プロローグ1:自称世界の中心な男と自称立派な騎士な女の話:出会い
本日は急ぎの用で城を出ていた。
王より言伝を頼まれたのは昨日の事だ。
期限は一週間、私はそれまでに言伝を伝え城に帰らねばならない。
私は馬を走らせその日の夜遅くにこの町へとたどり着いた。
今日は宿に泊まり体を休め明日に備えよう。
そんな時だ
私が、あの者と出会ったのは
・・・今日はなんて厄日なんだ・・。
私ことメリカナ=エジット22歳は今とある町の宿屋に居る。
本日、王よりわずか一週間でとある人物の元へ言伝を伝えよという命を受けた。
そのような仕事騎士である私がする必要性は全くの皆無なのだがそれにもまして期限の短さに驚きを通り過ぎあきれ果てる。
なんだ、一週間て。
その人物の住む町へは確かに一週間で往復できる。
出来るがそれは道中一度も邪魔されなければの話であろう。
今のこの世の中で道中一度も邪魔されずにその町へたどり着き城へ帰れると思うのか。
しかもその人物はよく行方をくらます事で有名ではなかったか。
しかもそれを一人でこなせというのか。
・・・わずかながらの旅費を頂けたのは有り難いが心もとなさ過ぎる。
そして・・・今のこの状況か・・・。
「おい、どうしたんだよガキ」
「怖くなってお母ちゃんの元に返りたくなったか?」
今、彼女は絡まれていた。
とびっきり、漫画とかに出てきそうなゴロツキに。
さすがにモヒカンで「ヒャッハー!」とかは言いそうにないが別にバイクに乗っていても違和感は無い。
まぁこの世界にバイクないけどね。
しかし前方に立たれるとその奥のカウンターまで行きチェックインする事が出来ない、非常に邪魔だ。
「私は今日は早く寝たいのです。そこをどいてください。」
まずは、穏便に行ってみる。
「何ぃ?聞こえんなぁ。」
「そんな事より、俺達金に困ってんだよねー。」
うざい。
次は、少し強めに行ってみよう。
「私は今日の予定を一分たりとも変えたくない、そこをどけ。」
「あんー?なんか誤解してないー?」
「ボクちゃんにぃー、けっていけんなんかないのぉー。」
うぜぇ。
死ね。一瞬騎士らしくない言葉が脳裏に過ったが彼女は知らないフリをした。
彼女は気は短くないが長くもない。
正直、今日は心が疲れている。要するにイライラしている。
これ以上の問答は不要と懐のコショウ玉を取り出そうとする彼女。そんなんだからそんな厄介な仕事押し付けられたんじゃないのか。
彼女がそれを投げつけようとした、その瞬間。
「不愉快な押し問答だ」
そう発言した男はその宿屋のカウンターに居た。
カウンター内の宿屋の主人が心配そう私をみている。
「あん?何のようだよ兄ちゃんよぉ?」
そう発言するゴロツキ共、私はコショウ玉を懐にしまい成り行きを見守る事にした。
「なんだ?このガキの保護者か?兄ちゃんが俺達に金払ってくれんのか?」
「それともなにか?正義のヒーローのつもりか?」
そういわれたその男は、ものすごく嫌そうな、不愉快そうな顔をした。
「・・・何故、私がそのような理由でその者を助けねばならんのだ、貴様阿呆だな。」
「あ、阿呆!?」
そう言い、その男はゴロツキ共の前まで歩いてきた。
右手に、握りこぶし一つ。
「貴様が阿呆以外の何者であると言うのだ。世界の中心であるこの私が何故そんなちんちくりんな女子を助けるような事をせねばならなんのだ。この阿呆、間抜け、大惚けが。・・・まぁ、」
男が、拳を振り上げた。
「・・・金さえ貰えば、話は別である!」
・・・そう言って男は左手で握りこぶしを造りゴロツキ共に向かって打ち出した。
右手の握りこぶしからは宿屋の主人が握らせたのであろう金貨が見える。
そう、これが私とこの男アイゼルこと「自称世界の中心」との出会いであった・・・。