第十九話 『協力』
呼び出しとは何だろう...?
俺は何かしたのだろうか?
それとも、異能の話だろうか?
何であれ、相手は担任どころの話ではない。
校長だ。
しかも十剣だ。
父さんの存在を知っている。
もし、正体がバレでもしたら、俺がどうなるか分からない。
仮に真実を知っていたとしたら...?
...いや、ありもしない話を考えるのはやめよう。
真実を知っているとしたら、俺と母さんくらいだ。
...いや、”真実”を知っているのは犯人ぐらいかな...?
何であれ、場合によってはこの呼び出しは好都合かもしれない。
十剣内部や異警軍の内部について詳しく知れるかもしれない。
まぁ、相手も相手だ。
油断は禁物だな。
そうこうしている間に校長室に着いた。
「着くのに30分かかった...」
薬木先生は着くのは10分くらいだと言っていた。
嘘つくなよ...。
何か言われたら謝罪からだな。
先生には一応、用件が長いから次の授業は遅れても構わないと言っていた。
もう1時間分の授業が終わるくらいだろうか...。
まぁ、気にしても仕方が無いだろう。
俺はそんな気持ちで校長室をノックする。
すると、中から声が聞こえた。
「入れ」
俺は中に入る。
すると、そこに校長が座っていた。
「随分と遅かったじゃないか」
「いやー...、道のりが分からなくて...」
「そうか?そこまで迷う程でも無いだろう。まさか、方向音痴だったりするか?」
「まさかそんな...」
いや待て...?心当たりがあるような...?
思えば、前世で引ったくりを追いかけてた時も...、
考えるのはやめよう。
「まあいい。今日は用があって呼んだ。初日からすまないな」
「いえいえ、あなたのような方に呼んでいただき光栄です」
「では、単刀直入に聞こう。君は何者だ?」
「...はい?」
「君は何者かと聞いているんだ」
「何者...とは?俺は俺ですよ?」
「そうか...。失礼。自己紹介がまだだったな」
校長は口を開く。
「私は神藤 史郎。十剣の1人だ。君も名前くらいは聞いたことがあるのでは無いか?」
「...まぁ、ありますけど...」
何が目的だ...?
「じゃあ君も自己紹介してもらおうか。”本当の名前”でな」
「!!」
これは...気づいているのか...?
それとも...、怪しいと思っているだけか...?
そもそも異能の件で違和感を持たれているのだろう。
誤魔化せるか...?
「...俺の名前は黒田 磨童です」
「嘘はつくなよ?」
圧をかけられる。
俺は誤魔化す。
「何の話ですか?言っている意味がよく分かりません」
史郎は少し悩んでから言う。
「じゃあ、聞き方を変えよう」
俺の方を見る。
「あの帽子は何だね?」
「!!!」
これは盲点だったな。あの帽子は父さんのだ。
何より、この妖精は十剣だ。
父さんの存在を知っている。
仕方がない。
事実と嘘を織り交ぜてやる。
「...実は、あれは魔天さんの帽子です。魔天さんは俺の師匠だったんです」
「...ほう?」
「幼い頃に両親を失った俺を拾って育ててくれたんです。剣まで教えてくれました。自衛できるようにって」
前世でも幼い頃、俺は親はいないようなものだった。
そんな俺に前世でも構ってくれたのは弟だけだった。
あんな親のせいで反抗的になってしまったが...。
「あの帽子はその時に貰ったんです。でも、最後魔天さんがあんな事をしているとは思いませんでした」
「君はよく、10年以上も前のことを覚えているな」
「それほど印象に残っているんです」
「いいね。いい作り話だ」
「...は!?聞いてましたか!?俺は...、」
「分かっているよ。嘘だって。それに私はまだ君に警戒されているようだしな」
「...どういう事ですか?」
「君...、ここに入ってきてから、異能をずっと発動しているだろう?」
「!!!」
先程からとんでもないなこの妖精。
やはり十剣と言ったところか。
というか、なぜ気付いた?
「ハハハ、無理もない。君の反応は正しい」
史郎は改まる。
「では単刀直入に、君は魔天の息子か?」
「...!?」
「正直に答えてもらう」
「...」
俺は黙り込む。
というか、もうその時点で隠しきれていないだろう。
だが、俺の理解が追いつかない。
そこで史郎はあるものを取り出す。
「これを見ろ」
「...これは?」
それは1枚の写真だった。
...そしてその写真には、
「...!!これ...!!」
俺達家族の写真だった。
「...何故こんなものを?」
家族でもないものが何故この写真を持っている?
まさか...父さんをやったのは...?
「これは魔天から貰ったものだ」
俺はいまいち信用出来なかった。
「...魔天が死ぬ前に私にこの写真を渡したんだ。俺には子供がいるって」
史郎は再びこっちを見る。
「私は昔、魔天の担任をしてた事があってな...、それで唯一信用出来ると言って、私にこれを」
「...何故?」
「八月だけに頼らせたくは無かったのだろう。私に君達を護るように頼まれた。ま、家を尋ねてみたら、家ごと無くなってて生きていると思わなかったがな」
「...断らなかったんですか?」
「最初は断ったさ。死ぬつもりか?って」
史郎は目をつぶる。
「でもあいつは、どうしても決着をつけなきゃいけない奴がいる、とか言って」
「...1人で行かせたんですか?」
「最初は意味が分からなかったな。私情で戦いなど、それはもう異犯者と一緒だ」
史郎は質問に答えなかった。
「...行かせたんですか?」
「まぁ、聞け」
史郎は続ける。
「決着という言いぶりから因縁があるのでは無いかと思った」
史郎は少し笑う。
「...私は、この事件に関わってしまったのだろうか...?」
「...どういう事ですか?」
「...八月がこの事件を調べていた際に、私にいくつか重要な情報を述べた。それを聞くだけでも鳥肌が立つものだった」
俺は唾を飲む。
「犯人までは分からなかった。どこにいるのか知っているのも八月だけだろう」
史郎は俺の眼を見て言う。
「君は何故ここに入学した?」
「...へ?」
俺は言ってしまってもいいのでは無いかと思った。
だから言おう。味方に付けられればこの人は大きな戦力になる。
「行方不明になった兄妹を探すためです」
「!!」
史郎は言う。
「この写真に写っている2人は行方不明になったと?」
俺はもう自分を止めない。
「...はい」
「...それは気の毒だな」
史郎は少し考えてから言う。
「...もし、私が初めから君たちの家を知っていればこんな事にはならなかったかもしれない」
「...ではなぜ来なかったんですか?」
これは俺が自分に言いたいセリフだ。
俺がもっと早く家に帰っていれば...
そもそも家から出なければ...
こんな事にはならなかったかもしれない。
「八月が死んでからすぐ八月の家を尋ねたんだ。...でも、そこに君達も八月もいなかった」
そう。父さんと離婚してすぐ違う場所に住んだ。
でも、父さんが死んでからさらに家を移動した。そして、母さんが死んでからはもっと遠い小さな住処に。
「私は、全員死んでしまったのかと思った」
史郎は続ける。
「だが、君が入学してくると知って安心したんだ。だから呼び出した。まさかそんな事になっているとは思わなかったがな」
史郎はこっちを見る。
「...君はこれからどうする?弟と妹を探すのか?...それとも...」
「まずは2人を探します。そして、その事件についてはこれから調べていくつもりです」
「そうか」
「...あなたは味方ですか?」
「...少なくとも敵では無い、と言っておこう。ただ、私もその事件については少し調べている。もし、情報や手がかりなどがあれば教えてくれ」
「...はい」
「...それからだが、力は復讐のために使うものでは無いぞ」
「...しませんよ、そんな事」
「...味方では無いからな?」
「...失礼します」
話は終わりだ。
手掛かり自体は何も掴めなかった。
だが...、強力な助っ人ができた。
さて、ここからは調査だな。
どこから調べるべきだろうか。
俺はこの後、2時間の遅刻で説教を食らうのだった。




