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妖精として生きるつもりです。  作者: 納豆しらす
第二章 『繋ぎ合わせるべき欠片』
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第二十六話 『そして彼女は変わった』

美玖は玲奈達の元へ辿り着き、その場に着地する。


「よし、間に合った!」


玲奈は驚いている。


「美玖⋯?何で⋯?しかも、どうやって抜け出して⋯?」


「あー、あれ?なんか簡単に抜け出せちゃった!」


美玖は笑顔で答える。


「それはどういう⋯」


玲奈は問う。

それに美玖は答える。


「⋯私また、まーくんに助けられちゃった」


玲奈はその言葉に驚愕する。


「いた⋯の⋯?」


玲奈は理解するより先に聞いていた。

美玖は笑顔で答える。


「⋯いや?いなかったよ?」


「⋯え?」


「⋯私、幻覚見てたみたい」


「⋯それはどういう────」


玲奈がそう言いかけた時、美玖がでもね、と止める。


「幻覚でもいいの。私の好きなまーくんはそこにいるから。⋯だから、いいの」


玲奈には見えた、美玖の姿がはっきりと。

美玖の目が、夢を、希望を、⋯何かを捨てた人の目をしていた。


玲奈は自分が考えるより早く美玖に聞いていた。

これで二度目だ。思考が回らなかったのは。


「美玖は⋯それでいいの⋯?」


震えた声でそう聞いていた。


美玖はニコッと笑い答える。


「うん、いいの」


玲奈は目を見開く。

「!!」


そんな玲奈の様子を見て美玖は言う。


「⋯私ね、まーくんに幸せになって欲しいの」


「⋯え?」


玲奈は美玖を見つめる。


「嫌いな女の事なんて忘れてさ、新しい人を見つけて、家庭も持って、事故に見舞われることもなく、幸せに生きて欲しい」


美玖は続ける。


「本当に悪い人こそ罪を償って後悔するの。私はこれからそれをするために生きるの」


「悪い事って何⋯?美玖は何も悪くないじゃん!」


玲奈は声を荒らげた。

そんな玲奈の様子に美玖は笑顔で言う。


「⋯彼を不幸にした」


「⋯え?」


「それが私の最初で最後の罪」


「そんなの⋯!」


「それにね、彼に嫌われちゃった私にはもう何も残ってないの」


玲奈は黙り込んだ。


「勿論、家族仲はいいし、友達だっていっぱいいる。でもそれはそれ。⋯彼のいない私にはなんの価値もない。私は只、人に恵まれただけ。⋯本当に何も無いの」


玲奈は黙って聞いていた。しかし、玲奈は黙って聞いている自分が嫌だった。

⋯本当は、本当に悪いのは自分のはずなのに。

何もしないで黙って聞いている自分が惨めでみっともなくて嫌だった。


自分がいじめていた事が原因のはずなのに。


「美玖⋯!」


玲奈が口を開いたその時だった。


「お話は終わったかしらぁ?」


「!」


玲奈は恋へ視線をやる。


「大体ぃ、あの縄をどうやって抜け出してきたのぉ?信じられなぁい」


「簡単に抜けれましたよ」


「えぇ〜そうなのぉ?じゃあ⋯」


恋は顔を上げ、圧のかかった声で言う。


「次はもっとキツぅく縛らなくちゃぁね」


恋は動き出す。それに合わせ玲奈も動く。

しかし、美玖は動かない。


「美玖⋯!」


「戦闘中に止まるのは、戦士としてナンセンスよ!」


恋がそう言いながら持っている鞭を美玖に振り下ろす。


美玖は両腕を天に突き上げた。


「はあっ!!」


すると、美玖の周囲に植物が生え、緑が冴え渡る。


「⋯!あの植物どこから⋯!」


玲奈が考えている間に恋は美玖から距離をとる。


恋は心の中で考える。


おかしい⋯この子さっきまで異能が発動出来なかったはず⋯!

周囲に植物を生やすなんて聞いてない!


⋯この子、異能の力を引き出した⋯?


「いきます!」


美玖が言う。

恋は美玖の方を見る。

みるみる周囲の植物が巨大化し、巨大なつたになる。


「はぁっ!」


つたが恋に襲い掛かる。

恋は華麗にかわし、鞭でつたを掴む。


しかし、他のつたが恋に襲い掛かる。

周囲を見渡せばいくつものつたがある。


恋は避けきれずまともにくらう。


「ほいっ!!」


今度は棘のような植物が恋に襲い掛かる。


「次から次に⋯!」


その植物が棘を放ってくる。

恋は鞭で棘を打ち返すが、全ては防ぎきれなかった。


「⋯やるじゃなぁい。好きよ、そういうの」


「ありがとうございます!それじゃあ次行きますよ!」


美玖は次々に攻撃を放っていく。

そんな2人の様子を玲奈は只、見ているだけだった。


「私も、何かしなきゃ⋯!」


でも何をすればいい⋯?

今この2人の中に入れる程、私は動けない。

確実に足を引っ張る。それが分かる。

このまま美玖に任せれば⋯。


勝てるかもしれない。自分など必要ない。

玲奈はそんな思考を張り巡らせていた。

しかし、そこで美玖に声を掛けられる。


「玲奈!!」


「!」


「あの人の、蝶野さんのタスキを⋯!」


玲奈はその言葉につられ恋の方を見る。

右腕にタスキが残っている。

狙うなら今だ。今しかない。

蝶野さんは今、美玖が動きを押さえつけてる。

私が狙えば⋯!


玲奈は走り出した。

しかし、突然足が止まる。


良いのだろうか。このまま勝ってしまって。

ここで勝ってしまえば自分は何も変わらない気がする。

人に全てを任せ、責任を押し付け、自分では何もしない只のクズになってしまう。

否、既にクズではあるのかもしれない。

でも、今までの罪を無視してこのまま全てが終わるかもしれない。

クズの自分のまま終わってしまうかもしれない。


自分だけが受からなければ⋯

何かが変わるかもしれない。


玲奈は迷った。迷ってしまった。


「玲奈!!」


美玖に名前を呼ばれ玲奈はハッとする。

すると、目の前には恋がいた。


「ぁ⋯!」


「いいじゃないぃ、さっきとは違って。でもね、油断はだめよぉ?」


恋は玲奈の腕を掴み上げる。


「こんな風にぃ、狙われちゃうからねぇ」


「!!」


まずい⋯!

玲奈がそう思ったその時、恋の腕に細いつたが巻き付いた。

恋はそれに気づくや否や玲奈の腕を振り払った。


「しぶとい⋯!」


美玖がそう呟く。


玲奈は美玖を見る。

美玖が玲奈の視線に気づく。

美玖は玲奈に笑顔を一瞬向けると、すぐに持ち直した。


玲奈はその笑顔を見て気付いた。

自分の弱さに、みっともなさに。


自分は自分の弱さを授業のせいにした。

合格すれば自分は何も変わらないと、決め付けた。

でも違う。

自分は最初から変わる気がないだけなのだ。

逃げる理由を探しているだけだ。

昔から⋯ずっと⋯。逃げる理由を探しているだけだ。


もう逃げるな。隠れるな。後ろを見るな。前を見ろ。向き合え。己の弱さと。己の醜さと。


戦え。


玲奈は心の中で決意した。



「んもぅ、さっきからつたばかり。流石にしつこいわぁ」


「私、それしか出来なくて⋯、ごめんなさい!」


美玖は笑顔で言う。


「別に怒ってないわよ。しつこいのは戦士には大事な事。それにあなた、異能の扱い上手よ」


「そうですかね?」


「そうよぉ。私が言うんだもの」


2人はお互いに攻撃を加えながら会話していた。


「私の異能は『愛』。愛する事で強くなるの」


「愛する事で⋯?」


「そう。愛は凄い力なのよ?」


恋は語り出す。


「どんな妖精でもね、最初は親の愛を受けて産まれてくるの。そして、次は周囲の人達の愛を受ける。そして、自分が大きくなったら今度は周りに愛を振りまくの。周りを愛するの。私達と愛って言うのは切っても切り離せないのよ?」


「凄いですね。愛って!」


「そう!凄いの!それでね⋯」


そんな中、玲奈は2人の様子を伺っていた。


何処で割り込める?

2人の間合いにはどうやったら入り込める?


玲奈はタイミングを見計らう。

もう、迷わない。確実に勝つ。


「玲奈!!」


美玖が玲奈の名を呼ぶ。

玲奈は呼ばれたと同時に跳ぶ。


恋はすぐに反応する。

が、今度は違う。


「っ!」


恋は美玖に金縛りにされる。


玲奈はそれを見て、美玖の放つつたに掴まろうとする。

しかし⋯


届かない!!


玲奈の手が少し届かなかった。

が、玲奈はそこで諦めるような状態ではなかった。


「はっ!!」


玲奈は指先から枝の触手を放つ。

その指先がつたを掴んだ。


掴めた!!


玲奈はつたを掴んだまま回転する。


恋には2人の行動が読めていなかった。

すると、玲奈が勢いをつけて飛んで来た。


まずい⋯!


恋は守りの体勢をとる。


しかし、それは無意味だった。


玲奈は恋を通り越し、後ろに吹っ飛んでいった。


「「「え?」」」


3人の言葉が被った。


玲奈は勢い余って吹っ飛んでいった。

そして、そのまま着地した。⋯しかし、着地は失敗した。


何をしたかったの????


恋の頭には『?』が大量に浮かび上がっていた。


「痛たた⋯」


玲奈は上手く着地出来ず体を打ち付けていた。

玲奈は顔を恋の方に向ける。


「よし、成功!」


「何が!?」


恋は驚きが隠せなかった。

しかし、それと同時に恋は何かに気付いた。


玲奈の右手にはタスキがあった。


恋は自分の右腕を見る。

取られている。完全に。2つとも。


「あぁ〜、取られちゃったぁ」


美玖は走って玲奈に近付いてくる。

そして、玲奈に抱き着いた。


「ちょ⋯!美玖⋯!」


「やったぁ!勝ったぁ!合格だよー!万歳しよ!万歳!」


「っ⋯しない!」


「えー、何でー?」


恋はそんな2人の様子を見ていた。

明らかに彼女達はこの授業の中で変わった。

それが招いた結果だった。


「合格よ、2人とも。さ、テントに戻りなさい」


「「テント?」」


2人が同時に尋ねた。


「この授業が終わった人はテントに行くの。合格不合格関係無しにね」


「それって何処にあるんですか?」


美玖が尋ねる。


「出口を出た所に休憩所があるの。そこよ」


「え、ここから出口まで向かうんですか?」


玲奈が聞く。


「そうよ、さ、行きなさい」


「いやいや、行きなさいじゃなくて。私達もう足動かないんですけど」


2人の体力はもう限界だった。

半ば倒れ込むような形で勝利していたのだ。


「気絶してる訳じゃないんだから私が運ぶ義理はないわ。動かなくても行きなさい」


「あの、怒ってます?」


玲奈は聞く。


「んー?別に怒ってないわよ?」


「絶対、怒ってますよね?」


「いやいや、そんな⋯久しぶりにさんざん酷い目に合わされた挙句、完封されたからって怒ってないわよ?」


「怒ってる!絶対に怒ってる!」


恋は怒っていない(?)様子だった。


「はぁ、しょうがない。美玖、行くよ」


玲奈は美玖と共に立とうとする。

だが⋯


「⋯美玖?」


美玖は眠っていた。


「何で!?」


「多分、疲れちゃったんでしょうねぇ。散々異能使ってたから、魔力切れなのかもしれないわ」


「魔力切れ⋯?」


「まぁ、今は休ませておく方が懸命ね」


「そっか⋯。で、美玖の事、誰が運ぶんですか?」


「若いんだから文句言わないの」


「あぁ⋯」


玲奈はその場に崩れ落ちた。

玲奈の足に激痛が走る。


「まぁ、仕方ない。私より頑張ってたし」


玲奈は美玖を背負って出口まで歩き出した。


⋯起きたら、謝らなきゃいけないなぁ。


そんな事を考えながら歩いていった。

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