アリアの部屋
カリスの優しさに触れて、戸惑いながらも胸の奥で何かが芽生えそうになっているアリア。侍女の案内で自室に案内されるが……
食事の後、アリアの部屋の前で足を止めてアリアは戸惑っていた。
「えっ……これが私の部屋……?嘘でしょ?」
天井は淡いクリーム色で、金の縁取りが優雅に走っている。
シャンデリアからは柔らかな光が降り注ぎ、部屋全体をやさしく照らしていた。
大理石の床は、薄いピンクと白の市松模様。歩くたびに、ひんやりとした感触が足の裏に心地よく伝わる
部屋の中央には、大きな四柱式のベッド。白と淡いローズピンクの生地で覆われた天蓋がふんわりと垂れ下がり、まるでおとぎ話の一幕のようだ。
「わぁ!すごく可愛い」
棚には陶器のうさぎや宝石箱が整然と並び、思わず手に取って眺めたくなるほど可愛らしい。
暖炉には淡い橙の炎がゆらめき、静かに部屋を包み込む。
豪奢でありながら、不思議と心の落ち着く温もりがそこにはあった。
「すごい……ここが私の部屋?何かの間違いではない??」
(……こんなに……素敵な部屋……私、こんなに特別にされるなんて……)
胸がぎゅっとなる。豪華で圧倒されるのに、ところどころに散りばめられた可愛いらしさに、自然と頬が緩む。ここでなら、私も少しだけ自分らしくいられるかもしれない。
そんな気持ちが、ぽっと胸に灯った。
「間違いなくアリア様の部屋ですよ」
「あっ、あなたは……確か」
「はじめまして。今日からアリア様の身の回りのお世話をさせていただきます。ミツキです」
「ミツキ……さん」
「呼び捨てでいいですよ?」
(呼び捨て……)
実家では、侍女たちとの会話は最低限の挨拶しかなかったけど、いいのかしら?
「アリア様、なんと愛らしい奥様でしょう。どうぞ、何なりとお申し付けくださいね」
奥様……?
そうか、私結婚して……カリス様の奥さんになって……だから……
「ここは奥様のお部屋、そしてこの屋敷は旦那様と奥様のお屋敷でございますよ」
ミツキがそう言って微笑む。
「あ……」
そっか……もう、私はお母様の顔色や誰かの目を気にして過ごさなくてもいいのね……
そう思うと、なんだかワクワクしてきたわ!
「ありがとう!ミツキ!これからよろしくね!」
私はそう言ってミツキの手を握った。
「ええ、こちらこそ」
アリア、この家で人生を取り戻しましょう!
最後まで読んで頂きありがとうございました。




