リニューアルオープンの準備
サウザンド商会の事件から1ヶ月が経過したがお店の中には明日香の姿がなかった
というのもリムゴーラ市に帰ってはいたのだが裁判の証人として呼ばれたりしたり改めて営業許可申請を出したりと色々と忙しくお店に立っている時間が全くないほど忙しかった。
裁判自体も王国の重罪級裁判に私達明日香商会が訴えった民事裁判の2種類を抱えておりリムゴーラ市と王国を行き来する生活を送っていた。
民事裁判は全面的に私達の訴えが認められ損害賠償として星金貨950枚という最早日本円に換算するのが難しい量の賠償金を貰えた。
王国建国以来断トツの賠償金額だった為足りない分は商会が保有する土地や建物が貰えたがそれでも足りないらしく王国からの借金としてサウザンド商会に貸付を行われた。
当初はサウザンド商会が身柄を拘束していた犯罪奴隷も賠償として充てるということになっていたが、奴隷という文化がそういうプレイ以外で日本に馴染みがないもの過ぎて扱いに困るのでそれは全力で断った結果このようなことになったのだが裁判長は「奴隷をいらないだなんて珍しい人だな」と言い賠償目録に記載していた。
重罪級裁判は丸々1ヶ月が経ったが事が事のせいか通常よりも時間がかかっているみたいで尋問と証言の摺合せや王国の警察に当たる組織が捜査した内容との照合に多大な時間を要するようで事あるごとに呼ばれては王国に行くの繰り返しでとても疲れたのは言うまでもない。
だがこれは忙しい原因のメインではなく本命は店舗の移転準備と2号店の出店準備の手続きを同時に行っていたのでこちらが主な原因だ。
先に触れた通り今の明日香商店には多額の資金があり同時に事件とは無関係のサウザンド商会の従業員を丸々引き取ったので人手不足どころか過剰な人数となってしまった。
そこで今の店舗やお隣のホアンさん夫妻が経営する八百屋さんと雑貨屋さんと空き地を利用して一度全面的に建て替えることにした。
ホアンさん夫妻達も快く承諾してくれついでにテナントとして入れてくれと言われたので明日香商店のテナントとして迎える形になった。
最初は明日香商店の食品部門のトップとして打診したがそちらは恐れ多いと言われテナントに落ち着いた。
当初は完全直営の売り場にすることを考えていたがお隣の雑貨屋さんも同様の事を言われテナントとして迎える形になったので1階から2階までをテナントフロアとして改築し3階から4階までを明日香商店の直営売り場5階に居住スペースを設けることになりかなり大掛かりな工事が必要になった。
一方2号店は基本的には元サウザンド商会本部をベースにすることになり1階をテナントフロア2階を明日香商店王都店として3階を倉庫兼事務所として改装することになりそちらは大掛かりな工事もなく荷物の搬入や内装工事だけですぐ開店できる。
ただし一番面倒なのが商会開業届が必要だという点で王国の法律で複数店舗を所有し一定の規模を超す場合には商会開業届が必要でこの手続きに厳重な審査と保証金等あらゆる手続きが必要だった。
1週間後に審査が無事通り保証金の白金貨15枚を納め営業できる状態となったがあとは2号店の店長を誰にするかを決める必要がありこちらが明日香自身を大いに悩ませることになった。
というのもサウザンド商会の元従業員はそもそも信用できないのは言うまでもないがそれ以外の従業員はまだ働き始めて間もないので店長を任せるのは難しい
だが店の責任者を決めないまま営業してしまうと何かトラブルが合った際に困るため早急に決める必要があった
そこで王都の商人ギルドで責任者の求人を出すことにし1日35枚の給料を提示し仕事内容と共に張り出すと4人の応募があった。
それぞれ面接を行うと1人だけ異様な経歴を持つ男性がおりその人はアシュレイさんといいそこそこ大きい商会の副商会長を経験したことのあるというのだ
普通に考えればアシュレイさんを雇うのだがサウザンド商会の一件もあることから罠を警戒しその日のうちに決断することはできなかった。
その日の夜にお茶を入れ1人で履歴書とにらめっこしどうしようかと考えているとシャルさんが声をかけてきた
「責任者のことで悩んでいるのか?」
「はい・・・
1人だけ有力な候補はいるのですがその・・・
そこそこ大きい商会の副商会長をやっていたみたいでサウザンド商会のように乗っ取るんじゃないかって思ってたんです。
でも応募があったのは4人だけだったのでどうしようかなって」
説明を受けながら履歴書を読みはじめるとシャルさんはにっこりと微笑んだ
「アシュレイのやつ結局応募したんだな・・・」
「アシュレイさんのこと知っているんですか?」
そう聞くと
「昔からの知り合いでな
あいつは元々従業員だったのだがその手腕や経営センスを当時のベルティ商会長に買われ副商会長まで上り詰めたんだがあいつは接客をするほうが好きで辞めようとしていることを聞いてここの求人を紹介したんだよ
サウザンド商会があのような強行に走って罠を疑うのはしょうがないがこいつはあいつのような野望を企むことはしないし何よりお客さんを大事にする者だ
何かあったら俺が責任をとるからあいつを雇ってくれ」
そう言うとシャルさんは自室へと戻っていった。
「シャルさんの知り合いなら大丈夫なのかな・・・・」
とても不安な気持ちでいっぱいではあったがシャルさんの知り合いで尚且つお墨付きの人物であるらしいので採用することにしたがこの人が本当に明日香商店に危害を加えないのかということはその日のうちにわかることではないし信頼を築いたうえで裏切るということも十二分にあり得るので警戒しつつ採用通知を書き始めた。
翌日にリムゴーラ市郵便ギルドに行き面接結果の手紙を出しに行こうとするとシャルさんが王都に行く用事があるらしくついでに発送もお願いした。
手紙を渡すとシャルさんは王都へと空間移動した。
シャルさんを見送った後私は久々に明日香商店の開店準備をしドアを開けるとそこにはいつも通りの光景が目に入った。
中にはあの事件の日に居合わせた人もいて物凄く心配されたのと安堵し目頭に涙を浮かべるお客さんがいた。
私はこの街の人に愛され本気で心配してくれる家族やお客さんに出会えたこととどん底な人生から救ってくれた女神さまに感謝しながらレジ打ちをするのであった。




