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クズ王子な兄が最愛の聖女様との婚約をあろうことか破棄しやがったので全力でもらいに行きます。  作者: 蒼井星空


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第1話 クズ王子な兄(アーサー第二王子視点)

「アーサー。あの女は俺の婚約者、俺のものだ。お前、弟のくせに手を出すなよ?」

役目も果たさず、彼女の貢献も理解していない最低のクズ王子である兄の発言がこれだ……。

酷いものだろう?

僕は聖女様に手なんか出していない。出せるなら出したいが、お前と違ってちゃんと弁えている。

我ながらよく耐えたと思う。


それにこのクズ兄は、そもそも自分のものというのに聖女様の相手もしないし贈り物もしない。会話もないし、当然ながら一緒に社交に出たりもしない。

ただの婚約者のくせに。そんなことをしていたら聖女様に捨てられるぞ?


「何だその目は?貴様は2番目だろ?俺のために戦い、俺のためにあがき、俺のために死ねばいいんだよ!あーっはっはっはっは」

こんなやつについていくやつがいるのか?そもそもこいつが偉そうにしてられるのは第一王子だからで、立太子されることが予定されているからだ。


わかっているのかな?いや、わかってないだろうな。

まだ何も実現していないんだ。圧倒的な功績があるわけではなく、才能なんかまるでないし、性格は超自分勝手な俺様思考。反対されることが嫌いで、取り巻きは兄を肯定するものしかいない。つまり最悪だ。


しかも女好きで『俺に股を開け』とか言ってしまえる正真正銘のクズ。

まさに血しか誇ることはないクズ。


いや、その血にもたいした価値はない。

こんな田舎の小さい王国の王族になんてな。


にも関わらず、ただただ無為な歴史を積み上げてきた。周辺国は発展している。

この国は止まっている。差は開くばかり。


それでも攻め滅ぼされないのは旨味がないからだ。

気候は厳しいし、河川も少ないし、魔力の淀みができやすく魔物が多い国。

だからこそ僕たちは軍として魔物を狩り、街道や街を守る。


それだけでは対処が厳しく、強力な魔力の淀みが生じた際には神殿、ひいては聖女様にも協力してもらっている。

文字通り国を上げて対処していくのだ。そこにこの兄の居場所はない。


「ふん、黙っているだけか。本当にお前は戦うことにしか興味も才能もない。面白みのないやつだな。なぜ一部の貴族がお前を支援しているんだか。言っておくが、俺が国王になった暁には、お前を推した貴族は軒並み王都での職を失うか、取り潰すからな!はっはっはっはっは」


もし国王になったとしてもお前にそんな権限はないよ……。


バカな兄は品がないですと自ら喧伝するかのように大声で不快な笑いを撒き散らしながら去っていった。表情に浮かべるのは愉悦。恐らく僕に上から目線で嫌がらせができたと喜んでいるんだろう。


そもそもお父様は兄を教育する気がないのだろうか?学院に通わせて終わりですか?実態を知らないのですか?忙しいとは思いますが、さすがに兄の周囲が仕事を放棄し過ぎじゃないだろうか?


いや、あの兄を放置している学院も同じか。教師陣は誰も注意しない。すでに兄たちが最高学年だから先輩はいない。同学年や後輩の生徒たちは何も言えない。


みな正妃様とその実家であるジーランデル公爵家を恐れているのだろう。


唯一それを恐れる必要がないのは聖女様だ。しかし、聖女様はすでに神殿の仕事を信じられないくらいの件数こなしているため補習授業への登校となっておりバカ兄との接点は少ない。

本来は一緒に観劇にでも出かけたり、社交の場に出たりするべきだがそれもない。


まぁ、これは歓迎すべきことだ。

あの可憐で、可愛らしく、素敵な声を響かせる落ち着いた清廉な聖女様があんなバカな兄に毒されないというのは良いことだ。

むしろあの兄が変なことをしたら蹴り飛ばしてくれていい。


もうすぐ学院を卒業する聖女様は、卒業するとすぐにあのバカ兄と結婚してしまう。

それだけは避けたい。しかし避けさせる手段がない。もどかしい。


僕がこの前の魔物討伐でお父様から頂いた剣でたたっ斬ってやりたい。


なのに運命は残酷だ。

あんなに素晴らしい聖女様なのにバカ兄の手から救い出す方法が見つからない。

致命的なところであの兄がミスをしてくれない。


もっと強くバカ兄の所業を追求し、聖女様に婚約はふさわしくないと思ってもらう必要があるのです。



くそっ……。


思い浮かぶのはムカつく兄の表情。

なにが聖女様は俺のものだ。なにがお前は俺に従っていればいいだ。なにが第一王子だ。


いっそ父上に頼んで一騎打ちでもさせてもらうか?

勢い余ったと言い張れば頭と体がおさらばしても問題はないだろ?


どう考えてもあれが次期国王としてふさわしい態度を身につけるとは思えない。

となると僕の役割は尻拭いになってしまう。

時間の無駄だ。


どうせいざ叩かれたら叩くところが多すぎて弁護すらできないのに。


何かないか?


僕の頭の中にあるのは美しい聖女様の凛々しい姿……ではない。

記憶の彼女は悩み、苦しみ、なぜ自分がと運命を恨み、それでも決断して国のために動き、そして傷付いた姿だ。


雨の中で静かに涙を流す姿なんだ。


彼女がなんと言おうと僕は彼女を救い出す。

方法がないなら兄を斬り捨てて国外に逃げるのもありか……。


もう時間がない。




そこへ少し慌てた様子の使いがやってきた。

神殿の関係者でアリア様と親しくしているルーネ殿からの使いらしい。

なにがあった?と訝しみながら聞いたが、それは全くの想定外の出来事の報告だった。






「はっ?婚約破棄?誰と誰が?」

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