表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lei-VERT!  作者: 弐式
30/47

第20話 陰険と力技のお仕事

ここは、王都の外れにある小さなアパート。


今日も、このアパートに健やかな朝が来ました。


少し古びたそのアパートの窓からは、ここの住民の様子が見て取れます。


洗濯物を干すもの。朝の優雅なティータイムを楽しむもの。朝から大家さんに怒られて売るもの等、皆さん様々な朝を迎えているようです。


少し前まで人の少なかったこのアパートも、今ではなんだか賑やかになってきました。





・・・おやおや?だれか外に居るようです。





健やかで平和な朝を迎えるこのオンボロアパートの前に、とある二人組があらわれました。


凸凹コンビの二人はなにやら手に赤い封筒を持っています。


アパートの入り口まで来たその二人組は迷う事無く、とある2階の住民の郵便入れにその手紙をぶっこみました。







「ふふふ・・・。アイゼル。今日でお前の傭兵生活は幕を閉じる・・・。」

「このお手製お手紙『くっついちゃうぞ君』は開けばたちまち手に瞬間接着するのだ。手に赤い手紙なんぞくっ付ければ傭兵の仕事等出来まいぜ。ふはははははは・・・!!」







実に楽しそうなその二人組はその場で高笑いを始めました。


よほどこの作戦に自身があるようですね。でも、あんまり大きな声をだすと見つかりますよ。






あ、ほら。楽しそうな二人組に、一つの影が重なりました。











「・・・貴様等。良い、度 胸 だ な ・ ・ ・ ・ ? 」








二人組に差す朝日と言う名の栄光の輝きに影を作ったその人物は二人組の胸ぐらをひっつかむと遠心力を使って二人組をどこか遠くの空に向かって投げ飛ばしてしまいました。


二人組は空気抵抗で勢いを殺す事無く、真っ直ぐに飛んでいきます。


・・・そろそろ重力に引かれて地面に落ちそうですね。










さて、本日はこの二人組——マグ兄弟の兄マグ=メークと弟マグ=キークに焦点を当てたいと思います。

彼等は本日、いったい、どのような物語を作るのでしょうか———




















どすん!




「へぶ!!」「うべぇ!!!」




スタッっと華麗に着地・・・は出来なかったがまぁ良い。

俺ことマグ兄弟が兄、マグ=メークはただいま絶賛犬神家中である。

どうやら今回はどっかのゴミ溜めにでも落っこちたらしいぜ。しかも思ったより良い勢いで投げ飛ばされたせいか抜けねぇ。うへー。

頭はしっかりゴミ溜めの中に埋まってるもんだから鼻からも口からもすんげぇ匂いが体内に入って来る。早く抜け出さないと窒息しそうだ。アイゼルのやろー、絶対仕返ししてやるぜ。今度生ゴミ詰めた赤い包みを送ってやろう。



「・・・いたたた。」



お、どうやら俺の自慢の弟マグ=キークが気付いたようだ。俺からは様子が見えないが声をだした所から俺みたいに埋まってる事は無いらしい。

弟に気付いてもらえるように唯一自由に動かせる足を動かせるだけじたばたさせる。謎の推力でどんどんゴミ溜めに埋まってるような気もするが、んまぁ気のせいなんだぜ。



「・・・?兄貴。また犬神家になってんの?」



そうだぜー。弟よ、助けてくれー。


心の中でそう訴えると弟は術を唱え始めた。どうやら俺の埋もれてる辺りを風かなにかで吹っ飛ばすつもりらしい。

あ、ちなみに俺は術を使えない。俺は力技でどうにかする奴だからなー。細々したのは好きじゃねぇ、術が扱える弟は俺自慢の弟ってわけだ。



「【kn】《ノット》」



弟が呪文を唱えると同時に俺ごとゴミ溜めが吹っ飛ぶ。

空中に舞う俺は重力に引かれて、またゴミ溜めに突き刺さる前に空中で回転。その後、今度こそかっこよくゴミ溜めに着地した。


・・・と、着地したと同時にさっき吹っ飛んだゴミが俺の頭上からふってきて前につんのめった。



「あいだだだだだ!」

「あ、大丈夫?」



弟の淡白で心配そうな声が聞こえる。


だ、大丈夫だぜー・・・。


ゴミは粗大ゴミ系も入っていて結構痛い。



「・・・いっつー・・・。ええい!これも全部アイゼルのせいだ!そうだな、キーク!」

「まぁその方が僕としては楽だし、そう言う事にしとくよ兄貴。」



ここに吹っ飛ばしたアイゼルが悪い!


いくらか開き直りにも聞こえるような事を思いながら、俺は周りを見渡した。

左右はまぁ、ゴミ、ゴミ、ゴミ。

空には天高くで太陽が輝いていた。真上じゃないにしろもう朝って時間じゃねぇなぁ。

とりあえず俺はさっき考えてた事を弟に話す。



「なぁ、次はアイゼルの家に生ゴミを詰めた赤い小包お送ろうと思うんだけどさ・・・。」

「あー。それだと匂いでバレるから消臭用に炭でも入れようよ。どうせなら炭に火をつけよう。保温効果で生ゴミもいい具合に腐ると思うよ。」



俺の提案にそっこうで追加案を加えてきた。そうか、そうすればさらに迷惑度倍増なのか。

さっすが弟。俺に思いつかない事をやってのける。そこしびれる、あこ・・





「・・・あこがれないっすよ、メークさん・・・。」






がれる。と続くはずだった言葉を遮りった人物を俺は見る。

と、同時に無意識に腰の武器にかけていた手を楽にしその人物を迎え入れる。





「・・・よぉ、ケイスケ買いもん帰りか?」

「本当だ。こき使われて大変だね。」

「・・・まぁ、俺は金稼げないんで・・・。」





黒髪に黒目、最近この王都にやってきたアイゼルの弟、ヤマウチケイスケだ。どことなく気落ちして見えるのは居候で金を稼いでないからと自分で言ったからだろう。

男——ケイスケはアイゼルの弟とは思えんほど出来た奴で俺と同じく甘味に目がない。どうやら市場帰りらしい。大きな麻袋を持ってるな。


・・・ん?人数が足りねぇな。それに何かおかしいような・・・。



「桔梗はどうしたんだ?見えねぇぜ。」

「それになんでこんな所に?大通りから離れてるよ。」

「あー。ソレは・・・。」



言いたい事の後半は弟が代弁した。俺と同じ事を思ってたらしいな。

その言葉を聞き、ケイスケが言いにくそうに頭をかく。

困ったような。恥ずかしいような。そんな様子で答えを考えあぐねているようだ。

・・・思い当たるふしがあるので言ってみる。













「・・・また、迷子なんか?」





「ドッキ————んっ!!!」












・・・どうやらやはり、迷子らしい。




















「へー。また坂を転がり落ちた野菜を追いかけて迷子になったんか。」

「そうっすよ!またっすよ!」

「注意力散漫だね。」

「俺だって注意してたよ!でもアレだ。人生には避けて通れない事が沢山あるんだよ!!」



投げやりに叫ぶな落ち着け、んまぁその内良い事あるだろうからよ!


俺達兄弟はケイスケを連れ、裏通りから表通りへと足を進めていた。

俺達の言葉に必死に良いわけをするケイスケ。あぁわかったわかった。でもそんな避けれない人生嫌だぜ、俺は。

ケイスケはまた前回同様、物語のような大ボケをかましてこの裏通りまで来たそうだ。前回、裏通りに来てしまった話を俺は聞いたが。それから数日しかたっていない。桔梗みたいなお守りがついてるのも納得出来るってもんだぜ。

この平和丸出しの坊ちゃんには桔梗がお守りにつく、くらいが丁度良いだろうよ。


俺が初めてケイスケに出会ったのは俺がアイゼルに決闘状を送りつけて、なかなか来ないんで家に見に行った時の事だった。

突然現れた謎の二人組を丁寧に招き入れるケイスケに俺とキークも驚いたもんだ。アイゼルの弟という事にさらに驚いたが。

最初、アイゼルの弟だという話を信じる気は全然無かった。ただ、面白い事にはなりそうだと話半分程度に聞いていた。

が、話てるうちにその辺りはどうでも良くなってきて。アイゼルの弟と名乗る不審者として付き合うよりも、茶飲み友達ぐらいの付き合いが良いと俺は率直に思った。

あんまりにも世間を知らねぇんで不信に思う事もある。が、まぁ、今は友人だ。細かいことにはつっこまねぇことにしている。他人の事情なんぞに首をつっこむほど、俺もお人好しじゃぁねぇしな。



「お、そうだケイスケ。例の甘味屋に新しい商品が入ったらしいぜ。」

「本当っすか!?よーっし、さっそくその甘味屋に———の前に桔梗さん探さないと!」

「あ、前は日暮れまで探してたんだっけ?頑張るよね。」



ころころ変わる表情、本当に面白い奴だ。

俺の会う奴は皆何処か腹に一つ何かを抱えた奴ばかりだったが・・・。こいつにはソレが無い。

アイゼルと同郷で兄弟。さらに東の国出身とくれば何かあると思うんだがな。ソレがなくともこの世の中だぜ?

だがこいつは普通に笑うし普通に怒るし普通に焦るし普通に困る。純粋に。今じゃガキさえも出来ないような事をこいつはする。

だから俺も、あのアイゼルでさえも、こいつに悪い感情を持たないんだろうぜ。


にしても桔梗か・・・。んまぁ、こんだけ大声で話してりゃ向こうも気付くだろうよ。








3つの足音は消える事無く真っ直ぐに表通りへ向けて止まる事無くなり続けている。

少し時がたつと、その足音がもう一つ増えた。

じっと耳を澄ませても聞こえるか聞こえないかの足音だったが、確実に一つ増えている。








今日も外、唯一の4人席を占拠する事になりそうだ。








軽やかな足取りで行きつけの甘味屋を目指す。

さて、今日はどうやってケイスケに俺達の手伝いをするように勧誘するかだ。

少し早足になる。そうだ、手始めにアレを渡そう。んでアイゼルに手渡すように言って押し付けるんだ。ケイスケはお人好しだから絶対受け取るぜ。間違いなくな!

きっとケイスケはあたふたするに違いない「うけとれねぇっす!」とか言って叫んで甘味屋から追い出されるんだぜ。きっと。


・・・考えだしたら止まらない。本当にこいつ等が兄弟かどうなのかは知らねぇが、とりあえずコレだけは自身を持って言える。









こいつ等は似たもの同士で、両方ともからかうと面白い!








今日が終わりに近づく頃、俺は日記にそう記したのだった。





















「・・・コレ。どうしよう。」



受け取ってしまった赤い手紙にケイスケが右往左往した後、自分の部屋の引き出しの肥やしになるのはもう少し陽が傾いてからの事であった。

以上。お仕事シリーズのマグ兄弟のお話。難産+個人的にオチが微妙。

【kn】《ノット》は早さの単位。1海里毎の単位というチャレンジャーで使い道の少ない単位。(1ノット=時速1海里(1852m)の意・・・のハズ)


兄メークのキャラが固まりきってなかったため今までのと少し性格が変わってしまったような気もするような。

とりあえず人をからかって相手の反応を見るのが好きな人。性格悪そうですが本当に嫌な事はしません。アイゼル以外には。奴は無意識に不快感を振りまく人種なので。遠慮は無し。

〜だぜ!口調でのモノローグ?は実に難しいものがあります。


そして何気に10話ごとにマグ兄弟の話になってしまった。なんてこったい。

後自分でもどっちがメークでどっちがキークかごっちゃになる。作者なのに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ