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妖精として生きるつもりです。  作者: 納豆しらす
第二章 『繋ぎ合わせるべき欠片』
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第二十三話 『いきなりかよ⋯其の二』

逃げてもすぐに追いつかれるんじゃ意味がねぇ。


速度的な問題は置いておいて、そもそも俺たちは出口の反対方向に向かって走っていたはずだ。

⋯ねらった訳では無いが。


なのに、いくらなんでも追いつくのが早すぎる。足が速いとかそういう話じゃない。


俺たちの居場所を最初から知っているかのように思える。

先程手合わせした時も、俺の動きが見えているみたいに全部防いでいたし⋯。

なんならカウンターまで入れられた、というのは俺の不甲斐ない部分だが。


なんにせよ、俺はあの人の異能を知らない。多分そこに何かがある。


見つけ出せ、今ここで。


俺は天哉の方を見る。

天哉はこちらの視線に気づいたのか話しかけてくる。


「どうした?また俺に頼る気か?”俺と組めば退学は回避できる”って言ったのは誰だっけ?」


「俺だな。⋯顔を見たのは確認したい事があるからだ」


「ふーん、何だ?」


「⋯お前の異能、どこまでの事が出来る?」


天哉はその言葉を聞くと同時に俺に怪訝な目を向ける。


「どこまでって言うのは?異能の効く範囲の事か?そもそも、それを聞いて何になる?」


天哉は明らかに話す気など全く無い。

だから、俺はそれを無視して続ける。


「答えろ」


自分に出せる精一杯の覇気を出す。


「⋯⋯⋯」

天哉はしばらく黙り込んだ後、口を開く。


「⋯俺の異能は大抵の事は出来るんだよ」


俺はその言葉に苛立ちを覚えた。


「だから!それを聞いて⋯!」


「知らねぇよ」


勢いがかった磨童を天哉の言葉が止める。


「俺は自分の異能を知らない。どんな事が出来るのか、何が出来ないのか、何か条件はあるのか、俺の知らないことが出来るのか、⋯何も知らない」


天哉は続ける。


「聞けるもんなら俺が1番に聞きたい。俺の異能はどんな事が出来るのかって、俺には何が出来るのかって」


天哉は共感を求めるように言う。


「だってそうだろ?自分で得体の知れないもの使うって怖くね?自分の身に何が起きるか分からないだろ」


磨童は理解した。


この男が何を考えているのか。

否、天哉という男がどのような人物なのか。


天哉は磨童と同じ、自分が最初に⋯と考える人物だ。


自分が最初に動けば、自分が最初に戦えば、自分が最初に知れば⋯そんな考え方をする。


只、2人にとっての共通点はそれだけだ。


いや、他にもあるのかもしれない。


先程、逃げ出した時、2人とも戦うことから逃げた訳ではなかった。

後で作戦を立て、動いてもう一度戦うつもりだったのだ。


勿論、出口には向かっていた。

だが2人ともたどり着いていたとしても入ることはなかっただろう。

それが2人にとって何なのかはわかっていなかった。


⋯2人の共通点は、諦めの悪い、自己中野郎という事だった。

自分がしたいからする。助けたいから助ける。殺したいから殺す。勝ちたいから勝つ。知りたいから知る。

2人の共通点はそんな事だった。


それを知った磨童は笑い出す。


「ハハ⋯、」


「何か変なこと言ったか?」


天哉が不思議そうな顔で見てくる。


「いや、何も?ただ似てるなって思っただけだ」


「何が?」


「俺達が、だよ」


磨童は構え直す。


「もう1つ聞きたいことがあったんだ」


天哉は答える。

「何だ?」


磨童は少し間を空けてから言う。


「お前、戦えるか?」


否、それは罠を出す訳でも手助けでもなくて、


として戦えるかどうかという意味だった。


「ハッ、任せろ」


天哉は得意げに言うのだった。



美玖と玲奈は未だ蝶野には見つかっていなかった。


「見つかる前に出口を出れば⋯!」


美玖は必死だった。

何故なら────


「ここコンクリートばっかで私の異能、全然役に立たない!」


この演習場には野原や草むらと言った場所がなかった。

否、無い訳ではない。

只、近くに存在しないのだ。スタート地点が悪かったのか身近に植物というものがないのは事実だった。


玲奈は言う。

「大丈夫!私の異能は植物が近くになくても使える!襲われても問題ない!」


美玖は不安気に言う。

「ならいいんだけど⋯」


その時、美玖は何かを感じ取った。

「!」


美玖は慌てて足を止める。


玲奈もそれに気付いたのか足を止めた。


「どうし⋯」


玲奈がそう言いかけた時、美玖が危険を察知する。


「後ろ!」


「え?」


玲奈が後ろを振り向くと、そこには蝶野がいた。


「わっ!」


玲奈は咄嗟の出来事に対応出来ずその場に転がる。


「あらぁ?」


蝶野 恋は笑っていた。


「今のは防げたところじゃなぁい?」


蝶野は美玖を見つめて言う。


「そっちの可愛い子は気付いてたみたいだけどぉ?」


2人は蝶野を見る。2人は改めて、「異警軍戦士」というものを理解する。これが幾千の戦いを乗り越えてきた本物の戦士なのだと。


本気で行かなきゃ、やられる!


美玖はすぐに行動に移す。その場に落ちていたバールを拾い上げると蝶野にむかって飛び掛る。


「可愛いわぁ、可愛いぃ。愛着が湧くわねぇ」


蝶野は美玖の耳元で囁く。

「ホント、食べちゃいたぁい」


美玖の背筋に冷たいものが走る。

それは、蝶野に怯えているのでも戦士というものを恐れているのでもない。


純粋なる自分の敗北を感じ取った。


「そんなに怖がらないでぇ?可愛い顔が台無しになっちゃうぅ」


蝶野は美玖を舐めまわすように見る。


「な、何ですか⋯?」


美玖は見つめてくる蝶野に問う。


「いや、いい身体だなぁと思って」


蝶野は目を細める。


「その小さな手、良いわねぇ幼さを感じるわぁ。その細いウエスト、良いわァモデルさんみたぁい、⋯その大きな胸、つくところにだけついてるって感じでいいわぁ。そして何よりその綺麗な瞳、愛着が湧くわぁ」


蝶野は少し間を空けて言う。


「⋯あなた素敵ね。きっとモテるんでしょうねぇ」


蝶野は突如背後に攻撃する。


「⋯あなたも素敵ねぇ」


蝶野は背後にいた玲奈を見ながら言う。


「その細い身体、守りたくなっちゃうぅ。」


玲奈はすぐに後ろに下がる。


「いい動きねぇ。危険を察知する能力は高いみたい」


蝶野はニコッと笑いながら言う。


「安心して?殺しはしないわ?敵では無いしね」


蝶野は間を空けて言う。


「只、ちょっと痛いかも。我慢、してくれる?これも試験なのよ。ごめんなさい」


普通に話し出した!?

さっきまで「ぇ」とか「ぉ」とか語尾についてなかった!?


美玖は突然のことに驚いていた。


「愛っていうのは素晴らしい感情よ?愛があれば全てが変わる。愛があれば強くなれる。何より⋯」

「愛は美しい」


「愛⋯?」


「そう、愛。愛よ愛。あなたにもあるでしょう?愛が」


「ちょっとよく分からない」


玲奈は言い放った。


「愛は誰にでもある感情よ?分からないのならいつか分かるようになる。それとも私が教えてあげましょうか?」


「いや、結、構、です!」


玲奈が自分の指先から放たれる枝で1発入れ込む。


「あらぁ、残念。でもいい1発よ。その威力を忘れない事ね」


蝶野は玲奈に攻撃を入れる。玲奈はそれに耐え切れず思い切り吹き飛ばされた。


「愛よ、愛。愛愛愛。あっ、いけなぁい。興奮してきちゃったぁ♡」


多分この人は興奮するとこの話し方になるのだろう。


「さぁ、もっと私に愛を見せて?」


3チーム目が開戦した。

今回の話って対象年齢上げた方がいいのかな⋯?

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