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Lei-VERT!  作者: 弐式
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第28話 小倉餡子の甘い罠

「・・・。」



彼は、困り果てていた。

手元には何やら鉄で出来た丸い人形。その脇にはびっしりと書き込まれたメモ、そして図面。

先程までせわしなく動き続けていた手は止まり、目は中空を行ったり来たり。手は頭をがしがしかくばかり。

何とも言えない声を発しながら、永遠と何かを考え続けていた。



「ここまで作ったんだし、もったいないよなー・・・。」



手が鉄製の人形に添えられる。



「・・・でもなー。【機械】だもんなー。コレ。いくら発掘品て言ってもコレはちょっと。」



まずいよなー・・・。怒られるよなー・・・。


彼はますます考え込んでいく。いや、彼の中で答えは固まっているのだがそれを実行するのをためらっているのだ。

彼の脳裏に浮かぶのは共に生活して来た人々。

彼の興味は目の前に有る鉄の人形。

そのまま小一時間程思案を繰り返し、ようやっと彼は自身の中にある思いを固めた。



「・・・皆には悪いけど、やっぱり、作ったんだから動かしたい。それ即ち、工業人の性であるっ!!」



そう言い、立ち上がる彼はどこか満足のいく表情をしていた。・・・開き直り、と取るような顔もしていた。

決意したなら即行動を。彼は直ぐさま出かける準備を始める。急がば回れ。と言った事は彼の中には無いようだ。

彼の準備物は少ない。手頃な鞄にモノを詰めて終わりである。彼は自身の部屋の扉に手をかけ、外へと、一歩踏み出した。



「桔梗ならまだ帰ってないわよ。」

「・・・あるぇー?」



が、共に出る人物がいないと知りすごすごと一端部屋に戻る彼だった。




















部屋で、ぼっけーっと時間をつぶす俺。時間にしてはわずかで対した時間待ってないんだけども。こう、何かやろう!としてつまずくとものすんごくやる気をなくす時って感じだ。例えば今から片付けようと思った時に親に「片付けなさい!」と言われた時のような。・・・しんちゃん。俺にはお前の気持ちが良くわかるぜ・・・。


なんて考え事からかつて現代でみたアニメの事を考えた俺は、机の上に置きっぱなしになっている【機械】を見て、肩を落とした。

そう、感の良い人ならお気づきの。いつぞやの「屋敷見取り図」から作った・・・【機械(ロボット)】だ。

そう、できたのさ。・・・外枠だけだけどな!いや、本来は外枠だけの予定だったんだけども。

俺はその【ロボット】を手に取る。某青い猫形ロボット程の大きさは無い。むしろミニ某猫形ロボットくらいのサイズだろうか。・・・実物を手に取った事は無いからわかんないんだけどな。

手に取ってしげしげと眺める。そうそう、この溶接部分はむずくて気の長くない俺は放り投げてやろうかと思ったんだよな。ここは設計上の強度の鉄が手に入らなかったからわざわざ合金作ったんだよな、比較的低温で溶けてくれて本当に良かった。

苦労した分、一個一個に思い出がある。ありすぎる。ここまで作ったら、さ?



「・・・完成させたくなるもんだろ、普通。」



はぁ。と頭を抱える俺。さっき自分に正直に生きる!と心に決めたのに時間が経つと・・・やっぱり俺の決意なんてこんな程度なんかねー。うなだれる。

元々、これを完成させるきは無かった。何故なら、コレが【ロボット】だから。

・・・普通に露店とかでも【機械】が普通に売ってるから忘れそうになるんだけども、【先人の兵器】って言われてる代物で。それが—設計図さえあればまぁ、そこそこ—作れる俺はやっぱり異端なわけで。


やっぱり作ったら駄目かなー。アイゼルはともかくメリカナさんに殺されそうな気がする・・・。


自分で結構危ない事をしているのはわかっている。けども研究者とかってのは時に自分の命よりも研究が大事な時がある。キュリー夫人しかり、だ。

俺もそこまでいかなくても純粋に、こいつが動いてる所がみたい。配線図とか、わけわかめのいみとろろだけども。

・・・良いよな。未知への挑戦を俺がしたって。それにだいたい・・・。


・・・だいたい、多分こいつどう頑張っても動かせないだろうし。


そう思って溜め息一つ。そう、多分これはどうやっても動かない。や、多少、動きはするだろうけど。

配線図はともかく、本来こいつに搭載されるはずのAIがなー。・・・まさか【ブラックボックス】物だとは思わなかったんだよなー。


【ブラックボックス】わかりやすく一言で言うと「なんか構造理解できないけども使える装置」の事。

例えばテレビとかも、構造は理解出来ないけども使える。実はアレも一般人な俺達から見れば【ブラックボックス】なんだそうだ。

んで、AIなんだが・・・構造は、図面にかいてあるんだけども。あの、どう、考えても、さ。・・・動くとは思えない図面なんですけども・・・。

だいたい、配線の端と端がくっついて輪になる配線ってどうよ。意味わかんねぇよ。コレ絶対現代でも【ブラックボックス】か【ロストテクノロジー】扱いだ。


・・・思ったより現代の地球は長持ちするのだろうか。


俺はこの世界が現代の未来かも知れないと思った時あんまり同様しなかった。この世界では現代の技術が途絶えてるて事は、まぁ一度人類が全滅しかけたか今この世界にいる人たちは人類に良く似た別の生命体かって事だろう。俺の知ってる現代でも地球環境とかボロボロだったんだ。別に近い未来人類が消滅するって言われても、現実味はないけども、納得出来るだろう。ので、以外と俺はこの世界が現代の未来説はすんなりと受け入れていたのだった。


現代に帰ったら地球崩壊の真っ最中でしたってのは嫌だからなー・・・。俺が生きてる間はもってくれないかな。


人畜無害な人生が良いです。と、俺は叶えてくれやしない神様とやらに祈った。ついでにどっかのマンションで家族5人くらいで仲睦まじい幸せな未来が欲しいですと人並みな願いも言ってみる。ま、もちろん叶えてくれないんだけどな。

俺は以外と現実主義者なのである。神は居ても居なくてもどっちでもいいけど、とりあえず助けには来ません!ってのが俺の中の神についての常識なわけだった。助けに来てくれるなら真っ先に神様に頼んで現代に返してもらいます。来てくれないからこうして一生懸命【遺跡】について調べて、行き詰まった息抜き兼暇つぶしに【ロボット】を作ってるんだ。


この世界の人々は神様信じてるから下手な事言えないんだけどな。八百万っぽい神様だから気は楽だけども。この世界中世っぽい感じだし。仕方ないよな。

現代で習った中世も神様は強かったみたいだし。今も、十分強い所は強いからな。宗教って怖い。


ぼっけーっと、部屋の中の窓を見つめる。太陽は真上をちょっと過ぎた程度。今日は洗濯はアリアさんがしてくれてるし、買い物は朝市ですましたので特に今する事はない。さっきまで暇潰しにしてた作業は詰まった。


早く桔梗さん帰ってこないかなー。今日どっか行くって行ってたっけ?覚えてないな。痴呆じゃないよな。最近前より大惚けをしでかす機会が増えたような。今日も昼に大真面目な顔で両手にフォークで飯食おうとしてたしな。「切れねえよ!」と思わず自分でつっこみを入れてしまった時は気恥ずかしさより周囲の目線が痛かった。アレは痛かった。本当に。










ガチャ








ぐだぐだしていた体に喝を入れる。玄関扉の音だ。つまり。



「桔梗さんが帰って来た。」



大急ぎで出発の準備を持って玄関へ行く俺。短い廊下を走り抜けてリビングにある玄関扉の元へ走る。

え?玄関とか靴箱はって?ここの家は中世風でございます。よって土足。よく考えたら靴箱って異端なんだよなと最近思った。

黒髪和服の人物発見。アリアさんと軽く会話をしてる。会話っぽくない会話なのはしょうがない。



「おかえり桔梗さん。さっそくなんですが出かけたいので一服された後、俺と一緒について来ては頂けませんでしょうか!」



最初は普通に、後の方は凄い勢いで体を90度におりながら言った。一度帰って来た桔梗さんをもう一度外へ連れ出すのは疲れてるだろうし、もうしわけない感でいっぱいなんだけども。俺一人でぶらつくとカモにネギなんで。カモネギなんで。お願いします。



「むぅ。」



了承らしい。桔梗さんがOKをだしてくれたなら俺がやる事は一つ。

せっかく市場で見つけた小豆を買ったんだ。一番の味見は桔梗さんの方が良い。忍者の里が俺の思う通りなら・・・食べ慣れてるだろうし。


桔梗さんを部屋に招き入れて、アリアさんに緑茶と例の物を頼む。彼女の入れる緑茶は本気でうまいのだ。

アリアさんの入れてくれた緑茶と例の物を持って桔梗さんの待つ茶の間・・・俺の部屋にある、コレまた市場で見つけて来たちゃぶ台の元へと向かった。

目の前に置かれた緑茶と例の物をみて固まる桔梗さん。そうそう、こういう反応してくれるからまた何かやりたくなるんだよな。

例の物を切り分けて桔梗さんの前に置く。アリアさんも遅ればせながら俺の部屋へと来た。・・・ぷれいべーと?俺の部屋にある窓兼扉ってベランダに繋がってるんっすよ?何それ、美味しいの?



「や、山内殿。」

「なんすか?」



驚きの表情の桔梗さんとその様子ににやにやする俺とアリアさん。桔梗さんが俺の名をそう呼ぶとは、久々の日本語っぽい呼ばれ方にちょっと懐かしさを感じる。

アリアさんがにやにやするのはアレだ。俺が四苦八苦しながらコレを作ったのをしってるからだ。


今、皆の目の前にあるのは緑茶にずばりあう茶菓子で、小豆を使う。つまり——



「羊羹。っすよ。たまたま小豆が売ってたんで。調理法に不安があるんで桔梗さんに味見してほしいんすよ。うまく出来てると良いんすけど。」



創作料理に近いそれは、小豆を発見した後俺がしってる図書館、本屋で和菓子作りのレシピを探し出して作った物だ。

かなりかすれてて古めかしいレシピ本しかなかったんで、固まるか少々不安だったんだけども。食べてみたら以外と羊羹でうまかった。・・・もちろん毒味役は自分でやりましたともさ。

いつも頑張ってくれてるお返しというか。ただ俺が作りたかっただけというか。

・・・でもま、桔梗さんは食べて。無感情ながらも美味しいって言ってくれたし。







嬉しい。そう純粋に思いを胸にする彼はまだ知らない。

部屋中に充満した甘い香りが何をもたらすのかを。

もうすぐ彼の者が帰って来る事も———







アイゼルが帰って来て、部屋中に溢れる甘い香りにケイスケがデジャブを起こし買い物が延期になるのはもう少し後のお話。

字の文が多いなら、いっそのこと字の文だけですすめれば良いじゃない!!

と開き直った話。コレは酷い。ぐだぐだになるなら、いっその事ぐだぐだにしてやるよ!でもこれでもまだましと言わざるを得ない。

何気に世界説明を兼ねた話。今頃まだ世界説明って・・・。


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