第十二話 『第2の始まり』
第一章最終回です。
母さんの通帳に入っていたのは7000万FR程だった。
ちなみに1FRというのは日本円でいうところの1円と同額だ。
つまり、今7000万円持っていることになる。
弟と妹がいるし、食費以外にも金が掛かるだろうが、数週間は言い過ぎなのではないだろうか?
余計なお金を使わなければ数ヶ月は持つと思うが…
まさか、学費も含まれているのか…?だとしたら、まだ足りないのでは…?
2人とも大学までは出るのではないだろうか?
そうすると、学費が大きくかかる。
7000万あるとはいえ、今まで通りの生活は送れるはずがないだろう。
だから、極限まで節約して稼ぐしかない。
そのため、電気とガスの使用を限りなく0にした。
...この世界は普通にガス等を使用して火を起こす。
電気も同じで、発電して作り出す。
しかし、そこに魔力が絡む事は無い。
本当に人間界そっくりだ。
そう考えると、人間が妖精に変わっただけの様に思える。
俺は中学生になった。
なんならもうすぐ卒業だ。
でも、卒業出来るなら早くしたかった。
お金や生活の事を考えると、俺は早く働かなければいけない。
中学生で出来る仕事など、新聞配達程度しか無い。
高校生になれば、もっと職の幅がひろがるので、もっと沢山お金を稼げると思っていた。
だから、あと数日耐え切る。
卒業まではあと5日...
◇
零斗は学校で、優秀な成績を収めている。
円香も零斗に続き、優秀だった。
そして俺は最近、家にいる事が減った。
朝は早くに出勤して新聞配達をしなければならないし、中学校はあえて分けてある。
さらに、夕方の新聞配達も行う。
夜中は近くのスーパーが半額セールを行っているので、それを狙って買いに行く。
さらにその後、部屋にこもって勉強する。
そのため、ほとんど家にいなかったし、いたとしても部屋にいるのがほとんどで、2人との交流が無かった。
だから暇な時は沢山、相手をする。
しかし最近、思春期か反抗期なのかは分からないが、構ってくれなくなった。
それだけならまだいいが、俺に対して反発が強くなった。
と言っても、これは円香だけであり、零斗は落ち着いているし、なんなら俺に懐いている。
しかし、円香は俺を嫌っているように見えた。
さらに、円香は零斗に懐いている。
零斗に懐いているだけなら特に問題は無いが、嫌われるのは少し困る。
ここには3人しかいないから。
零斗に負担が掛かってしまう。
俺はなるべく2人に負担を掛けたくなかった。
2人が苦労する必要は何も無いからだ。
俺は長男だし、2人の兄だからしっかり面倒を見なければならない。
そう、それが今の俺だ。
しかし、この時はまだ気付いていなかった。
迫り来る魔の手がある事に。
◇
今日は卒業式だ。
とはいえ、生活はいつもと変わらない。
家には毎度いない。
しかしそれで良かった。
これで今日からしっかりと働く事が出来る。
給料が前より貰えるのだ。
そして、卒業式が終わる。
俺は夕方の新聞配達を終え、家へ帰る事にする。
しかし、俺は道を忘れてしまったようだ。
何処へ行っても、家が見つからない。
確かにボロい、小さい家だが、見つからないほどでは無い。
というか、周りの風景に家が少ない。
何故だ...?
理由が分からなかった。
でも、忘れる訳などない。
しかし、遠くの方をよく見ると、家があった。
建物に隠れて見えなかっただけだと思った。
しかし、いざ家に着くと、見た目はボロボロだった。
何なら、少し潰れている。
俺は硬直した。
...俺はすぐに走り出した。
「...っ!」
家の中には誰もいなかった。
俺はすぐに周囲を探した。
行ったことのある場所全てへ行った。
しかし、2人はどこにもいなかった。
「嘘...だろ...?」
また守れなかった。
また失った。
俺は何も出来なかった。
いつもそうだ。
行動は起こすくせに結果は見出せない。
死んだ時も引ったくりを捕まえられなかった。
結局、転生しても俺には何も出来ないのだ。
2人は生きているのか...?
分からない...。
もしかしたら、何処かで保護されているかもしれない。
俺は死んでいる事を考えるのをやめた。
そして、決めた。
「復讐してやる。父さんを殺した奴も、母さんを殺した奴も、零斗と円香を奪った奴も許さない」
意思は硬かった。
「殺してやる。そして、取り立ててやる」
この眼が宿った時から運命は決まっていたのだろう。
最初からこうなるはずだったのだ。
「殺した奴を見つけ出す。そして、2人も見つける」
この眼は捜索に向いている。
俺がこの手で終わらせてやる。
決意を胸に歩み出す。
これが俺の生き方だ。
今、決めた。
◇
「...ある程度予想はしてたが、まさかここまでとはな」
無黒慈は磨童の様子を見ていた。
「これが最後に転生させた子...?」
無黒慈と共に草花もその様子を見ていた。
「可哀想な子ね。転生したのに、家族みんな殺されちゃうなんて」
「まぁ、家族全員では無いだろうな」
「だとしても、ここまで不憫な子初めてじゃない?」
「でも、前に転生させた奴はかなり複雑そうだったぞ」
「そう?」
「そう」
「...でも、この子いい眼をするわね」
「どんな眼?服を透かして見る眼?」
「違うわよ。いや、違くはなさそうだけど...」
草花は続ける。
「目的を達成する事だけを考えている眼よ」
「あーね」
「あ、興味無さそう」
「まぁ、無いかな」
「あ、ヒドイ!」
「...もう少し話しとくべきだったかな」
無黒慈は考える。
「何を?」
草花が尋ねる。
「...なんでもない」
すると、そこに1人の神がやって来る。
「よ!何の話してんだ?」
「おお、久々だな天照」
その神の名は天照。
その名の通り、太陽の神だ。
「いやー、器が死んじゃってさー」
「でも、それ大分前じゃないか?」
「まあな。8年前だぜ?」
「なんで今まで顔を出さなかった?」
「いやー、忙しくてな?というか、お前がしてない仕事押し付けられたんだが?」
「...なんの事かな?」
「まぁ、いいや」
天照が話題を変える。
「というか、お前、転生騒ぎもう辞めたのか?」
「ああ、辞めたよ。やる必要が無くなったんでな」
「そうか。まぁ、あれは禁忌に関わるから辞めてくれるならありがたい」
「禁忌...ねぇ」
無黒慈は禁忌について知っていた。
それは、神が他の世界と関わりを持つと消滅してしまうというものだ。
実際、転生は他の世界と関わりを持ってしまう行動だった。
「ま、お前に禁忌は通用しなさそうだけどな」
そう。
無黒慈に禁忌は通用しなかった。
そのため、無黒慈は色んな人をバンバン転生させまくってた。
「私、それずっと思ってたんだけどなんで?」
草花は尋ねる。
すると、天照は驚いた顔をする。
「え、知らないの?神の中では有名な話だぞ?」
「?」
草花は流行や噂には疎かった。
「...無黒慈に禁忌が効かない理由か」
天照は少し考えてから言う。
「まぁ、それは無黒慈が強すぎるからかな」
「...は?」
「コイツの存在ってほぼチートなんだよ」
「???」
草花の謎は深まる。
「神は本来、神界以外の世界に行った場合、消滅するんだが、無黒慈の場合は世界が耐え切れなくて消滅するんだよ」
「...え?」
草花は無黒慈を見る。
「あなたってそんなすごい人なの?」
無黒慈は笑う。
「信じられない!このグータラが!?」
天照は笑ってる。
「ハッハッハ、まぁ直に慣れるさ。神の中でもチートな奴なんて無黒慈とアイツぐらいさ」
「アイツ...?」
草花は再び疑問を抱く。
しかし、2人が自分が何も知らなかった事に対して煽ってくるので、聞くのはやめる事にする。
そして、自分で調べる事を決意した。
…調べるってどうやって?
草花は調べ方を知らなかった。
というか、何を調べればいいかも分かっていなかった。
◇
俺は通帳を持った。
通帳には傷1つ付いていなかった。
多分、母さんの魔力が流れてる。
傷が付いても直るようになっているのだろう。
そして、俺は父さんが昔被っていた帽子を深く被る。
そして、俺はその家を発った。
新しい安い家を見つけ、そこに住む事にする。
まずは2人を探す所から始めよう。
こうして、転生した俺の第2の人生が始まった。




