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進呈

今日は服飾店へ行ってきた。

繊細で日常使い出来そうもない服を君は好まないから、

よく俺が選んでプレゼントしていた服を絵にして作らせている。


君に似合う服を。

今回はワンピースで、同じ型で色違いを3種ほど受け取り、ウォークインクローゼットへ収納した。

君への服は本当に沢山贈った。


まず選ぶのが楽しかった。

君が着てくれるのを想像するのも心が躍った。

君はプレゼントするとありがとうと言って、俺にキスをくれた。


君からのキスは本当に貴重で、何回も何回でも欲しかった。

ただそれが欲しくて俺は沢山のプレゼントを贈った。


会う度にプレゼントを渡した。

君は徐々に「また買ったの?」と言うようになった。

気持ちはとても嬉しいけど、俺の生活を豊かにして欲しいとも言っていた。

もちろん感謝とスキンシップはくれて満たされた。


俺の…俺と君の家にいる時は、

俺が選んだ服を着て、アクセサリーも身に着けて欲しかった。

君はあまり服装に拘りがなくて、俺の贈ったモノで過ごしてくれた。

丈や袖の長さは多少括りがあったかもしれないけど、外に出ないなら家の中なら可を出してくれたよね。


俺と色違いの服や、ペアのアクセサリー。

綺麗で美しいモノがあると君に相応しいと感じていつの間にか購入している。


高価すぎるときっと君は受け取ってくれないかもしれない。

少しずつ君を慣らして、感覚を曖昧にしていったら、誤差と思ってくれるかな?


半年したくらいから君はプレゼントを受け取る度笑顔が変わった気がした。

いや前から徐々に言われていたけど。

1年と少し経ってから経済状況について話し合うことになった。


「貴方の収入がどの程度かはわからないし聞かないけど、この金額はやりすぎだと思う。

 私に経済状況に口を出されるなんて聞きたくないよね。解ってるけど話し合いたい。

 私は貴方から貰ったその分同等に返したいけど、同じ量は返すことが難しいから辛いし苦しい」


その後君はこんなことも言っていた。

世間一般の常識的な割合での対応なら問題ないし、

貴方が商品を購入することによってストレスを解消しているならかまわないわ。

まず貴方の生活を豊かにするのを第一に考えて。

こんなこと言わなくても大丈夫だと思うけど、生活防衛費はちゃんとあるよね?

カードはリボ払いにはなってないよね?



君は俺の生活を心配してくれて、言い辛いことを言ってくれた。

きっともっと早くからこの話をしたかったのかもしれないけど、迷っていたのかな?

君に聞かれた回答に視線を逸らしたら……。


「借金をしていないならまだ大丈夫。

 貴方の年齢なら焦ることもないし、立て直しは可能。

 今年はもしくは今までは、好きにお金を使ったらどうなるかを学ぶ時間だと思えばいい」

と言ってくれた。


今後のことを考えて今とは全く違うお金の使い方を急にしようと思っても、

きっと貴方には苦痛だろうし、続かないと思う。

我慢すれば出来るかもしれないけど、

多少でも貴方は購入によってストレス解消しているところがあると思うから。


無理をしてもいいことはない。

反動で結局元に戻っても困るのは未来の貴方。

少しずつ適正な状況にするのが理想。

貴方にあった生活環境を試行錯誤しながら考えていけばいいと思う。


大雑把にでいいから、固定費6~7割でその他が3~4割になっていればいいの。

1円単位で計算するのはやる気でないでしょ?


それと私へのプレゼントはもうなくていい。

数年分以上は貰ってる気がするから。

プレゼント代を生活防衛費に充てたらあっという間に考えた生活が出来るんじゃない?


でもきっと急には止められないよね?

貴方はイベント事が好きだし、

通常プレゼントを贈ってもおかしくないのは誕生日とクリスマスと記念日くらい?

抑えられるならそのタイミング以外は自己投資に使って。


でもこれは私の考えであって、貴方に強制したい訳じゃない。

ただ会う度に貴方からプレゼントを貰うのが苦しいの。

この家に来て会う度、貴方へ返せないものが増えていく気がして本当に辛い。


世間一般以上に稼いでいて、経済的に問題がないなら良くはないけど全然いい。

今月のプレゼント代も大台に乗ってると私は感じるけど、貴方から見たらどうってことない金額なのかもしれない。

それならさっきの話は聞き流していいわ。

ただあなたの生活が心配で、この家の私の部屋にだけモノが増えている気がするから、お願いだから貴方のために使って欲しい。



君は君の希望を伝えてくれた。

一気に現実感が出たけど、君の考えは伝わった。

経済状況についてあまり考えてなかった。


ただ君に喜んで欲しくて、君からのスキンシップが欲しかった。

そのことについても白状することになって、君はちょっと呆れていた。

「そんな単価の高いスキンシップだったとは」って。

言ってくれればプレゼントなんてなくてもしたのにって。


貴方と出来る限りの時間の中で話しているはずなのに、

コミュニケーションがまだ足りてなかったのね。

素直にいつもあなたが伝えてくれていたから、私はそれ以上の意を汲もうとしなかったみたい。

もっと深く貴方を理解して考えて対応していたらこんなことにはならなかったのかも?


俺のせいなのに、なぜか君が反省していて、

今度からはもっと必要なことは話し合おうねと言ってくれた。


プレゼントを贈ることで君を苦しめていたとは思わなかった。

同等の金銭やモノが欲しい訳じゃないから、君が気にすることは何一つないし、

君からのスキンシップをもらっているからもう俺としては十分。

逆に君からプレゼントを贈られたら、プレゼント交換がループする。


俺も本当に欲しいものを恥ずかしかったのか、伝えられなくて、君が辛いことにも気付けなかった。

君は言わなくても読んでくれるときもあるし、

プレゼントを渡せば貰えるからわざわざ言葉にして伝えられてなかったんだ。


今までのプレゼントは俺も対価をもらっているから気にしないでほしいけど、

そういっても君はきっと気にするだろうから、その分沢山スキンシップをしてほしいと今度はちゃんと言葉にしてみた。


君は「本当にそれでいいの?」ってきいて、「出来る限り沢山するね」って可愛かった。

たまには俺も君のことわかるんだよ。

期限を決めないと俺ばっかり嬉しいことになるから、3か月間にしてみた。

ちょうど記念日がその付近にあったからそれまでってことに。

たまにしか会えない君との時間がいつも以上に充実したのは言うまでもない。



こんな若かりし頃を思い出したのは、今の経済状況を顧みろってことだろうか?


家を建て、君の部屋を再現して作ったり、君の為に出来ることを考える日々。

君とファンタジー世界を楽しむために剣も魔法も嗜む程度には鍛えた。


今の経済状況はそこそこかな。

下層の宝箱の品は結構時価が多くて、高価なものも出やすい。

前の世界の時の年齢より稼げているかもしれない。

ただ流通が微妙なこの世界で物価も全く違うから比べるのも微妙かな。

衛生観念はお察しのところも多いし、人件費も安いと思う。 


そう思うと今の倍くらい稼がないとまずいのかもしれない。

この仕事もいつまでも続けられるわけじゃない。

君のそばに行けるならいつだって今すぐ逝きたいけど。


もし君がきたらってことを考えると。

もう少し動けるうちに動いて貯めれるだけ貯めておかないと拙い?


結局君へのプレゼントはゆっくりとなくなっていかなかった。

経済状況がよくなっていったからってのもあるし、

君へ贈るのが俺にとってストレス解消の一部みたいで、止められなかった。

ただ頻度は減って価値が上がったから、結局俺の思惑通りになった。


君は複雑な表情をしていたけど、言葉にして正直に伝えたら受け入れてくれた。

その分君からのスキンシップが積極的になって会う度気分が揚った。


多分ここで君に強制しているって気付けない俺が駄目だったのか?

嬉しくて舞い上がって仕事もプライベートも日々充実していると感じていたけど、

俺が正直に伝えたら君が拒否できないことを無意識に理解して君を誘導したんだろうか?


許容範囲外なら君は俺を受け入れるしか、飲み込むしかないってことに。

俺が理解してそうならないようにしないと君はもしかして辛かったんだろうか?


そんな感情にも理解できる相手がよくて今あいつといる?


今すぐあいつを炎で焼き尽くしたい。


君の隣から永遠に排除したいよ。


◆◆◆


今日の君はあの子についての話をしている時だった。

俺は君の声を聴いて気分が良かったけど、俺について話している君のがもっと好きだと思っていた。

案の定君は俺の心を読んでいて、話聴いてるけど聞いてないよね?って。

どんなことを考えていたか図星を指されて、目をそらしてた。


休息日は月一くらいで神殿に寄付をしている。

世界の成り立ちのような説法?らしき、有り難いお話を時折流し聴きしたりもする。

君のことを考えていればあっという間に時間など通り過ぎていくから。


神殿では神ではなく精霊を奉っていて、

大地精霊は角がある人、緑化精霊は耳が長い人、海精霊は……、伊勢海老のような大きめのエビにしか見えない。


大地精霊は男性、緑化精霊は女性?にみえなくもないが、話を聞いた処精霊様に性別は無いとのこと。

エビについてはきくこともしなかったが。


併設している孤児院にも顔を出し生活環境の具合も確認済。

君は異世界モノを見ている時にこれで領主についても多少判断出来ると言っていた。

あとは、間に入ってる大人が善人だと限らないから、現物支給が変に心揺らさなくていいらしい。

金銭をポンと渡して噂になり、また煩わしい虫が集るのも避けたいからちょうど良かった。


シスターは良く領主について感謝を口にする。

別の領地のシスターをしていたこともあり、この領地はそこそこ恵まれているらしい。


数年続いている寄付の流れで、孤児院の子どもたちとは多少仲良くなった。

人数分、記憶を思い出してからの俺には到底美味しいとは思えないが、甘味のようなものを渡すからかもしれない。

子どもたちは嘘が無くストレートな分まだその辺の大人より付き合いやすい。


ただ子どもでも女はオンナを感じさせる言動をするので、あまり近寄らないが。

冒険者になりたい子どもよりも現実的に日々の暮らしを考えて行動している子どもがいる。

珍しい部類らしく大人しい。

静かでいいところも気に入っている。

そろそろ成人手前になるので、お試しで家の管理をまかせてみようか?


掃除も料理も出来るようだし、簡単な読み書きはシスターが教えているから見習いとして雇うのもありだ。

家の防犯対策は、以前獲得した魔道具作製アイテムで万全に整えてあるから、家の中細々としたことと買い物くらいか?

シスターに卒院時から正式予定として、見習いとして少しの間様子をみたいと話を通しておく。


ああ、今すぐ君に会いたい。

触れたい。

文字だけでもいいから、動画だけでもいいから見ていたい。


◆◆◆


はじめて家に来てくれた時から、君に良く見えるような言動ばかりしていた。

君はわかっていながらもあえて口にはせず、見守っていたなんて。


数カ月後、笑いながら家でくらいリラックスしたらいいのにって。

それが貴方の理想なの?

無理して良くみせようとしてるように感じるのは気のせい?

私が帰ってからどっと疲れない?

一緒にいるのに気疲れして欲しくないんだけどな。


気持ちは嬉しいし分かるよ。

私も多分その傾向はあるし、自覚があるところもあればまだない無意識のところもあるかもしれない。

気疲れはしてるのかな?

私の場合誰にあってもするから、慣れるまでは日常ね。


あるものをあるようにしか表現できないって理解してるはずなのに、

少しでも良く見て欲しいって思ってるみたい。

一緒かな?

同じこと思ってる?

それなら嬉しい。

自分を隠さずに向き合えるまでどれくらいかかるんだろうね。

少し出しては貴方を反応を伺っていくのかしら?



疲れは君が帰ってしまった喪失感のが大きくて感じてなかった。

家に君が来て過ごしている時がとても幸せだったからより一層。


君は俺を理解しようとしてるくれているのに、俺は何をしていたんだろう?

少しでも、君に好きになって欲しかった。

君の気持ちが欲しくて欲しくて、はやく、

1日でもはやく君が俺と同じくらい好きになってくれたらいいと思っていたんだ。


◆◆◆


写実的な絵師を探すのは面倒だったが、

その中でも君を表現するに相応しい人物はなかなかいなかった。

そこそこ可を出せる人物は居たので、君の部屋で君が寛いでいる姿を頼んだ。

ただ、君の部屋を俺以外が目に入れるなんて考えられなくて、

設計見本の縮小版を作った時のことを思い出して渡した。


別の都市や国でも君に相応しいと思える絵師を今後も探すことにしよう。


俺が君を好きになっていくペースと君のペースが違うから少しでも差が開かないようにしたかった。

でも俺は君をもっともっと求めてしまって、

君が少し追いつこうとしても、俺の気持ちが増えてしまって引き離していた。

それが不安で仕方なかったのかもしれない。


素を出して嫌われたくなかった。

君が俺を見てくれてる今が無くなってしまう。

もっと求めてほしいけど、最初から躓きたくなくて、君が逃げないように捕らえておきたかったんだ。


第一印象が良くないと、君は恐がって俺から離れていくかもしれないから。

少しでも良く見えたベースがあれば君は俺についてきっといい方向へ考えてくれる。


その先は愛して、愛して、好意を送り続けるよ。

繰り返し感情を言葉にしていれば、君は俺がもっと好きになってくれるよね?

これを日常にしたら君は俺がいないと不安になって、

俺のそばにずっといて(処に墜ちてきて)くれる?

だって俺は時々君に好意を返して貰っただけで幸せで、そして日々不安になってるから。


当時の事を考えると、君を手に入れて心も手に入れたくて離さない為に行動してたな。

これが正解なのかはわからない。

でも君は俺の傍にいてくれた。


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