第九話 『告白』
※はナレーションです。
俺は今日もみーちゃんと遊んでいた。
毎日、日が暮れるまで遊んで、日が暮れたらまた明日会う約束をする。
でも、この公園に通う事は苦じゃなかった。
父さんがいなくなって初めて、心の底から笑う事が出来ていた。
ある日、みーちゃんは俺に見せたいものがあると、公園の花畑まで、俺を引っ張った。
すると、みーちゃんは手を突き出す。
そして、手を突き出した瞬間、花が突然成長し始めた。
そして、花が自分の意思のようにみーちゃんの手元に寄ってきた。
みーちゃんはその中から花を1輪摘み、俺に渡した。
「はい。これあげる」
それは、ハーデンベルギアの花だった。
俺が少し戸惑っていると、みーちゃんは口を開く。
「私の異能は、植物に話し掛ける事が出来るの。しかも、意思疎通も出来るんだよ」
かなり自慢気に話しているようだった。
無能じゃなかったのか...
じゃあ何故あの時イジメられていたのいたのだろう...?
俺は疑問を抱いたが、もうイジメられるのを見ていないし、大丈夫だと思った。
すると、みーちゃんは俺に聞く。
「まーくんの異能はなぁに?」
俺は話すか少し迷った。
俺の異能は登録されていない。
ここで話してしまうのは危ないのでは...?
しかし、みーちゃんなら話しても大丈夫だろう。
そう思い、口を開く。
「僕の異能は「千里眼」。まぁ、眼に関する異能かな」
みーちゃんは目を輝かせてこちらを見ている。
だから、俺は隠していた右眼を見せる。
...本当は見せたくなかった。
この異能が発現してから、周囲の人に不気味な眼だと言われた。
その度に母さんが護ってくれていた。
もし、みーちゃんに悪口を言われたら、立ち直れない...なんて事は無いが落ち込みはするだろう。
すると、みーちゃんは言う。
「綺麗な瞳だね」
俺はみーちゃんを見る。
その顔からは嘘とは思えないような、本当の事を言っているような気がした。
「え?」
俺は自然と言葉が出た。
でも、みーちゃんは続ける。
「私もまーくんみたいに綺麗な目が良かったな」
そんな事を言わないで欲しい。
みーちゃんの目は充分綺麗だ。
だから、俺は言うのだ。
「みーちゃんの目の方が綺麗だよ」
みーちゃんは真っ直ぐこっちを見る。
気のせいか、顔が赤くなっているように見えた。
「そっ...か」
俺はみーちゃんをジッと見ていると、みーちゃんが突然、
「あ、ほら夕方だよ!もう帰らなきゃ!じゃ、また明日ね〜」
と言いながら、帰ってしまった。
一体何だったのだろうか...?
そんな事を考えながら俺は家へ帰るのだった。
◇
美玖は走りながら、考え事をしていた。
まーくんに綺麗って言われちゃった!
しかも、ハーデンベルギアの花まであげちゃったし!
...まーくんは気付いてるのかなぁ。
こっちもこっちで磨童の事が好きだった。
というか、こっちも一目惚れだった。
最初に話し掛けてくれた時もカッコよかったなぁ。
今まで、私に手を伸ばしてくれる人なんていなかったもん!
好きになってもいいよね。
それにしても、別れる時、ぎこちなかったかなぁ。
でも、しょうが無いじゃん!
綺麗って言われたんだもん!
...いつか、可愛いって言ってくれないかなぁ。
·····
よし!明日も遊ぶんだし、チャンスはある!
私の事を惚れさせてやる!
美玖は決意するのだった。
◇
翌日、俺はまたみーちゃんに呼ばれ、花畑に行く。
そこには様々な花があった。
でも、昨日と配置が違う気がする。
そこで、俺は聞く。
「入れ替えた?」
「うん!こっちの方が綺麗」
みーちゃんは続ける。
「それに、会話をしたら、この配置の方が育ちが良いんだって!」
みーちゃんは嬉しそうだ。
植物が好きなのかな...?
俺は聞く。
「みーちゃんは植物が好きなの?」
みーちゃんは答える。
「うん!好きだよ」
みーちゃんは少し間を開けてから言う。
「でもね...植物だけじゃなくて、動物でも誰かの手助けになれることが嬉しいんだ」
え...?
天使...?
ものすごくいい子だった。
...俺にこんな優しい子を好きになる権利はあるのだろうか...?
俺のせいで父さんは死んだ。
俺のせいで、母さんは苦労している。
俺は、前世でも今世でも何もしていない。
俺がそんな事を考えていると、みーちゃんが俺の表情が暗いことに気付いたのか、抱き着いた。
咄嗟の事に俺は思考が追いつかなかった。
すると、みーちゃんは俺にチークキスをする。
俺は、思考停止していた。
少し、みーちゃんの顔が赤い気もするが気のせいだろう。
気のせいだと信じよう。
でないと、理性が崩壊しそうだ。
いや、照れてるとか可愛すぎだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
俺の理性は崩壊した。
「大丈夫?」
大丈夫じゃないです!
好きな人に抱き着かれた挙句、チークキスされるとか大丈夫な訳無いです!
しかも、その後、照れ顔を見れるとか、大丈夫な要素ないと思いますぅぅぅぅぅ!
でも、俺は平然を装っていた。
これが嫌いな奴だったら、今すぐ叫んで走り出しているだろう。
...いや、今は別の意味で叫んで走り出しそうだったが...
そんな思考しか出来なかった俺はかろうじて、言葉を振り絞る。
「ありがとう。落ち着いた」
いや、落ち着いてないけどね!?
心臓絶賛バクバク中ですけどね!?
「そう?良かった」
みーちゃんは更に顔を赤くしていた。
何でえええええぇぇぇぇぇぇ!?
今、赤くする要素あったあああああああぁぁぁぁ!?
◇
チークキスをした直後、美玖も落ち着きを保てていなかった。
え!?
ちょっと待って!?
私、今何したの!?
美玖のチークキスは完全に無意識だった。
美玖の家庭では、子供を慰める時などにチークキスを行う。
そのせいか、家族にするノリで磨童にチークキスをしていた。
その為、美玖も落ち着いてなど、いなかった。
しかも...
いや、チークキスは無意識だったけども!
ハグは!?
ハグは完全に意識してたんだけど!
ていうか、ハグしたのにその平然とした顔は何!?
逆に恥ずかしいんですけど!
そんな中、喉から言葉を捻り出す。
「大丈夫?」
そして、磨童は返す。
「ありがとう。落ち着いた」
いや、イケメンンンンンンンンンンン!!!!!
大丈夫?に対して、大丈夫。じゃなくて、ありがとう。は紳士すぎるぅぅううう!
やばい、好き!
もうホントに好き!
大好き!
ちなみに美玖は転生者の類では無い。
その為、小学生にしては、反応が磨童と一緒だった。
落ち着け〜、私。
今日はまーくんを惚れさせるんだから!
それで、まーくんに告白させる!
美玖は少女漫画の読みすぎだった。
◇
...ようやく、落ち着いた。
心臓はまだバクバクだった。
が、まともに話せるくらいには落ち着いていた。
みーちゃんに尋ねる。
「今日は何するの?」
そして、美玖は答える。
「今日は愛してるゲームやろう?まーくん」
何ぃぃぃいいい!?
あの、愛してるゲームウウウウウウウウウ!?
※ちなみに警告しておくが、この人達は小学生です。
※本物の小学生はこんな高校生みたいな事しません。
※それでは、続きをどうぞ。
まぁ、いい。
やってやる!
「じゃあ私からね?」
そして、美玖は磨童に近づく。
「愛してる♡」
それは、嘘偽りない言葉だった。
これなら、多少は意識するはず...
...な!?
磨童は再び思考停止していた。
...真顔のまま。
そんな感じでお互いにドキドキしたまま、夕方になった。
「それじゃあ、また明日」
俺は今すぐ帰りたかった。
何故なら、理性が崩壊しそうだったから。
え?既に崩壊してた?
冗談キツイぜ。
すると、美玖は磨童を引き留める。
「え?」
そして、美玖は言う。
「ま...待って!」
みーちゃんの目は真剣だった。
「わ...私...!まーくんの事が好き!」
俺は眼を見開いた。
え...?
好き...?
俺を...?
「わ、私と付き合ってください!」
俺は驚きと同時に迷っていた。
こんな俺で良いのか...?
もっといい人がいるんじゃないか?
そもそもまだ小学生だぞ...?
そういうの早くない?
すると、美玖は言った。
「まーくん、いつも、自分は...とか考えてない?」
俺はみーちゃんを見る。
その通りだった。
俺は自分の事が嫌いなのかもしれない。
美玖は続ける。
「大丈夫だよ。まーくんは優しいし、気遣いが出来るし、周りをよく見てる」
美玖は真っ直ぐ磨童を見る。
「そんなまーくんが好き」
俺は...
幸せになっても良いのだろうか?
母さんは苦しんでいるのに...
...でも、母さんなら俺に幸せになれと言うだろう。
何より、それが1番母さんを楽にしてあげられる。
だったら俺も、自分に正直になってやる。
「僕も...みーちゃんが好き」
その言葉が中々出てこない。
でも、精一杯振り絞る。
「だから、お願いします」
俺は真っ直ぐみーちゃんを見る。
「良かった...」
そう言うと、みーちゃんは何かを取り出す。
そして、それを俺に渡す。
「...これは?」
「アネモネだよ」
それは確かに赤いアネモネだった。
でも何故アネモネ...?
...そういえば、アネモネの花言葉って...
·····
...そういう事か。
俺は有難く頂く事にする。
そして、この花を一生大事にすると誓った。
「じゃあ、また明日ね!」
そう言うと、みーちゃんはそそくさと帰ってしまった。
「帰るか...」
俺も帰る事にした。
...ちなみにこの後、母さん達にアネモネの花について詳しく聞かれる事になるのだが、それはまた別のお話。
こうして、1日が終わるのだった。
作中で目と眼の2つがあると思うのですが、しっかり使い分けてます。
磨童のめだけ眼になるようにしてます。
ちなみに深い意味はありません。