郷愁
俺より俺のことを理解して、どうしたらいいのか親身に考えてくれたのは君だけだった。
俺の異変に最初から気付いてたのも君だけ。
「異変(歪み)も含めて貴方だから、怖いけどスキは変わらないよ?」って俺から離れていかなかった。
少しだけ暗く怖い感情が強く出て、君は震えていたけど。
それでも俺がいいなんて。
絶対絶対逃がさない。
その時君は言ったんだ。
「許容範囲を越えなければ、貴方を受け入れるから自分でコントロールできるようになってね。
選ぶのは貴方だから、忙しくてコントロールできるように努力する気がないならそれでもいいよ。
人を変えることは出来ないから、でも貴方に変わる気がないなら手伝わないわ。
だって私だけが無理をしても意味がないし、貴方に響かないでしょう?」
出来る限り努力したのに結果が実のらないのなら、それはそれでいいともいったかな?
いや俺がやる気になって、成果がでなくて弱気になった時にくれた言葉だったかも。
努力しないで、壊れていく俺なら限界が来たらさよならって
はっきり言葉にはしなかったけど、そういう意味だった気付かせてくれた。
君がいないなんて。
君以外俺だって理解していなかった感情をどうやって?
これから一人で対応していくなんて出来ないよ。
このままだと俺がオカシクなるから。
今どうにかすれば多分まだ余裕があるって教えてくれた。
君を怖がらせてしまった。
在り得ない現実を受け入れられなくて思考がショートした。
通常であれば出てこない言葉が口から飛び出していた。
歪んでてもオカシクても、それでもいいって。
ただこのままコントロールできないと、今後困るから出来るようになってほしい。
きっとそういうことを伝えたかったんだと思う。
ストレスに曝されてどうにもできなくなってしまったら、
いつか俺の中のその歪みのバランスが崩れることを……。
君ならその可能性が高いのがみえていたのかも?
「貴方があなたでなくなったらもう終わり」って。
そうなると君が君で居られなくなるって言われて意味が解らなかったよ。
きっとあなたはまだ理解できないでしょう?
それでいいって。
わかりたければ貴方は考えて答えを出せるもの。
そう言われてしまったら、君が離れていくなんて。
君を怖がらせた言葉にだって否定が、拒絶が含まれていたのに。
君が俺の為に言っているって理解できたら、
俺がコントロールできるように努力するってわかっていた?
反射で君を傷つけても君は許してくれた。
治るから大丈夫。
もう君を傷つけたくない気持ちと、
もっと君に跡が残ればいいって思う感情に揺れていたのにも気づかれて。
笑ってそんな俺も好きなんて君はちょっと変。
でもそんな君がたまらなく大好きです。
俺をちゃんと見てくれるって思えた。
前から分かっていたけど、もっともっとより深く。
それからもっと大切にしようと思ったんだよ。
いくら重いって言われようと。
君は、「重くてもあなたが好きだからいいんじゃない?」って軽かったけど。
「ただ世間一般の考え方は理解していてほしい。
まああんなに相反した回答を息をするように出来るのなら
貴方の考えがオカシイって無意識では気付いてるんでしょ?」って。
自覚さえすれば理解は早いと思うんだけどっていわれたけど、
コントロールは本当に難しかったよ。
君を好きになればなるほど。
欲が増えて増えて、欲しくて欲しくて、コントロールが出来ないんだ。
優しく大切にしたいのに。
なぜか君が求めてない方向へ進んでたりする。
俺の理想がまるで別方向のように。
ふと気づくと君がついて来てくれず、一人で歩いている。
戻れる時があったからよかったけど。
あのまま進んでしまったらきっと君は俺から去ったのかな?
君が去って
壊れている俺がもっともっと壊れたら
俺がどうなるっていった?
夢は実現出来るけど、それまでしか持たないって言ったかな。
だからその後したいことがあってもできるかわからないって。
でも、貴方は選り取り見取りだから可能性はあるし問題ないかも?
俺が無理に聞き出したからこんなにはっきりした回答じゃなくて、
ふわっとした答えしかくれなかったけど。
君が居ないのに俺が治る訳なんてないのに。
いつか傷は癒えるってきくけど、俺が欲しいのはいつも君だけ。
だから今君を手放したらもう戻ってこない。
必死だったよ。
ねえ、今の俺にも君が必要だよ。
どうして「 」の隣にいるの?
◆◆◆
君の隣にいて笑っているであろう「 」を殺したくて殺したくて。
その気持ちでダンジョンを彷徨っていたら、まとまった数の宝箱から高価なアイテムを手に入れられたよ。
そのうち数個を売り払って、家を建ててみた。
前の家よりは大きな家になったよ。
君と過ごした同じ家を建てようか迷ったけれど、あれはあれで思い出として取っておく。
また当初の君の部屋を作ったんだ。
部屋の規格に合わせて天蓋付きベットとドレッサーは新しくした。
この世界にモニタとPC、スピーカーはなくて配置できなかった。
部屋ががらんとしていて変に感じる。
魔道具を作ることに特化したアイテムも宝箱から獲得出来たから、試しに欲しいものを自作しようと思う。
PCやモニタっぽいものが出来ると見た目だけでも同じ部屋になるはず。
ゲームミングチェアーは家具職人が出来るみたいなので任せてみたけど、技術力的に対応できるのか不安だ。
いつでも君にこの部屋を使ってもらえるように力を入れている。
当初の部屋でも君は天蓋付きベッドに寝ることなんて数えるほどしかなかったね。
君と一緒に寝られるように俺のベッドは大きめにしてあるから。
いつだって今すぐにだって一緒に居られるから。
目が覚める少し前に些細な君の記憶を思い出していく。
起きて君のいない現実を理解するはとても辛いけど、君の記憶が戻るのはとてもうれしい。
葛藤しながら生きているんだな。
君はあの時、「今の貴方なのか別の貴方の言葉なのか時折分からなくなって苦しい」と言っていた。
俺がありもしない、冷静に考えれば理解できることで感情が上下して、
在り得ないからこそ、コントロールが効かず焦って君を傷つけた。
君は俺にだけこっそりと嬉しかったと伝えてくれた。
やっと同じになれたって。
遅いともいっていたかもしれない。
君と同じになれたのは嬉しかったけど、君が俺以外に笑いかける画なんて見たくなかった。
在りもしない現実に俺は泣いた。
その時はありもしない現実ってことに気づいてなかったから。
君はゆっくり俺の矛盾を解りやすく説明してくれた。
君に見えている世界はこんな感じなの?
一度で苦しくて悲しくて辛くて耐えられなかった俺を優しく癒してくれた。
見えるものは一貫してなくて、その時によると君は言ったし、
見たいものが見えるような万能でもないと教えてくれた。
あの時君の言葉を理解した気になっていたけど、
今思えば君は日々俺のいろんなシーンを見ていたってことだよね?
苦しいこと辛いことも嬉しいこともたくさん。
それなのに俺はより深く理解して君を癒してあげられなかったし、考えついてさえいなかった。
君に言われた言葉を思い出した。
「貴方の言動は、自己愛もあるから、私を愛してるって誤解をしないでね?」って。
その言葉に傷ついた。
俺の気持ちを受け取ってくれないの?
君が欲しくて、君は俺にすべてをくれるのに、もっともっと君を求める。
不安で寂しくて、君を何処でも見つけていたくて位置情報を分かるようにお願いした。
「アプリを追加するのはいいよ。
ただ3か月後以降に、なぜこのアプリが必要だったのか聞くから考えてね?」
って君は言ったんだ。
当時思っていたことと、後日聞かれた時の感情の差がなかったから、
俺は君に不安で寂しくて安心したいから。
君が大好きだからって答えた。
君に言われて、ゆっくりと客観的に考えてやっと自己愛だってやっと理解した。
言われるまで本当に君の為にしているって思っていたんだ。
愛しているから心配に思っていけないかなと。
やっぱり君のみえてた通り俺は最初から歪んでたみたい。
君の為にしていることが自分の為だったなんて。
「いいのよ、貴方の意思の根底がそこにあっても。
ただ理解だけはしていてほしい、それは私への愛じゃないから」って。
君の言葉によって俺は知らなかった自分を沢山知ったよ。
なかなか治せなかったけど、
君はいつだって俺が不安になって「好き?」と好意を聞いたら返してくれた。
不安でたまらない時は、
「電話してくれればいいのに、何度だって貴方が満たされるまで言うわ
会った時がいいならその時でもいいよ」って。
君と一緒に居る歳月が流れても、俺は何度も聞いた。
時々笑いながらそろそろ信じてくれてもいいのにって君は言っていたけど。
俺の質問に答えないことはなかった。
俺の家に……俺と君の家にいるのに、
1日に何度も聞いてしまう日もあったんだ。
重いし煩わしいと思っても仕方ないのに、君は毎回笑顔で、俺に言葉を返してくれる。
まだ満たされないのかーといいながら。
貴方の渇望は何処まで続く? 面白くていいよって。
俺が求めてくれる限り君は変わらないって、
かわいい笑顔でクスクス笑いながら、抱きしめてくれたりもしたね。
どうしてあの時俺を愛してくれていた君にあんなことが出来たんだろう。
なぜ俺は気付けなかった?
君の愛を信じないばかりか、君を癒すことすら、君の不安を解消する手伝いすらしていなかったなんて。
君はちゃんと俺に弱さを伝えてくれていたはずなのに。
だから俺じゃない「 」の隣にいるの?
世界がもし同じだったら俺を選んでくれたのかな?
◆◆◆
君はよく俺や周囲の状況から、「今その発言をしたら相手がどんな気持ちになるか考えてる?」と聞いた。
「周囲の感情が分かったらきっとその発言はしないと思うけど、
解っていてしている可能性もあなたなら無きにしも非ず。
好戦的な状況に持ち込みたい意思があるならやりかねないけど、今そんな気なかったよね?」って。
心の機微をもう少し理解してほしいような、でもそれが貴方だから変わらないでほしいような。
人にどう思われようと気にしないことも多い貴方に何を言って響くのかわからない。
貴方を理解してくれる人達なら、それでもいいかもしれない。
みんながみんなあなたに優しい世界じゃない状態になってしまわないように気を付けて欲しい。
傷ついてどうしたらいいか考える機会を私が奪うのもいけないけど傷ついてほしくないし、でも貴方の選択を尊重したい。
君は俺について考えてくれた。俺が考えてと言ってはいたけど自発的に。
2、3度言葉を交わしたのを見ていただけで、また俺の感情を読んだのかな。
結局君自身も何を伝えたいのかまとまっていなかったみたいだけど。
俺が傷ついて欲しくないから、発言に気を付けてってことだよね?
周囲の環境はわかってくれる優しい人ばかりだけど、
全員がいつでもいい精神状態だとは言えないから。
親しき中にも礼儀ありってことを伝えたかった?
俺以上に俺の周囲をみて、多分君は感じたんだよね。
俺に一言釘でもささないと、誰かが離れていくかもしれない?
もしくは俺をそういう者として扱うかもしれないって。
いや俺のこともそうだけど、周囲の人の心がわかったのかも。
迷惑をかけるなんて申し訳ないって感じだったのかな。
君のせいじゃないのに。
俺が子どもだから、いつの間にか君が俺のことで謝ってフォローしていたの?
言葉で会話してるのに、理解してほしいって言われたのに、
今になってやっと君の気持がわかることも多々あるんだ。
あの時ちゃんと理解していたら君はもっともっと俺だけをみて俺だけを求めてくれたのかな?
それとも途中から君も俺が君を理解しないって気づいてしまって
それでも俺を好きでいてくれただけなのかな?
◆◆◆
また目が覚めた。
この身体はしぶといらしい。まだまだ衰えを知らないみたいだ。
君は逢う度に綺麗になっていく。
俺は嬉しい気持ちと閉じ込めたい気持ちが交差してた。
家に帰って君がいたらどれ程幸せだろうか。
君を縛りたいと思ったのはいつからだろう?
君を欲した最初からかもしれない。
ゆっくりと丁寧に、そしてじわじわと
俺が居ないと君が不安になるように、できれば生きられないように仕向けたい。
でも君の笑顔が見えなくなると嫌な予感がする。
君が言う俺がオカシクなるってこういう事をさしてる?
君が俺から離れていってしまったら、俺は君をきっと閉じ込めずにはいられない。
俺から離れるなんて許せない。
こんなにも好きなのに、どうして他の誰かを見る必要があるの?
俺だけいればいいよね?
どれだけでも君を君だけをずっとずっと求めるから。
感情を言葉にするのを君は喜んでくれた。
全てを正直に話せば君はわかってくれただろうか?
少しずつ君に俺を理解してもらうために、美しい言葉でしか表現していなかったかもしれない。
でも相反する気持ちを息をするように回答したのは、
君に嫌われるよりも逃げられる気がしたからかな?
きっと俺は君に受け入れられず、知ってもらうよりも前に距離が縮まらないのを恐れたのかも?
君はゆっくりしか好意を育てていけないと言っていたし。
俺は君への好意が最初から120%の状態だった。
君は果たして45%も好意があったのだろうか不安だ。
君に好意を伝えて了承してくれた時について聞いてみた。
君は「いま答えるタイミングではないから」と言い、時をみて少しずつ教えてくれた。
最初は「貴方の笑顔がかわいかったから
それ以外にもあるけど、今言えるのはこれだけ。」
日々の会話だけで十分理解していたけど、
あって君をみて確信をもってすぐにでも手に入れたいと欲が溢れていた。
どうしたら君が俺をみてくれるのかとすぐに行動に移した。
それから少し経って、
「ぎこちない笑顔がかわいかった」と君は言った。
一言付け加えるだけで解釈が違うと思った。
確かに行動の結果によって君が俺を遠ざけたとしたら、別の方法で君を手に入れていた。
その辺りを君は最初から読んでたってこと?
それなら確かに俺が歪んでるのに気づいていてもおかしく無い。
そんな俺の表情から君は何かを察知していたのかな。
もっともっと経って関係にも変化があってからの節目に君は
「貴方のその歪んでいるバランスの色合いがとても美しくて綺麗だったからよ。
オーラが見える訳じゃないから、雰囲気の色合いの話だけど。
会話するごとに変化していくのが楽しかったし、見ていて面白くて綺麗だった。
一瞬で儚さを感じるような暗さのような陰りが見えたり、そんなことなんて全くなかったかのように輝いて透き通って美しかったり。
抽象的過ぎる表現しかできないけど、いつ崩壊するのかわからない絶妙なバランスを保ってる貴方が凄く良かったの」
君は色で表現するのが好きだった。
食べ物での比喩表現も多かったけれど。
君のイメージに合う色を当てはめていたのだと思う。
その色が好ましければ好ましい程、君はその場を見てくれるし観察してる。
その色が嫌悪や恐怖に近ければ君は近寄ることすら躊躇するか避けるんだろうな。
「ストレス過多?でいつ捩じれても変じゃないのに保ってられるのも凄いし、
それをなんだか全く自覚してないのも面白くて。
言いたい、吐き出したい感情や思いがあるのになぜかそれを表面に出してなくて。
いや自覚がないから出せなかったのかもしれない?
暗さや怖さみたいな今思うと狂気に近い何かを明るさと笑顔と言葉かな?
別の何かで覆い隠しているようなそんな感覚。
でも私には見えてて、それで隠してるつもりなんだ?って感じがすっごくすっごくかわいかったのよ。」
今思い返しても意味が分からない。
君はやっぱりちょっと変。
なんでそんな危ない男と付き合おうと思ったの?
俺のことだけど、君が理解できないよ。
あと正当な方法で君が手に入らなかったら、
別の方法で手に入れることもその時から感じ取ってたんだね。
君には敵わないって感じたのはこの時だけじゃない。
君の俺の評価が高くて驚いた。
でも全然喜べない気がするのは気のせいじゃないよね?
君が隣にいてくれて俺を選んでくれて嬉しかったけど、ほんの少しだけ複雑な気分だったのは確か。
でもその頃から感じ取っていたなら、
歪んでた俺も貴方だから好きは変わらないって言葉は本当に真実だったんだ。