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Lei-VERT!  作者: 弐式
35/47

第25話 アーダベルト新聞社

とある路地裏——


そこには一つ、小さな店がありました。

看板には【**********】の文字が見えます。

古めかしいその外観から、失礼ながら、その***は儲かっていないのでしょう。

本来なら表通りに有るであろうその店は、不思議と路地裏の雰囲気とあっていました。

その店の前に、二人の人物がやってきました。



二人——なんとまた、マグ兄弟ではありませんか。


マグ兄弟は、その店の扉を軽くノックしました。





———ガチャ





少しして、中から人が出てきました。

よろよろのスーツを身にまとい、頭には帽子、首からカメラを下げている男性です。あごには無精髭が、彼の人柄を表していますね。


兄メークが彼に話しかけます。



「よう、アーダベルト。ちょっと情報売って欲しいんだけどさ。」

「新聞買ってかない客には興味ござぁせん。」



冷たくあしらってしまいました。まったく、新聞を作って売るのがお仕事ですもんね。

そう彼が発言した後、こう続けました。



「それになんども言ってるだろ?」



彼はマグ兄弟に指を指す。



「欲しいのはアイゼルの情報なんだろ?」

「そりゃな。」

「んじゃなおさらダメ。」



その発言に微妙そうな顔をするマグ兄弟。

彼はマグ兄弟を扉から少し離し、横目で左を見るようにやりました。



「俺も、身内を売るようなことをしたくないんでね。」






そこに居たのは、我らがケイスケとアイゼル。





はてさて、一向に先が見えないこの話を進める前に少し時間を戻して語りを進めましょう。


今日のお話はケイスケがこの【アーダベルト新聞社】に来ることになった。その理由とその後のお話です。






















「・・・アーダベルト新聞社?」

「そうだ。」



俺はアイゼルから渡された資料に書いてあったとある新聞社の名前を口に出した。

【アーダベルト新聞社】俺も知ってる新聞社だ。・・・ま、知った理由が何とも言えないんだけどさ。

・・・路地裏でさー、彷徨ってたらさー、その辺にあったんだよ【アーダベルト新聞】が。

確か記事の内容は・・・そういえば見てないな。まぁあの状況は結構ギリギリの精神下だったしなー・・・。


おっと、突然の入りで状況が良くわからないよな。今、俺とアイゼルはとある場所めざして街を歩いているんだ。

事の発端は、アイゼルが俺に言った「遺跡について情報が欲しくないか」という一言だった。

突然何を言うんだと思ったが、遺跡については俺も知りたい事があるし・・・。という事で今アイゼルとともに歩いているのだった。何気に洗濯とかまだだったんだけど、まぁ大丈夫だろう、多分。


・・・アイゼルと一緒って、嬉しくないよなー。


断言出来る、まず何が嫌かって?周りの目線が痛い事だな。

俺がアイゼルの弟というのを知ってる人はまだしも、知らない人は街で有名なアイゼルーが誰かと一緒に歩いてるなんてまぁ珍しい事この上ない。


初めて王都に来た日も気付かなかったけどこんな感じだったんだろうか。・・・やだなー。一緒に歩いてるだけで有名人になるって、コレ。


なんて事を思いながら歩いていると、突然アイゼルは細道へと足を向けた。

細道ーって、そこは———



「あ、アイゼルさん?」



おそるおそる、声をかける。



「なんだ?」



素っ気なく、アイゼルが聞き返す。面倒くさそうに、文句でもあるのか、と。

とりあえず、俺は命に関わるかもしれないんで、聞く。



「この道、路地裏になっちゃうんすけど・・・。」

「新聞社は路地裏にあるからな。」



・・・なんというか、誰か俺の日常を守ってください。









・・・とか、言いつつもアイゼルについて路地裏を歩いて行った俺。

自分の身も大事なんだけども、俺の現代に帰る方法・・・てのも行き詰まってたわけで。

アイゼルが俺を連れて行くって事は、俺にとっても悪くない情報があるんだろう、多分、きっと。

そう思う事にして俺はアイゼルの背中を、こわごわと、周囲に気を使いつつ付いて行くのだった。



しばらく歩いた後、突然アイゼルは歩みを止めた。

急に止まるもんだからちょっと背中にぶつかってしまった。上から目線が突き刺さる、俺は気にしない。上を向いたら負けだ。

目の前が背中でいっぱいなのでちょっと左に避けて先の様子を見る。

見えるのは狭い路地裏と——一件の店——だった。

店には看板が、【アーダベルト新聞社】と書いてある。どうやら目的地に着いたらしい。


・・・目的地に着いたのは良いんだけどさ、アレは、どうみてもアレだよな。



【アーダベルト新聞社】の入り口の扉に手をかけている二人組を見る。



うん、どうみてもマグ兄弟です本当にありがとうございました。


マグ兄弟はどうやら扉の前で何か話しているようだ。何を言っているのかはわからないが・・・。良く見ると扉は開いている、どうやら中の人と話しているようだ。

つ、とアイゼルの方を見る。・・・今にも殴り飛ばしたいという殺気が飛んでますこっちに向けないで。

ずんずんずん、とアイゼルがマグ兄弟へと近づいて行く、勿論俺に止める術等無い。マグ兄弟は良い茶飲み友達なんだけども、俺には無理だ。おとなしく成仏してくれ。

アイゼルはマグ兄弟の背後に着くと—多分気配とか消してるんだろうな—気付かないマグ兄弟の首根っこを掴むと、いつぞやの様に遠心力を使って空へ投げ飛ばしたのだった。





「何度でも死んで来い!!!!」

「「うっでえええええええ!!!!!・・・・・・」」




・・・奇麗に吹っ飛んだなー。他人事です。勿論。


俺はマグ兄弟を吹っ飛ばしたアイゼルに近づいて行く。実にすっきりした顔です。

アイゼルは俺を確認すると、開きっぱなしだった扉の奥に声をかけた。



「久しぶりだな。今日はちょっと情報が欲しくて来た。」

「ここは情報屋じゃなくて新聞社なんだって一体何回言えば納得するんだお前ら・・・。」



うん、そうっすね。新聞社なんだから新聞買え新聞を。


かと言って買った事ないけど。そう思いながら俺は扉の奥ー先程からアイゼルと話している人物を見た。

着ているスーツはくたくたで、無精髭で金髪の男。頭にのせた帽子もスーツと同様くたくたでよれよれだ。一目でだいたいの人物像がわかる。

金髪の男は俺を見て驚いた表情をして—アイゼルと一緒だからなぁ—その後人の良い笑みを見せた。



「誰かと一緒とは珍しいな。コレが噂の弟君か?俺はここの社長のアーダベルトってんだ。宜しく。」



そう言って金髪の男—アーダベルトさんは俺の頭をわしわしなでた。・・・コレ+お子ちゃま扱いされてしまった。なんてこったい。

しかし社長か、でもこの規模の新聞社の社長だしな。それ以上はさすがに失礼かなと思ったので考えない事にする。



「まぁな。それは良いとして遺跡の情報だ。さっさと見せろ。」



いつもの命令口調で言うアイゼル。それを聞いてはいはいと奥に消えるアーダベルトさん。この様子から二人の付き合いは長そうだ。

アイゼルに知人と言える人が居たとは。以外な。聞こえたら小言じゃ済まないような事を思いながらアーダベルトさんを待つ。

しばらくして、アーダベルトさんが帰って来た。



「遅いぞ。」

「いつも通りだろ。」



俺にはそう返す根性はありません。


アーダベルトさんは手に持った資料をアイゼルに渡す。内容は・・・最近見つかった遺跡とか、発掘物についての資料だった。

軽く読んでいくアイゼル。そのスピードについていけずあたふたする俺。動体視力も、人並みなんで。

アイゼルが読み終わった後、俺に感想を求めて来た。いや、ちゃんと見えてないんでなんとも言えないっす。

「しかたあるまい」そう言ってアイゼルは懐からいくらかの金をだすとアーダベルトさんに渡した。情報料らしい。なんだかんだで路地裏に縁がある俺だがこういう場面を初めて見た。金額がはんぱないので凄く非合法な事をしている気分になる。

・・・ところで、アイゼルが俺を連れて来た理由ってコレだけだったんだろうか。

聞いてみる。



「俺が来た理由って、コレだけっすか?」

「・・・いや、一応もう一つあるが。」



他にもあったらしい。


俺にそう答えた後、アイゼルはアーダベルトさんに向かって何か言った。アーダベルトさんはまた、はいはいと言った風に奥へ消えていき、しばらくして【何か】を持って帰って来た。

アーダベルトさんの持っている【何か】は、俺も見た事があるもので——というか、日常的に良く見て使っていた物で。

アーダベルトさんが持って来た物を俺に渡した。しげしげと俺はそれを眺める。アイゼル、アーダベルトさん共に俺を見て、観察しているような。気がした。



じーっと俺はそれを見る。特徴と言えば、



それは、金属で出来ている。

電気を使って動かす物。

大きさは、両手で抱えないといけないぐらいで。



俺はおもむろに、【何か】の蓋を開けた。

ワンタッチで開く、うん、文明の利器。


ワンタッチで開いた【何か】に二人とも興味津々のようだ。じーっと見てくる。心なしか次何が起こるかわくわくしてるような・・・?


さて、そろそろコレを俺に渡して来た趣旨を聞こう。多分コレがなんなのか気になったからだと思うんだけども、何で数ある無数の電気製品の中でコレなんだ。







「この、炊飯器を、俺にこれ以上どうしろと・・・?」






なんでよりによって、炊飯器なんだろうか。

中を開けば乾いた米粒なんて物がついてて・・・臨場感?があるんだろうかコレは。



その後炊飯器についてあーだこーだと二人に聞かれまくった俺はとりあえず普通にご飯炊くもんで電気無いと使えないと答えた。

使えない、と言った時の二人の顔がなんだかそっくりで、あぁ似た者どうしなんだなと俺は思った。


店の前で、路地裏でぎゃいぎゃい騒ぎながらの質問大会は【アーダベルト新聞社】の副社長が止めにくるまで続いたのだった。




















帰り際、アーダベルトさんの一言。



「フードの人物について何かわかったら記事にしようと思ってる。」



だから買えよな!そんな風に言ったアーダベルトさんの言葉は冗談だったのかそれとも———

【アーダベルト新聞社】こっちが一応本編です。何気に冒頭はほぼ外伝のコピペ。

新聞社なんだけど、情報屋として使われる方が多いらしい。一応新聞売ってるんだけどね。

この世界の新聞は【王都新聞】が一番有名です。当たり前か。

権力に負けず真実を報道する——というかっちょ良い方針を立ててる新聞社だったり。

今後どのように関わるのでしょうかね。

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