第35話 24インチの大きな故郷
両脇に木々が並び立つ山道。
引かれた白いテープは魔力を感じさせ来る者を通さんと待ち構え。
大きな鉄の固まりはその街道に異質な雰囲気を放ちこつ然とそこに立っている。
ハウゼにほど近い街道にあるソレは——
【遺跡】——
そんな【遺跡】の前に立つ4人の青年。
「・・・思ったより、でっかいなぁ。」
ぽそっと言葉をこぼす彼。付き添うのはとある兄弟にとある忍者。
今回のお話はケイスケが彼の出発点である【遺跡】に訪れた時のお話ーー
どうも、ボランティアにせいをだす好青年のケイスケです。今回はとある場所の前に来ております。なんでリポーター風かって?気分です。
気を取り直して現状報告を、ただいま俺、キキョウさん、マグ兄弟の4人は俺がこの世界に来る時に初めて訪れた場所、【遺跡】に来ております。
なんでここに来たかって?そもそも【遺跡は】騎士団が守ってるんじゃないのかって?そこはソレ、非常事態ですから。
王都が教われた事で現在騎士団はひたすら難民を救うために頑張っている。バラバラい散らばってしまったらしく、戦力が足りないとかでいろんな所から人が呼ばれているわけだ。
んで、この王都にほど近い【遺跡】の騎士団も本隊と合流して今はいないってわけだ。
重要である【遺跡】の警備を解いていいのか俺も謎なんだが、なんでも近いから何かあったらすぐ駆けつける、だから大丈夫!だそうだ。大丈夫じゃないよ!俺近づけてるよ!?
・・・まぁおかげで現代に帰る方法がわかるかもしれないんだけどもさ。
他の皆と合流できてないんで、今俺が出来ることといったらこんなことぐらいなわけでだ。
キキョウさんとマグ兄弟に言ってみたら思ったよりも簡単にうなずいてもらえた。現代どうこうは秘密にして「今しか遺跡を見る機会がないんですぅう!!」と言ったら「あー、良いけど俺らも興味あるし」という返答が帰ってきた。
その後の言葉は俺には聞こえていない「アイゼルの弟だしな」あー、だから俺には聞こえてないんだってば!
キキョウさんがしゃがんでなんか白いテープになんかしている。魔力がどうのこうので誰か来たら探知して騎士団に伝えるものらしい。ソレを外そうとしているわけだ。なんとういうチート。
しばらくごそごそしていたキキョウさんの手が止まるとプツンと言う音とともに白いテープが黒いテープに変わった。どうやらなんとかなったらしい。
こっちを見るキキョウさんにうなずきを返しつつ、マグ兄弟を先頭にして俺たちは【遺跡】の中へと入っていったんだった。
「薄暗いんだぜー。」
メークさんがぽそっとつぶやく。半分崩れ落ちた【遺跡】の内部は薄暗くて足下に瓦礫が大量に転がっていた。時折ぱらぱらと石が落ちてくるが、まぁこれ以上崩れる事はないらしい。
ぶつくさ言いながらメークさんが右手を軽く振る。火が出た。これも術のおかげなんだろうようらやましくなんかないんだからなチクショ——!!
ちょっと明るくなった【遺跡】の内部はやっぱり崩れ落ちた瓦礫で埋め尽くされていた。その中で一つ、埋められずに中央に立ち尽くす大きな鉄の固まり。
突然視界に現れたソレに反応するキキョウさん達。
「なんだぜコレ!?」
「知らないよ、そんなの!」
「・・・!」
驚いた表情の3人が戦う構えを見せていた。でも、俺からしたらそんな事はどうでも良いもので。それよりも重要な問題があった。
俺は目の前にあるでっかい鉄の固まりを直視する。
・・・見た事ある。この世界しちゃでっかい鉄の固まり。
俺はこの【遺跡】に召還装置とかいうファンタジーなもんがあると思って来たんだけどなー。そしたら俺が現代に帰る方法とか?わかるかなーっと思ってたんだけどなー。
・・・なんでコレがあるんだろうなー。むしろあれが召還装置ってか、あれか。俺はアレなのか。
彼らの目の前にある大きな【機械】
四角いその形は薄っぺらい長方形の、彼らの方にはガラスのような光沢のある面が向けられている。
現代ではごく普通に、生活の一部として取り入れられている。そう、ソレは——
「俺、貞子じゃねぇからぁあああ!!!!!」
24インチのテレビ、なのであった。
突然叫び声を上げた俺を「大丈夫かコイツ」という目線でキキョウさんやマグ兄弟が見ていた。でも俺ちょっとそれどころじゃないんです!
どう見てもテレビです。本当にありがとうございました。瓦礫に隠れて見えないものの、見た感じここにある機械はこのテレビぐらいらしい。
・・・、アレか、貞子よろしくのようにテレビ画面から俺はずるずると出てきたわけか。うらめしやの一言でもいってりゃ・・・良くねぇよ!?
やや混乱してる俺をキキョウさんがなだめてくれた。
平たく言うと混乱してる俺の脳天にキキョウさんのチョップが炸裂したわけだが。割れなかったのが不思議だよ。夏の風物詩スイカ割り頭にならなかったのが不思議だよ。そういう衝撃が頭にきたんだよ。
「おーい大丈夫か?頭。」
「・・・大丈夫です。」
キキョウさんとキークさんが遺跡を調べている。俺とメークさんは誰か来た時のための見張り番というなの暇つぶしをしていた。だってやる事ないんだもんさ。
あのテレビ以外見えるところに機械はないし、俺が機械について知ってるってのは言わない方が良いってメリカナさんも言ってたしな!
・・・既にさっきの貞子発言で駄目っぽいんだけども。
「頭、大丈夫か?」
・・・メークさんに2回もその台詞を言われてしまった。悔しいので返答を返す。
「ちょっと生もんの遺跡見て感極まっただけですから大丈夫ですよ!」
「あー、なるほど。アイゼルの弟だもんな。」
・・・ちょっと前にも聞いた台詞で返されてしまった。なんだか納得した様子のメークさん。いや、個人的には納得してもらってありがたいんだけども、それで良いのか。
むしろ納得する理由になるアイゼルはメークさんの中でいったいどんな人物になってるんだろうか。
同情する気分になるものの、それと同類扱いを受けてるのかと思うとそんな気はゴミ溜めにすてて焼却処分してしまいたい気分になった。
「むぅ。」
「調査終わったよ。といっても簡単な調査しか出来なかったけどね。」
「そうか、まぁしょうがないんだぜ。」
キキョウさんとキークさんが戻ってきた。いつの間にか空高くにあった太陽は斜めに傾いて奇麗な夕日を見せ始めていた。
今日は騎士団の隊長さんに頑張ってるからと一日休みを貰って来てるんだよなぁ。さすがにそろそろハウゼに戻らないと怪しまれる。人の良い隊長さんを騙している今の現状に申し訳なさを感じたり。
入り口付近でキキョウさん達が調査内容を軽く話してる横で、俺はじっとテレビを眺めていた。
24インチのテレビ。俺がここに来る前にしていたゲームも24インチのテレビにつないでたっけ。
俺の望んでいたものと違うけども、今こうして目の前に現代の、俺の知ってる物があるわけだ。
「むぅ。」
じっとテレビを見ていたらキキョウさんに服の裾をひっぱられた。見ればマグ兄弟も俺の方を見ていた。出発する、とキキョウさんが教えてくれた。
この遺跡にいた24インチのテレビは思ったよりも俺に良いものをくれたらしい。俺はキキョウさん達と一緒に帰り道を歩きながらそう思った。
王都を追われて以来何処か重たかった足取りが、今は軽くキキョウさん達に追いつく。
背後にそびえ立つ【遺跡】に強く歩む力強さを貰った俺は、【故郷】って奴の心強さに感謝しつつ前を向いてしっかりと一歩前に足を進める。
正直貞子ってイイタカッタダケーと言わざるを得ない。
久しぶりにー書いたらーやっぱりー小説の書き方をー忘れてるんだぜー。
それどころかー次の話の詳細すらー忘れてるんだぜー。
まさかのーメリカナさんの名前とかー実は忘れてて超焦ったんだぜー。
さて、どこからどこまでが真実でしょうか。ソレはあなたのみ知る。