第6話 異邦人の生活2
「・・・以上で報告を終わります。」
「・・・今確認されたそうです、お手柄でした。その遺跡には直ぐに調査隊を送りましょう。」
王に報告が終わった私は今城の出口へと向かって歩いている。
元々、私は一週間程外に出る予定だったので後3日程予定が無いのだ。
それに新しい遺跡を見つける事はこの世界では一階級上へ上がる程の事なのだ。嬉しい反面周りからの視線が気になって仕事どころではない。
だいたい先程も本来ならもっと早く終わるはずの報告が確認させるとかで夕方まで掛かってしまったのだ。
早く城をでなければ、そして————
・・・そして明日にはアイゼルの家に向かわなければならないんだよな・・・と思い、憂鬱な気分になった。
「ただいま、私の家よ。」
私が自分の家についたのは空が完全に暗くなる頃だった。
私は騎士だが女、と言う事で騎士専用の住居に部屋を与えられていない。
女ということで男だらけの宿舎では気が休まらないだろうというありがた〜い処置なのだが私には嫌がらせにしか思えない。
騎士の給料はそんなに多くなくそれよりも騎士の魅力は権力にある。
騎士であるだけで街では大抵のお願いは通ってしまうのだ。一つに、騎士なら食事代が安くなる、等。
その権力に引き換えた安月給で良い家が手に入るわけも無く。私は今アパート暮らしなのであった。
「今日の日記は書く事が多過ぎるな・・・。」
夕食を終わらせ日々の日課である日記に取りかかる。
騎士として自身の生活を細かく管理するべきである。といったのは前の上司だったか。
騎士で先輩でありながらもなかなかに彼の好感度は高かった。権力に恥じない騎士だったはずだ。
まぁ騎士に幻想を抱き過ぎたとこは否めない彼だったが私に様々な事を教えてくれた物だ。その一つがこの日記である。
さて、おそらく私が今まで書いて来た日記の中で一番長く濃い無いようになるであろう日記の一番目に書く事は決まっている。
「旅先で変人に会った。協力関係になった。実に不愉快だ。非常に不愉快だ。」
これで良し。一行目は大切なのだ。思いっきり不愉快であったことを訴える文章が良い。
そのまま筆は進む。流石にケイスケの詳細は書けないがとりあえず出会いを記しておく、その分アイゼルに関する項目が増えてしまった。本当に不愉快だ。
とりあえず使えない男では無いとだけ書いておこう。後以外と使いやすい事も。
そこまで書いて一旦筆を置き、テーブルに置いてあった紅茶に口をつける。久々に飲んだが結構美味い物だ。
しかしケイスケはあの男と一緒にして大丈夫だろうか。とりあえずアイゼルも裏切る事は無いだろう。
私のような騎士ならば王に謁見する事も可能だが傭兵はむしろ毛嫌いされる方だ。きっと彼が訴えても事実として受け入れられないだろう。
そう言う意味では今彼と契約をしている自分はずいぶんと物好きと言う事になる。そういえばどこまであの契約は有効なのだろう。明日問いただしてみよう。
コンコン
明日の予定に思考を巡らせている時、ノックが聞こえた。
誰であろうか。ゆっくりと歩いて行きドアの前で立ち止まる。
右手には剣、左手にはコショウ玉を持つ。用心が過ぎるって?これが嫌がらせを受け続けた者の当然の配慮だ。
この扉はうち開きだ、そっと覗き穴から扉の前の人物を確認した。
確認後、扉を開けた。
何か嫌な予感がするが彼相手ならば開けるほかならないからである。
そして、彼は講こう発言した。
「えーっと。夜分遅くすみません今日から隣に住む事になった山内と申します・・・。って、メリカナさん!?」
ヤマウチ殿が隣の部屋=今アイゼルの家に厄介になっているはず=アイゼルの家は隣。
あぁ、日記に書く事が一つ増えたな・・・。
そんな事を思う私にかまう事無く、私のストレスの原因は着実に増えていくのだった。
音成産。何故か自分のPCでお隣さんを変換するとこうなります。不思議。
さて、彼等は実はお隣さんでした。
気付かなかったのはメリカナが騎士で城にいる時間が長い事。アイゼルが傭兵でよく別の街にいる事が原因ですね。
まぁメリカナにとっては知りたくなかったのではないでしょうか。
ちなみにお隣としったアイゼルによって朝ご飯と晩ご飯はメリカナが作る事になります。かわいそうに。