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Lei-VERT!  作者: 弐式
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第22話 桃色空間暴走機関車「乙女」号

「眠い。寒い。」

「ずいぶんな言い草だな。」



夜——

我らがケイスケ達ボロアパートの住民はとある場所へと集合していた。

その先頭を切るのはケイスケ、アイゼル、メリカナ、桔梗丸、アリアという。いつものアイゼル宅のメンバーであった。

ケイスケがひとつ、あくびをする。相当に眠いらしい。寒さによって目は冴えるものの眠気は飛びきらないようだ。



「後少しで着くわ。もう少し頑張りなさい。」

「むぅ。」

「・・・くそう。文系舐めんなよ・・・。」



負け惜しみが聞こえる。体力が無いかわりに別の知識を得ているのだから恥じる事はないと思うが。

そうこうしているうちに目的の場所が見えて来たようだ。



「あ、ほらあそこ。着きましたよ。」



その言葉にケイスケは空を仰いでいた顔をメリカナの方へ向けた。

前方に見えるのはのれんのかかった横開きの扉。

何処か懐かしさを感じさせるその見た目。ケイスケにとっては下町を想像させるものだろうか。



「湯」と大きく書かれた看板のあるその場所は、そう——










「・・・銭湯だ。」








———銭湯、である。




















・・・あー。極楽極楽。



俺は今ひろーい風呂に入っている。右をみても左をみても男男男だらけ。まぁしょうがないよな男湯だし。というか男湯にいないと色々不味い気がする。

なんで突然銭湯かというと・・・。理由は完結。ボロアパートの水道管が破裂しました。

ボロアパートだけあって水道管もボロボロで、俺もいつかは壊れるだろうなーっと漠然と思っていたんだけども。まさか本当に壊れるとは。

壊れた位置が2階へ続く所だったもんで2階の住民は風呂どころか断水状態なのだが、今はそんなこと考えたくない。


・・・一番大変なのがトイレかなー・・・。まずいよなー・・・色々と。


飲み水の問題よりもトイレが気になるのは現代人の性というか。日本人故というか。

まぁそんなわけで危機感も一切無い俺は足を伸ばしての久々の銭湯に心癒しているのだった。


・・・となりの湯も気になるけど、板一枚で仕切られてるけど。それは・・・アレだ。夢の楽園というか。儚いものというか。やっちゃうと大きな何かを失うというか・・・いろんな意味で。

後ろにこいつさえ居なけりゃ青少年としての義務を全うしたんだけどなー・・・。



「なんか言ったかおっさん。」

「俺はまだおっさんっていう年じゃ無いぞ。」

「銭湯で「極楽極楽」なんていうのおっさんしかいねぇよ。」



・・・うるせぇ!言っちゃったんだからしょうがないだろ!


俺はそうオレンジ髪の弓矢少年——クラムに返す。

そう、実はこの銭湯。見た事ある顔で溢れかえっているのだ。

今体を洗ってるのは某迷惑兄弟だし、頭を洗ってるのは某保護者の医者だ。それに何故か某守護隊長殿まで居る始末。

本当になんで居るんだよ。と銭湯の入り口で出会った時に心底思った。メリカナさんも守護隊長殿——バシエルさんを見て凍り付いてたからなぁ・・・。

そのバシエルさんは今何故か風呂に入りながらアイゼルと会話しをしてて、混ざっちゃいけない、いや混ざりたくない雰囲気をかもし出している。近寄りたくない。

そうしてはぶられた俺は桔梗さんとともに湯に入りながら、背後から襲って来るシスコン臭をどうしたもんかと悩んでいるのだった。

・・・さすがに弓矢は持って来てないにしてもその殺気は止めて欲しい・・・。風呂に入っているのに寒気がするとはまるで意味が無いような。



「女湯のぞきにいったら弓矢で射るからな。」

「・・・肝に銘じておきます。」



湯煙血まみれ事件が起きてしまう。推理するほど謎ないけど。


・・・あぁ、洗い終わったマグ兄弟がアイゼルに絡みにいったよ・・・。すっげぇ嫌そうな顔だなぁ、アイゼル。そんな突然奇麗な右ストレートを決めちゃうと隣のバシエルさんが引きますよ。・・・あ、ほら引いてる。俺アイゼルの槍さばきとか全然みた事ないんだけど、槍背負ってなかったら俺モンクかと思うよ、きっと。いやぁ俺達の他に客いなくてよかった。よかった。

シェパ先生も洗い終わって桔梗さんと・・・爺臭い話をしてる。普通風呂で緑茶談義とかしないよな・・・いや風呂場に限った事でもないけど。しかも話の論点が渋みについてなのがまたなんとも言えない。若さが足りない。


・・・。アレ?この状況って。俺の話し相手って、もしかしてクラムだけ・・・。






後ろを振り向いちゃ行けない。何故かそう直感した俺はおとなしく無言で風呂を楽しむ事にしたのだった。

癒される・・・。と思う時点で俺にも若さが足りないよなー、とは思ってても言わない。




















その頃の女湯。






「・・・胸が・・・。」


「何か?」


「・・・。私も、そこまでは・・・。」






女性らしい桃色空間が広がっていた。











・・・別にそんなにいう程ではないと思うのだけど・・・。


そう思うのはあたしが基準値以上だからというのは頭にない。人の価値観は人それぞれの物差しによるものね。

たまたま銭湯で出会ったシリアを加えたあたし達3人は貸し切り状態の大きなお風呂を堪能していた。

男風呂が少々騒がしいけれど・・・。あたしには関係ないわね。あ、叫び声。


そんな事を思いながら湯につかる。風呂場では髪を湯につけるのは規則違反。なので髪を1つに結ってまとめあげている。他2名は短いのでそのままね。


さて、せっかくこの2人が居るのだから聞きたいと思っていた事を聞こうかしら。

・・・え?何を聞くのか、ですって?・・・アイゼルさんをどう思っているのか、に決まってるでしょうに。

この2人は少ないアイゼルさんの友好関係の中で唯一の女性。どう思っているのか聞いても良いと思うの。いいえ聞くべきだと思うの。


と、いうわけで聞いてみる。



「2人に質問があるわ。」

「?なんでしょうか。」

「なんですか?お答え出来る事ならなんでも答えますよ?」



上から順に、あたし、メリカナ、シリアの順。敬語喋りが似ているけれど受け答えは違うのね。

メリカナは、いつも通りに。シリアはとても優しい口調で受け答えしてくれたわ。

共通なのは2人とも何故突然あたしがそう言ったのかわからない、という顔をしている事かしら。


人間観察、と言う名の趣味はひとまず置いて。あたしは聞きたかった事を質問するの。

聞きたい事は、ただ一つ。そう——












「アイゼルさんを、どう思ってるのかしら?」










・・・・・・・・・・・・・・・・。












・・・・・・・・・・・・・・・・。











ぶっっさぁああああ!!!!!!!!













・・・・・どうして、急に吹いたりしたのかしら。


突然、何か大変不味い事を聞いたような顔をして静まりかえったかと思えば。

メリカナはしばらくしてから突然吹き出して、シリアはぴたっと凍り付いてしまったように動かなくなってしまった。


・・・?一体どうしたと言うのかしら。


首をひねるあたし。他の皆さんから見ればその理由は一目瞭然、らしいのだけれど、あたしの頭ではその理由が出てこないのは愛ゆえ、なんて言葉で括っていいのかしら。

吹き出してから動きのなかったメリカナが突然正気を取り戻したかのようにハッとした顔をこちらに向け、おそるそそるというようにあたしに質問をしてきたの。



「・・・それは、どういう意味での質問ですか?」



思わず黙ってしまうあたし。・・・一瞬、質問の意味がわからなかったのだけれど。言葉のままの質問なのかしら。

何故答えを返す前にそんな確認するような質問をするのかしら。それほどあたしは不味い質問を振ったのかしら。




知らぬが仏、なんて言葉が有るように。自分の頭では常識な事も他人の頭では違うもので。




あたしの【常識】による質問から、彼女の【常識】で返された質問に、あたしは自分の【常識】に当てはめて返すのだった。





どういう意味って、一つしか無いでしょう?








「それは勿論」



















「恋人として、よ?」




ぶっさあああああああ!!!!!!!


















・・・?また吹き出したわ、しかも2人とも。

あたし何か本当に不味い発言でもしたのかしら。・・・いいえ、あたしの発言に問題点は見つからないし。

・・・そう、そうなの。納得したわ、二人ともこう見えてうぶなのね。突然恋人なんて話を振ったから恥ずかしくて何も言えなくなった。そうに違いないわ。

だとしたらきっとこの2人は敵にはならないわ。だってあたしは行動力あるもの。それに恥ずかしさなんていつぞやの告白の時に色々置いて来たもの。





・・・あの時、彼の瞳にようやっと初めてあたしが映ったようだけど。そう、そうなのね。






まだまだあたしにも機会が有るという事。











やってみせるわ。だってあたしはあの時、そう決めたんだから。


初めて出会った、あの時に————





















人の物差しは人それぞれ、考えや思いも人固有のモノで、正解と信じるモノも人それぞれで。

なんて考えの無い暴走機関車「乙女」は幸せそうな顔をしながら周囲の人々を放置でどんどん暴走していく。

新たな決意を心にする彼女に周囲の空気を読むなんという高等技術が出来るわけが無い。


凍り付いたその場が動き出すのは、現代風に言うともう数十分後の事で。



まさかそんな事になっているとは知りもしないすっかり湯冷めした男共が、のぼせ上がるまで湯につかってしまった女共と合流するのは、もう少し後の話。

食らえ!これが俺の桃色空間、暴走機関車「乙女」だッ!!!!!


>な、なんだってー!!!


・・・こういう気分です。実にカオス。 何 故 こ う な っ た 。

いや、アリア視点にするとこうなるだろう予感はしていたんですが。予想より更に悪化したような。ぶっちゃけ作者もこんな桃色空間で1話書く根性は有りませんでした。

眠いと良くわからん作品に仕上がるね。まったく。

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