那様は口下手だし、なかなか感情を表に出しませんが、仕事の合間に奥様を訪ねて来られるのがアリア様を大切に思っていらっしゃる事の証拠です」


「まぁ……ミツキ……それが本当なら嬉しいわ」


(……アリア様、何があったのかわからないけれど……お若いのに随分と長く人を信じられない人生を送ってきたのね。まるでカリス様のように)


 ミツキは両の手でアリアの手を包み込む。


「……本当ですよ。長年旦那様に仕えていた私が言っているのですから自信を持って」


「う、うん//」


 信じても、いいのかな?


 恐ろしいと噂の、でも噂とは違う優しい瞳をしたカリス様を……


 アリアは胸にじんわりと暖かいものが広がっていくのを感じていた。


 それが何であるかは今はまだわからない。


カリス様の口調が敬語になったり馴れ馴れしかったりブレブレなのはわざとです。

ところでカリス様アリアの心を開いてあげてください。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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