食後のあったかハーブティー
ワインをこぼして昔の苦い記憶が蘇ってきて慌てるアリア。絶対怒られると思っていたのに降ってきたのは優しい言葉で……
「このクロスは侍女が片付けてくれます。驚かせたね、こちらへ」
そう言って、カリス様は穏やかに微笑んだ。
その微笑みは、蝋燭の光を受けて柔らかく輝き、私の胸に、じんわりと温かいものを灯した。
「……ありがとうございます」
小さな声でそう呟いた瞬間、頬が自然と熱を帯びていた。
(……怒られると思ったのに……カリス様は優しい)
しばらくして新しいクロスが用意され、食卓は再び穏やかさを取り戻した。
だけど私の胸の鼓動だけは、先ほどからまるで落ち着いてくれない。
(どうしてこんなにドキドキするの??こんな事、前の家ではなかったのに……!)
恥ずかしいと思えば思うほど、余計にドキドキしてしまう。
(静まって……お願い。カリス様に聞こえちゃうの……)
カリス様は硬直して突っ立ったままの私を見て、視線を和らげた。
「アリア嬢。……食後に、温かい紅茶を飲みませんか。気持ちを落ち着けるのに良いですよ」
「は、はい……!」
(とは言っても、もう全然食欲がないわ……)
カリス様は椅子に座って呆然としている私に目を向けて、侍女に何か指示をしていた。
「アリア嬢、これを飲んで……ハーブティーだ」
「ひゃい!!」
私はカリス様の声に弾かれたように返事をする。
(ひゃい??)
「今の君には紅茶よりハーブティーがいいかなと思って」
(カリス様……なんて優しいの……)
「い、いただきます……」
私は両手でカップを包み込みながら紅茶を飲む。ほんのりと甘く、温かい。
「美味しい……」
(こんなに優しくされたのはいつぶりだろう……)
「それはよかった」
ハーブティーは温かく身体にしみこんだ。私はカリス様の方を見た。カリス様は穏やかにこちらを見ていた。その穏やかな視線に伴うように、私の鼓動も、徐々に穏やかさを取り戻していった。
蝋燭の灯が二人の間に淡く揺れ、その夜の静けさだけが、優しく二人を包んでいた。
アリアは優しくされることに慣れてないので困惑していますね。カリス様は優しいけど本当か?(懐疑)
最後まで読んで頂きありがとうございました。




