ベランダから亡者の群れを見下ろして
私は16階建てのマンションの最上階に住んでいる。
此の部屋を購入し住み始めてから10数年経った最近、難聴による耳鳴りが耳鳴りでは無く低周波騒音だと気がついた。
低周波騒音だと気がついて騒音を出す相手を特定しようとしたけど特定出来ない。
マンションから数百メートル程離れた所に工場が数棟ある事から、多分にあの工場のどれかのボイラーが騒音の元だと思う。
警察に相談しても相手を特定出来なければ注意仕様が無いと言われ、家に来た警察官たち自身も私が此の音だと言う音が聴こえて無いようで、来た警察官たち全員に不思議そうな顔をされる。
警察官だけで無い、通院している耳鼻科の先生にも内科の先生にも不思議そうな顔をされ、うちに来て貰った家族や友人たちにも聴こえ無いと言われるだけ。
騒音と騒音から来る振動によって夜眠れなかったり血圧が高くなったり、手足が痺れるような感覚や心臓が締め付けられるような感覚を1日中感じている。
もう嫌だ! 騒音と振動に耐えられない。
発作的に何度かベランダから飛び降りそうになった。
でも、でもだよ、なんで私だけが死ななくてはならないのだ?
私には何の落ち度も無いのに私だけが死ぬのは我慢出来ない、だから騒音を垂れ流す奴等を道連れにする計画を立てる。
今日は無風、計画を実行に移すのに最適な日だ。
部屋のベランダから眼下に見える道を見下ろした。
数百メートル離れたところにある数棟の工場で働く従業員共が駅に向けて歩いているのが見える。
計画を実行に移す。
ベランダから銀行から下ろして来た金を奴等の頭上にバラ撒く。
フヨフヨと漂いながら千円札、五千円札、万札が地面に落ちて行く、それらのお札が奴等の下に届いた途端、工場の従業員から亡者に変わった奴等が我先にと金を拾い奪い合いを始める。
私はそれを見下ろし、地面に落ちた札を夢中に拾っている亡者の群れ目掛けてベランダから飛び降りた。