第33話 **を断ち切る鋭い刃
ザッザッザッ・・・
規則正しく歩む音が聞こえる。
そして、怒号。
「ゆけ!恐れるな!!勝利は我らにアリ!!」
規則正しい歩の音だけが響き渡らず、響き渡るは金唸り音。
ぶつけ合う音と音の中をさっそうと駆け抜ける一組の人影があった。
走る彼等の足取りは軽く、目的の物を求めてひたすら走る。
軽い足取りは決して希望を伴ったものでは無い。
ただ、軽い足取りで走る事が彼等の成せる唯一の【最善】なのであった———
「え、ちょ。」
時は、ケイスケが王都にやって来て4月が過ぎたる頃。
「あの、え?」
時は、太陽が昇り始める陽の始め頃。
「いや、あの、さ。」
「え?オチは?オチどこ?・・・コレ将棋の話でしたーとかのオチじゃ、ないの?」
ない、みたいですね。
「え"。」
今日の朝の王都はなんだかとっても騒がしい様子。いったいどうしたんでしょうかね。
さてさて、本日のお話はです。今日は挙動不審なケイスケがとうとう、この世界での【お約束】に出会った日のお話———
いぃぃぃいいいい意味が分からないッ!!!(顔芸じゃないよ!!)
あ…ありのまま今起こっている事を話すぜ!『俺は今日久々に朝市に行こうと思ったら武器を持った黒集団に囲まれていた』。な…何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何が起きてるのかさっぱりわからねぇ…頭がどうにかなりそうだ…白◯束集団だとか集団コスプレだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの全貌を味わってるぜ…(現在進行形で)
…あん?何言ってるかわからねぇって?ついでにキャラ違いすぎるだろってぇ?
おいおい…俺はお前らのヒーローケイスケ様じゃnaik…いたたたた!石が!!読者の意志を伝えるかのように都合良く頭上から崩れた石がッ!!!!はいごめんなさい!!ちょっと調子乗ってましたッ!!!
・・・えーっと。どうも、ケイスケです。
前降り長いけどもう本当にコレしか良いようがないんだってばさ!!『朝市に行こうとキキョウさんとマグ兄弟と一緒に歩いてたら突然黒装束の日本刀集団が出て来ていきなり襲って来た』!!以上。報告終わり!!!
「なんで出オチじゃないんだぁああッ!!!」
「う?出オチってなんだぜ?」
「後ろ振り向いてる暇があるならちゃっちゃか走ってくださいぃメークさんッ!!!!」
「ほーぃ。」
たったかたと王都を走るキキョウさん達。
・・・何故キキョウさん達かって?俺はマグ兄弟、兄のメークさんの背中におぶさってるからだ。アレだよ。理系の俺の体力じゃぁついて行けないんだよ、ちょっと前にへばったんだよ。・・・く、悔しくなんかないやい!!
俺達は今混乱しまくってる王都の出口へと向かってひたすら走っていたりする。そして俺も混乱しまくっていたりする。恐怖のどん底だよ!!突然黒集団に襲われたもんでショック気絶もんだよ!!!!
キキョウさんとマグ兄弟がとっさの判断で伸してくれたから良いものの俺だけだったら間違いなく、死んでたね。・・・正直、いつぞやの霧の日の事が無かったら今頃こうやって逃げれてもなかったね!
足ががくがく震える。急激な運動を急激に止めたせいか・・・武者震いです。多分。そこの兄、背負ってもらってるのに言えた事じゃないけどもわかるように笑うのは止めてください。
狭い路地のような場所を走り抜ける俺達。先頭にキキョウさん、次に兄メークと背負われた俺、そして最後に弟キーク。
大通りは完全に黒集団に包囲されてるらしく、いつもは危険なこの路地が唯一の助かる道、らしい。と言われるといつもは怖いこの道も希望に溢れて見えたり・・・
しなかった。
どうにもこの道は俺と相性が悪い。らしい。
・・・突然、俺の目の前にいたキキョウさんが消える——
…キィッ…
軽い金属音の後、俺には突然ソコに現れたようにしか見えなかったんだけども、黒集団の一味なんだと思われる全身黒の奴らが立っていた。
構えるキキョウさん。キキョウさんの位置がさっきと違う事から多分さっきの金属音はキキョウさんと目の前の黒集団の一味が打ち合った音だったんだろう。
目の前の黒集団は全部で3人。数的には俺達のほうが勝ってるけども俺はお荷物、しかもメークさんの背中に乗っているという。
圧倒的、不利、である。
「に、逃げたほうが良いんじゃ・・・。」
「・・・無理そうだぜ?」
目の前の黒集団3人は逃がす気なんてねぇぜ!とでも言うように手に持った日本刀を構える。う〜む、さすが本職の人は構え方がかっこいい・・・って現実逃避してる場合じゃねぇっての!!!!
シュタッ・・・という感じに黒集団が俺達の方へ向かって走って来た。多分走ってるんだよ、早すぎて見えないけども!!
ソレを止めたのはキキョウさん・・・多分。なんか突然黒集団が消えたと思ったらついでにキキョウさんも消えて、突然黒集団の2人がキキョウさんとともにもう一度出て来たんで、多分。・・・俺、ヤムチャだったんだ・・・。
ん?あそこにいるのは2人。・・・3ー2=1・・・。アレ、もう1人は?
「甘いぜッ!」
メークさんの声と突然の揺れが俺を襲う。声がでかいッ!!
パッと前を見れば日本刀見たいのを持った黒い人としゃがんでソレを避けるメークさん。が、一瞬見えた気がする。素晴らしいGがかかって一瞬見た後ブラックアウトしたんで。あぁ・・・俺本当に今ヤムチャしてるんだな・・・。なんかしみじみしてきた。
メークさんが避けたせいで黒い人は路地にある民家に日本刀を突き刺す事になったらしい。右を見たら日本刀突き刺さってた。日本刀の柄を持った黒い人が超睨んでた。超、怖い。
そして豆腐を切るように突き刺しちゃった民家から日本刀を抜く黒い人。怖い。マジ、超、怖いんですけども。おそろしあ、日本刀。
「・・・ちょっとあの剣の切れ味は反則なんだぜー・・・。」
「まったく、だね・・・【kn】(ノット)!」
突如背後から凄い風が吹きすさんだ、あまりの風力に思わずメークさんの背中を思いっきり握る。
ほんの一瞬の突風の後、つむっていた目を開けると目の前にいたはずの黒い人はどっかに行っていた。・・・吹き飛ばしたんだろうか。
と、思ったらなんかキキョウさんの居る方から3つ程の人が倒れる音が聞こえた。
とっさにその方へ顔を向ける。・・・少し息の荒いキキョウさんの足下にうつぶせの黒集団の奴らが、3人。
血は、出てないけども、多分・・・。
ふっ、と、メークさんが息を吐いた。少し疲れが見える息で、ぱんぱんの風船から少し空気を抜くような感じがした。
ソレと同時に他の2人も軽く空気を抜いたような気がした。
「あー、コイツら結構やりやがる。こりゃ騎士団んとこ行った方が良いかもだ。」
「向こうも忙しいと思うよ。とりあえずメリカナかアイゼル辺りに出会えれば良いんだけどね。」
「むぅ。」
短い会話。長く話している暇はないってことなんだろうな。次の行動方針を決めたらしいキキョウさん達。メークさんが俺の方へ意見を求めるように目を向ける。
俺はただひたすら首を縦に動かした。なんたってすっげぇ緊張のせいで今にも吐きそうなもんで、言葉がでないもんで、そう、緊張のせいで。
俺の頷きを見たキキョウさん達は一目散にどっかに向かって走り出した。
どこに向かって走ったのか、俺は良く知らない。どうしてかというと、俺の目線はメークさんの背中を凝視してまったく動かさなかったから、だった。
「うへー。」
王都の外に出た俺達はじっと王都の方を見る。
ど真ん中にある大きくて奇麗な城から煙が出ていた。クーデターとか、革命なのかとキキョウさんやマグ兄弟に聞いてみた。
3人とも首を横にふった。違うんだってさ。この早さでこの規模の城を、騎士団を、王都を落とす程の勢力を持つクーデター集団なんていないそうだ。
考えられるのは・・・
「ま、あの様子だと王族とかは逃げてるだろうぜー。あの城から上がってる煙の中にニセモンの煙が混じってる。ありゃ王族や貴族御用達の発煙筒だな、逃げる為の。」
「他の住民も騎士団が逃がしてるだろうしね、あのメリカナにバシエルがいるんだよ?」
「むぅ。」
軽く、首を下に向ける。その後、空へ顔を上げる。
すっかり真上になった太陽を眺めた。現代でも戦争はあった、俺が見た事無いだけで日本人も巻き込まれた事があるってニュースで言ってた。
・・・巻き込まれたって聞いた家族や友人はこんな気持ちなんだろうか。
明日、明後日、ずっとその先の事になってもいい。
誰も欠けること無い、同じ笑顔が見れますように。
**のなかで【王将】【香車】【金将】【銀将】のコマが、嘆いている———
以上。今回で王都編終了!知ってるか、王都編は本来10話で終了のハズだったんだぜ(何故こんなに延びたし)
ちょっと暗めのお話。その為に本編32話は明るめの話になってます。あまりに唐突に始まるんで外伝で臭わせてみたら32話明るくした意味なくなっちゃったんだけども。
真面目に戦闘描写してみた。けどやっぱり駄目っぽい気が。結論:俺に戦闘描写は向いてない。
サブタイの**には好きな言葉をどうぞ。どんな意味にも取れるようにしてます。
あ、後アレだ。別にこの先暗い話にはなりませんのでご安心を、ちょっと物語が動いただけなのです。
それともう一つ。この先の本編で書きますが、他の人等は以下のようなグループで行動してます。
■メリカナ、アイゼル
■アリア、シェパ先生、ロー
■シリア、クラガーシェ(クラム)、アーダベルト
■バシエル、アルガレータ(アル)、ポコ
ちなみにグループの分け方に特に意味は無かったり。珍しい分け方に、シタカッタダケー。
おいおい集合させる予定ですが、後2〜3話後にはいつものギャグコメディ(?)になってると思いますー。