第十話 『嘘』
あれから、少し経った。
未だに距離感が新米カップル...では無いが、お互いに意識はしていた。
「そういえば、僕、みーちゃんの異能について詳しく知りたいな」
「私の異能?」
美玖は少し考える様に言った。
「そうだなぁ。よし、あそこの花で試して見よっか!」
そして、花畑へ向かう。
「いくよ?」
みーちゃんは手を突き出す。
すると...
「え!?なにこれ!?」
なんと、辺りの花が突然成長し始めたのだ。
しかも、みーちゃんの元へ近づいて来る。
みーちゃんは前に植物と会話出来ると言っていた。
でも、ここまで出来るとは思わなかった。
すると、みーちゃんは言う。
「私、植物と会話出来るし、操れるの!」
とても自信気だった。
「私の異能「植物」って言うらしいの。だから、植物に関する事がほとんど出来るんだって!」
みーちゃんはこっちを見て言う。
「凄くない!?」
褒めて欲しそうだった。
なんなら、顔が(*´▽`*)ホメテ~って顔してる。
完全に絵文字だ。
ホメテーって文字が小さく見えている。
俺の異能の影響では無いだろう。
だから、俺は言う。
「すごいね!僕、感激しちゃった」
みーちゃんは嬉しそうな顔で抱き着いてくる。
そして、みーちゃんは俺に聞く。
「まーくんの異能はどんなことが出来るの?」
俺は考える。
全てを話して良いのだろうか?
黙り込んでいると、興味津々にこちらを見ている。
...話すしか無さそうだ。
「例えば、遠くにあるものを見たりとか、物を透かして見たりとか出来るよ」
暗視や動体視力については説明しなかった。
説明する必要が無いからだ。
ここで俺は嘘を織り交ぜる。
「この異能はお父さんにもの凄く褒められたんだ」
それは織り交ぜる程の嘘では無かった。
俺が望んだ只の理想だった。
みーちゃんはゆっくり聞いていた。
でも、突然顔を赤くした。
...何故?
そして、みーちゃんは口を開く。
「...まーくんは私の服が透けて見えてるの?」
みーちゃんは身体を手で抑えていた。
...!!!?!?!?!!
感嘆符が大量だった。
俺は咄嗟に口を開く。
「見てない!見てないから!」
みーちゃんは言う。
「ホントに?」
「うん!そうだよ!嘘ジャナイヨ!」
...嘘です。
少し見ました。
ごめんなさい。
いや、でも不可抗力だから!
まだ、力が上手く扱えていなかっただけだから!
別に見たくて見た訳じゃないから!
仮にも、中身は二十越えた大人だから!
流石に小学生には欲情しないから!
俺はロリコンじゃないから!
...多分。
自分でも最近ロリコンなのかよく分からなくなっていた。
いや、だとしても俺は悪くない!
悪いのはこの眼だから!
怒るならこの眼に怒って?
俺は悪くない!
みーちゃんは口を開く。
「...まーくんなら...良いよ」
何も良くないが?
好きといっても、相手は小学生だぞ?
いや、今は俺も小学生だけど...
「いや、流石に良くないよ...」
俺がそう言うと、みーちゃんは言う。
「だって、見たんでしょ?」
その言葉に俺の背筋は凍った。
「いや、それは...」
みーちゃんはこっちを見る。
「やっぱり見たんだ!!!!!」
カマかけられた...!?
凄いよ?
カマかけてきたよ?
俺はその場で土下座するのだった。
◇
みーちゃんと出会って1年が経った。
俺は8歳になった。
実は最近困った事が起きている。
みーちゃんをいじめていた2人が俺達の前に現れるようになったのだ。
俺は2人をいなしていたが、みーちゃんはそうはいかない。
いじめられた過去を持つ人は、簡単には立ち直れない。
...前世にもそういう人がいた。
名前はなんだっけ?
別に思い出さなくても良いだろう。
そして、その2人はことごとく俺達の邪魔をしてきた。
さらに、俺がいない間、みーちゃんは俺の知らない所でいじめられていた。
みーちゃんはもうボロボロに見えた。
でも、みーちゃんは俺の前では笑っていた。
俺には少しも楽しそうに見えなかった。
◇
今日は珍しくみーちゃんがいなかった。
いつもは俺より先に公園にいるから初めての事だった。
すると、そこにはいじめっ子の1人が来ていた。
そいつは俺に話しかけてきた。
「あれ、今日は1人なんだ?どうして?」
俺は答える。
「分からない」
いじめっ子は言う。
「アンタ、名前は?」
俺は腹が立っていた。
だから、そいつに言う。
「人に名前を聞くんだったら、自分から名乗るのが礼儀じゃないのか?」
全力で睨みつけた。
そいつは一瞬怯んだが、体制を立て直す。
そして答える。
「...私の名前は竹木 玲奈。で、アンタは?」
「...僕は黒... 黒田 磨童だ」
「そう、磨童ね。だからまーくんなんて呼ばれてるんだ」
俺は再度睨みつける。
今度は怯まない。
そして、驚きの発言をする。
「アンタまだ気づいてないの?」
「何の事だ?」
玲奈は少し考えてから言う。
「...出てきなさい」
すると、草むらから何者かが出てきた。
それは...
「みー...ちゃん...?」
なんで、そいつに呼ばれて出てきた...?
しかも、なんで隠れてた...?
俺は疑問で沢山だった。
そして、玲奈が言う。
「アンタ、捨てられたのよ?」
そして、手を美玖に向ける。
「ここにいる美玖に」
俺は言っている事が理解できなかった。
みーちゃんは下を向いている。
俺は尋ねる。
「どういう事だ...?」
「言葉の通りよ」
玲奈は笑って言う。
「美玖、言ってやりなさい?」
美玖が1歩前に出てくる。
そして、俺に言う。
「ずっと気持ち悪かった。早く死んで?」
俺は信じられなかった。
だから美玖に言う。
「何かの間違いか?脅されているなら僕が助けて...」
「うるさいんだよ!ずっとずっとまとわりついてきて、邪魔なの!好きって言ったのも嘘!私はそもそもいじめられてなんかいない!勝手に決めつけるな!ずっと気持ち悪いんだよ!!!!!!」
俺は固まった。
もう他人を信用出来なかった。
俺は振り絞って言葉を言う。
「もう...いいよ」
俺は髪を搔き上げ、右眼を見せる。
2人は俺の眼を見て、後ずさった。
そして、言う。
「気持ち悪いんだよその眼!」
「そうだそうだ!」
俺は自分が情けなかった。
こんな簡単に騙される自分が恥ずかしくてたまらなかった。
俺はもう、母さんにも顔向け出来ない。
俺の眼はその時、光を失った。
そして、言う。
「もう全部...どうでもいい」
俺は家に向かって歩き出した。
2人はずっと笑っていた。
家に帰ると、母さんが迎えに来た。
母さんは最近、笑う事が多くなっていた。
でも、俺を見た瞬間表情が変わった。
そして、俺を抱き締めた。
俺は決めた。
家族の為に生きると。
他人を信用しないと。
俺はあの公園での思い出を忘れる事にした。
もう、思い出す気も無い。
そして、俺があの公園へ行く事は2度と無かった。




