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赤い侯爵と白い花嫁  作者: 杉野みそら
序章

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決められた結婚

誰よりも愛されたい孤独な二人の、結婚から始まる愛の物語スタートです。

 リリオーネ家の末娘、アリア・リリオーネは侯爵家の当主カリス・ヴァレンティの元へ嫁ぐ事が決まっていた。


 しかしこのカリス侯爵、ただの侯爵ではない。


「よりによってあの不気味な噂の冷血な領主様の元へ?」


「伯爵様は何を考えているのかしら?末娘をあんな紅い悪魔にーー」


「氷の侯爵様はその名の通り、人間を氷漬けにするらしいわ」


 というとんでもない噂の持ち主の元へ、アリアは嫁ぐというのだ。


「お可哀想に、アリア様」


「……」


 * * *


 私はアリア・リリオーネ。リリオーネ家の末娘として生まれた。女中達はこの縁談にいい顔はしていない。


 他の姉妹たちはみんな嫁ぎ先が決まっていて、結果的に私にその話が回ってきたのだけど……


「こういう話があるのだけど、どう?」


 と問われた私はただ粛々と頷いていた。


「喜んでお受けします」


 その言葉に自分の意思はなかった。ただ母親に少しでも喜んでもらいたかった。それだけだ。


 私の両親は、上の兄弟姉妹に構ってばかりで、私のことは乳母に任せっきりだった。

 私は母が他の兄弟姉妹と笑っている姿を遠目から見るたび羨ましくて、寂しかった。


 そのかわり教育はきっちりしていて、私は母親と教育係の二人によっていつでも貴族として完璧に振る舞えるように仕込まれていた。

 私はこの時間がすごく好きだった。母の理想通りの女性になるために必死だった。


 お母様に振り向いてもらいたい、認めてもらいたい……


「アリアはただ頷くだけでいいの、自分の意思なんか出しちゃダメよ。ただ頷いていればいい。これだけで大抵のことはうまくいくのだから」


 初めて母から受ける言葉。私はこの母親の言葉通り、言われた通り、どんなことがあっても、兄弟たちに理不尽な事を言われても、ただ頷いて微笑み返した。ただ母親に認められたい、褒められたいという一心で。


 そこで突然降って湧いた縁談の話。


 私は次の母親の言葉に期待していた。


『よく決めたわね、アリア。お母さん嬉しいわ。ありがとう』


 という言葉が返ってくるのを期待して頷いた。


 でも返ってきたのは感謝でも(ねぎら)いの言葉でもなくーー氷よりも冷たい言葉だった。


「なんでもかんでも頷いて、あなたに意思はないの?」


「え……」


 お母様は短く息を吐いた。


「……はぁ、あなたの気持ちはよくわかったわ。領主様には私の方から返事しておきます。自室で沙汰を待ちなさい」


「お母様……」


「ああ、辛気臭い顔で見ないで!あなたのその真っ白な瞳、白髪に近い銀髪!見るだけで呪われそう」


 言葉が出なかった。代わりに胸の奥で、何かが小さく砕ける音がした。

 扉が閉まる音が聞こえるまで、私はその場で(はりつけ)にされたように微動だにできなかった。


いきなり胸糞な予感が……汗


ここまでお読みくださりありがとうございました。

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