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東の谷の王子様

作者: 安身 侑

むかしむかしのことです。東の谷にそびえたつ古塔に、一人の王子様が、花嫁を探していました。王子様はとても賢く、魔法の杖をかざし、たくさんの呪文を唱えることができました。そして、王子様は東の谷の王様になることを夢見ていました。そのため、すばらしい姫を妻に迎え、東の谷の王様と王妃様になろうと考えたのでした。


王子様は、すばらしい姫を妻に迎えるため、西の森と、南の岬と、北の湖におふれを出しました。

「東の谷をりっぱに統治できるであろう、素晴らしい王妃を探しています。東の谷の王子が決して探し当てられないところに隠れてお住まいになるお姫様を王妃として迎えましょう。」


これを聞いて、まず西の森のお姫様が、世界樹の太いうろの中に隠れました。「わたしはとても寛大で、優しさに満ちているから、きっと王妃にぴったりだわ」

ですが、王子様は魔法の杖で木々とおしゃべりができるので、あっという間に姫を見つけてしまいました。「なんて優しげな瞳と、おおらかな微笑みをお持ちなのでしょう!ですが、僕が見つけてしまったからには、王妃にすることはできません」と王子様が言うと、西のお姫様は「とても残念だわ。あなた様の花嫁さがしがうまく行きますように」と魔法の花冠を王子に贈りました。


次に、南の岬のお姫様が、"嵐灯台"のてっぺんに隠れていました。「ここは雷雲に閉ざされているから、決して王子も辿り着けないだろう。雷鳴が鳴り響いているけれど、勇敢なわたしはちっとも怖くない。わたしが王妃になったあかつきには、すばらしい軍の指揮をとってみせる」

ですが、王子様は魔法の花冠でどんな天気も晴れにしてしまったので、あっという間に姫を見つけてしまいました。「なんて勇敢な額と、力強いまなざしをお持ちでしょう!ですが、僕が見つけてしまったからには、王妃にすることはできません」と王子様が言うと、南のお姫様は「とても悔しいが、結果がすべてだ。貴殿の花嫁探しが成功することを祈ろう」と魔法の貝がらを王子様に贈りました。


さて、北の湖のお姫様はたいへんな変わり者で、王子様が出したおふれの噂は知っていましたが、薬作りに夢中で気にも留めていませんでした。「魔法のウロコと魔法のキノコを煮込んだ薬がやっと出来上がったわ!早速飲んでみよう!」とお姫様が飲み干すと、なんとお姫様は男になってしまいました。


ですから、王子様は男をお姫様と気づくことができませんでした。王子様が「僕が見つけられない人がこの世にいるなんて!ああ、北の湖の姫こそ我が王妃にふさわしい!」と言うと、魔法の貝がらが「いいえ王子様。北の湖のお姫様こそ、東の谷の王様にふさわしい」と答えました。

王子様が驚いていると、魔法の貝がらは「魔法のウロコと魔法のキノコを煮詰めて召し上がってください。わたくしめの言葉の意味がわかるでしょう」と言いました。王子様は頷いて、早速準備に取り掛かります。すると、薬に詳しい男がそれを手伝ってくれました。王子様は、流行病の多い東の谷にも、このような薬師がいれば心強いのに、と思いました。


薬ができあがり、王子様は男に礼を言うと、薬を飲み干しました。すると、王子様は乙女に姿を変えました。王子様は賢いので、すぐに魔法の貝がらの言葉の意味がわかりました。そして、薬に詳しい男に跪きます。乙女になった王子様は「どうか北の湖のお姫様、僕の妻になってください」と言いました。

男になっ前北の湖のお姫様は驚きましたが、乙女の姿の王子様があまりに美しいので、結婚を受け入れ、二人は東の谷の王様と王妃になりました。



おわり

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