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妖精として生きるつもりです。  作者: 納豆しらす
第二章 『繋ぎ合わせるべき欠片』
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第二十五話 『花園 美玖』

こんなに長く書いたの久しぶりかも

その少女はかつて笑っていた。

大人達を魅了する素敵な笑顔だった。


だがその笑顔は齢7歳にして壊されるのだ。


「アンタが何で⋯!」「そうよそうよ!」


それは同級生による壮絶なイジメだった。

イジメの理由は分からない。

その少女は只、とある男性の傷を治しただけだった。


「あいつ⋯!もう少し⋯もう少しで死んだのに!」


2人の内1人はそんな事を言っていた。


もう1人は記憶にはあまり残っていない。

いじめられたことは覚えている。でも、それだけだ。

名前も顔も覚えてない。

何故だろうか⋯?


「大丈夫?」


少女は誰かに声を掛けられる。


誰なのかは分からない。知らない人の声であるのは確かだった。

でもこの際、誰でも良かった。

誰でもいいから話し相手が欲しかった。

⋯友達が欲しかった。


だが、顔を見た時に運命を感じたのは気の所為なのだろうか。

それとも⋯



その少年とはよく遊んだ。

ほとんど毎日のように遊んだ。


彼と一緒なら何をしても楽しかった。退屈な時間などなかった。


いじめられても彼が追い払ってくれた。守ってくれた。⋯自分は一度も守った事は無いのに。


自分が彼にとっての何だったのか分からない。

それはそうだ。自分が勝手に彼と遊ぼうと思って遊んでいるのだ。

そこに彼の意思はないのかもしれない。


でも、もしそこに彼の意思があったのなら⋯

彼も自分と同じ気持ちなのならば。


少女はそんな夢をずっと抱き続けていた。


彼に好きって言わせてやる!


少女は奮闘した。心なしか彼の顔が自分の猛アタックにより、赤くなっているように見えた。でも、少女は迷った。そして、考えた。


好きなのは自分だけかもしれないと。


少女は夢を抱くのをやめた。⋯やめた⋯のだ。


私!○○の事が⋯!


少女は自分の気持ちを抑えられなくなっていた。

少女は言葉を口にしてすぐに焦る。

自分は何を口走っているのだと。


でも目の前の彼の顔を見て、そんな考えはすぐに吹き飛んだ。


彼も自分と同じだったら⋯


少女の夢は叶ったのだった。


それから少女は無敵だった。


いじめられても怖くなかった。辛くなかった。


彼がいたから。


2人は日が暮れても遊んでいた。毎日のように一緒にいた。

少女は幸せだった。


だが、ある日を境にそれは一変する。



ある日、彼が公園に来なくなった。

少女は風邪か心配になった。


来る日も来る日も少女は待ち続けた。

毎日毎日待ち続けた。いじめられても待っていた。日が暮れても待っていた。雨が降っても待っていた。


少女はずっと待っていた。


少女は強い希望があった。彼は必ず戻ってくると。運命の相手なら必ずまた会えると。


ある日、いじめっ子の1人が公園にやって来た。


少女はまだ彼を待ち望んでいた。


すると、そのいじめっ子が言う。


「いつまで待ってんの?もう来ないのに」


少女は反論する。


「それはまだ分からないよ」


「いや、分かるね。彼はもう戻ってこない」


いじめっ子はそう断言する。


「⋯あなたに彼の何がわかるの?」


「⋯え?」


「あなたは彼の何を知ってるの?」


「⋯知ってるよ」


「え?」


「アンタの彼氏はあなたに失望してた」


少女はその言葉を理解出来なかった。


「嘘!そんなの嘘!」


「嘘じゃない!ちゃんとこの目で見た!」


「そんな⋯!」


いじめっ子は口元に笑みが浮かぶ。


しかし、その笑みは目の前の少女の姿を見て一瞬でなくなった。


少女は泣いていた。初めて見る表情で。



美玖は地下で目を覚ます。


「この夢⋯昔の⋯」


美玖は辺りを見回す。

人の気配は無い。


「⋯なんで今更、昔の夢を見たんだろう」


それは忘れたくても忘れられなかった過去だった。


「⋯とりあえず、今はここから出る方法探さないと!」


しかし、身動きが取れない。ガチガチに縛られている。


「よくあの短時間でこんなに⋯」


美玖は考える。

今なら⋯異能⋯使えるかな?


「ほっ!」


美玖は異能を発動させた。しかし、何も起こらない。


「これでもダメなの!?」


美玖は溜息をつく。


「はぁ、やっぱり私はダメダメだなぁ」


美玖は呟く。


「私に比べて玲奈は⋯」


運動も出来て、顔が綺麗でスタイルも良い。コミュ力もあって、私より面白い。


玲奈は⋯玲奈?


美玖はそこで何かを思い出す。


「竹木⋯玲奈⋯」


それはかつて自分をいじめていた内の1人の名前だった。

でも、今は仲がいいのだから関係ない。いじめられる自分が悪いのだ。

そもそも、いじめてたのには何か理由があるのだろう。


⋯でもなぜ忘れていたのだろうか。


⋯いや、違う。自分で忘れたのだ。


嫌な思い出だったから。思い出したくなかったから。


でも忘れきれなかったのは⋯きっと彼が関わっていたからだろう。


自分は彼の事も忘れたかった。⋯1番忘れたかった。

でも忘れられなかった。

⋯それぐらい好きだった。大好きだった。


もう彼に自分が想われる未来などないのだろう。むしろ彼はもう私を忘れているかもしれない。それならそれで好都合だ。心置きなく忘れられる。









⋯どうしよう。


忘れられない。

どうしても忘れられない。

絶対に記憶の片隅には彼がいる。

私の中には彼がいる。


どうして忘れられないんだろう。辛い記憶のはずなのに。未練は無いはずなのに。


美玖は過去を思い出す。


あの時なんで泣いたんだっけ。


そうだ。悲しかったんだ。

信じていた人に裏切られたのが。自分が捨てられたのが。

いつかこうなるかもしれないと思わなかった訳ではない。

でも未だに現実を受け止めきれない。


只⋯1つ分かった事がある。


私は彼が⋯まーくんが好きだ。

彼に似た人が好きな訳でも彼よりスペックが高い人が好きな訳でもない。

彼が好きなのだ。


優しい彼が。強い彼が。温かい彼が。心の広い彼が。なんでも出来る彼が。かっこいい彼が。


好きだ。


私は彼のようになりたい。


彼ならどうするだろう。

彼ならきっと、最初から捕まったりはしないだろう。仮に捕まったとしてもすぐに縄を解いて動き出すはずだ。

彼は賢いし、強い。きっと出来る。


きっと⋯彼なら⋯


「私には無理だな⋯」


美玖は小さく呟く。

自分を縛る縄を見ながら。


「⋯こんなだから、⋯捨てられちゃったんだよね」


美玖は震えた声でそう呟いた。


それと同時にあるクラスメイトの顔が浮かぶ。


「⋯私、馬鹿だなぁ。彼がそうなんじゃないかって勝手に期待して、名字だって違うのに」


美玖は呟く。


「⋯アホらし」


私は自分が好きじゃない。

否、昔は好きだった自分の事を今は好きになれない。


自分は他とは違うから。


『愛を見せて?』


突如、恋の言葉が頭の中に響き渡る。


「愛⋯」


私の愛は何だろう。自分への愛?違う。


きっと⋯自分の愛は⋯


彼に向けた自分の思いの表れなのだろう。


それが今の自分にとっての愛だ。


すると、今度は頭に別の誰かの声が響く。


『みーちゃん!』


「!!」


『今日は何する?鬼ごっこ?』


『その花、綺麗だね』


『僕、みーちゃんと一緒にいるの好きだよ。楽しいし、何より⋯いや、何でもない』


彼は時々大人みたいな仕草をすることがあった。


「みーちゃん?」


「え?」


美玖の目の前にその少年が現れる。


「どうしたの?そんな辛そうな顔して」


「辛そうな⋯顔⋯?」


「うん!すごく辛そう」


その少年は美玖を優しく抱きしめる。


「なにか辛いことがあったんだね、⋯ごめんね」


「え?何で謝って⋯」


「僕が守ってあげられなかった、気付いてあげられなかった、だから⋯ごめん」


「⋯いや!まーくんは悪くなくて⋯私が⋯!」


少年は美玖に抱きついたまま離れない。


美玖はそれを見て気付く。


自分はなんと愚かなのだろうと。昔からずっと気にしなかったのだ。

自分が彼との時間を楽しんでいる間、自分はずっと彼に負担をかけ続けていたのだ。


彼を知っている。どんな人なのか知っている。


彼は責任を背負う人だ。

自分の責任も他人の責任も、全て1人で背負い込む。

昔から知っていた。気付いていた。

気付いていたのに⋯何もしなかった。


彼に聞いた事はある。

あなたは自分のことを責める人なんでしょ?って。


でもそれだけだ。

何も彼の救いにはなれていない。


自分が奪われたのではない。自分が奪ったのだ。


だから⋯自分にもう幸せを得る権利は無い。


美玖はたった1人で背負い込む。

でもこれは他人の責任ではない。全ての自分の責任だ。

これは優しい彼に甘えた自分への罰だ。


だから⋯もう弱音を吐くのはやめだ。


美玖は顔を上げた。


少年の姿は消えていた。

いや、初めから少年の姿などなかった。

ただの幻覚だ。


「まーくん、今までごめん。そして⋯ありがとう」


美玖の目はたくましく、その姿はもう、強い心を得たものの顔だった。


美玖は魔力を再び込める。

辺りに変化は無い。

美玖は諦めず込め続ける。


「ふんっ!」


周囲が変化するのはそれからすぐの事だった。


地下の地面に緑色の何かが見え始める。


それは誰がどう見ても植物と言えるものだった。


美玖には原理が分かっていない。

地下の深くにあった植物が急成長した訳では無いだろう。

これは確実に今現れた。


そして美玖はなにかに気付く。


「これ⋯魔力⋯?」


その植物には膨大な魔力が流れていた。


そしてその魔力は⋯


「私の⋯?」


美玖のものだった。


「よく分かんないけどこれなら!」


美玖はその植物を操作し、自分を縛っている縄を斬る。


「よし!解けた!」


美玖は立ち上がる。


「玲奈の所に戻らないと⋯!」


しかし、ここからでは相当遠いだろう。大分長い間運ばれてきた。場所も分からない。


「何か⋯見える⋯?」


美玖の脳には何かが映っていた。


「これ⋯!」


そこに映ったものには玲奈と恋のやり合う姿があった。


映像の画角的にこれはその場にある植物から送られてきている映像なのだろう。


だがあの辺に植物は無かった。


おそらくこれも美玖の魔力によって出来た植物なのだろう。


「あんなに遠くまで⋯!」


美玖は内心驚いていた。自分の魔力がかなり遠くまで伝わっているのだ。


美玖の中では何かが変わっていた。


でも今はそんなこと、どうでもいい。


早く向かわなければ。玲奈の元へ。


「でも⋯走ってたら決着が⋯!」


映像を見た時に玲奈はとても疲弊しているように見えた。


「!」


美玖はある事を思いつく。


「成功するか分からないけど、やってみるしかない!」


そう言うと、美玖は己の体に植物を巻き付けた。


「いっけーーーー!」


植物は美玖を弓の勢いで吹き飛ばす。


そして、10秒後に美玖の視界には2人の姿が見えていた。


⋯勿論、彼女の姿も他の試験者達に見えていた。

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