プロローグ2:その後:一日目
「有り難う」
先ほど私の前に現れたゴロツキ共を倒した男に礼を言った。
感謝の気持ちはある、ただ顔に表れないだけで。
「当たり前の礼等要らん。それよりも今更私に対する感謝の気持ちが表れた事に驚きだ。」
前言撤回。
「私はあなたを見たのは初めてなのだが、あなたは重役の者なのだろうか。」
もしこの者が重役だと世間体が悪いので一応聞いてみる。
「貴様も阿呆の一員か、金額と割りに会わん仕事をしたようだ。」
私が法律を造るなら第一条に「自己中心的で俺様な奴は流刑」と書く。
「・・・で、何か重役なのだろうか。」
「先ほどの私の発言を聞いておらぬのか、言ったであろう、世界の中心は私だと。」
その一言を聞き感謝の気持ち所か関わりを断ちたいと思った私の思考は間違っていないと思う。
私はその言葉の返答をしないままカウンターの主人に部屋の鍵を貰い自分の部屋へと向かった。
何か背後が騒がしかったが、何、空耳だろう。
空耳が聞こえる程今日の私は疲れているようだ。そうそうにベットに入り眠った方が良いだろう。
そうして、私の旅一日目が終わったのだった。
・・・・面白くない。
せっかく私が、この私が助けてやったというのにあの者は礼の一つで立ち去ってしまった。
「なぁ主人あの失礼な女子の部屋は?」
「・・・旦那・・それを聞かれて答えるわけには・・・。」
使えん男だ。
まぁ一応プライバシーとかそんなもんがこの世界では程々に守られているから仕方がないと言えばそうなのだが・・・。
・・・ん?
「?旦那、どうしたんですかい?」
「何やら面白そうな物が落ちている。主人、拾え。」
「・・・聞きますけど、何故あっしが?」
「私が地面に落ちている物を拾うと思うのか?汚れるだろう、私の手が。」
とぼとぼ、といった様子で主人が地面に落ちている物を拾った。
私を使おう等無理な事を言う主人だ。まったくそれを咎めず許す私は相当のお人好しに違いない。あぁ違いない。
主人はそれを拾うと驚愕に満ちた顔でこちらを見た。
「旦那!さっきの客城の騎士ですぜ!」
「城の・・・?何故そう言い切れるのだ。」
「コレをみてくだせぇな。」
見た。
「・・・鷹の紋章?王家の騎士団の紋章か。」
「鷹の騎士団」有名な王国騎士団の名だ。
その騎士団の名を聞いただけでその辺のゴロツキは縮こまり許しを請う。
また、ただの一般人がこの紋章をワッペンにしようとしただけで罰せられる程の代物でもある。
故に、この紋章を付けられるのは騎士団の者のみなのだ。
この紋章を落とすとは、本当に間抜けだなあの女子。
あの厳しい規律の中には確か落とせば流刑というのが無かったろうか。
哀れな騎士の末路が垣間見える。
しかし・・・。
「鷹の騎士団か・・・。」
頬の筋肉が緩む。
「私を雇うに相応しい金は用意出来そうだな。」
こんな田舎の宿屋の用心棒は飽きた。
そう、私程の者がこんな所で一時を棒にふるなどあってはならない事なのだ。
この紋章がある限り断られる可能性は一切無い。
・・・金を手に入れたいならこの紋章を使って揺すれば良い?・・・馬鹿な。
「この私が小物のような事をすると思うのか?この阿呆が。」