終始
最終手段の君を再現する魔法陣は暴走して、俺は眩しさに耐えられず目を瞑ってしまったから何がどうなったのかはわからない。
この時、世界は静止したんだ。
そして碧髪耳長の緑化精霊様が御輿になった。
神殿に祀ってあった像とは比べ物にならないほどの美しさと冷徹さがあり、格の、魔力の差があるからなのか直に見ていられたのは数秒に過ぎなくて、気付いたら地に手をついて頭を垂れていた。そうしていないと俺が保てない状態だった。
「****しようと思った矢先に、破壊の危機とはどういったことでしょう?」
冷たく棘のある声が俺に響くが、口を開くのも圧がありすぎて苦しい。これが精霊様の通常時なのかはわからないが、この地に住む種族にこの圧は持たないかもしれない。なんて言った?
苦しすぎて聞き取れなかった言葉が全てで、俺に聞かれているのかも定かではない。ただ怒りを買った可能性は高い。
「貴方は一体何をしていたのでしょう?」
今度はやっと全文聞き取れた。精霊様は声も美しく心地よいのに背中がゾクゾクするのはなぜだろうか。いまだに圧は止まないから態勢すら変えることが出来ないし、まだ息を吸うのがやっとで口を開けない。俺がしていたことは……。
愛して、愛して、愛していた人にもう一度会いたくて、でもここでは会えないことを知って、自暴自棄になりつつも、生きている意味をどうにか見つけてそれに邁進してきたけど、可笑しくなり始めた俺の意識から作り出した幻影の君を再現したかった。
ただ君が傍に居てくれれば良かったんだ。再現できた君を受け入れられるかは別問題だけどそれに縋るしかなかった。想像して創造することの楽しさを受け入れ仕事をしてくれる柔軟な発想をもった相手とも雇用関係を結べたし、ダンジョンの探索は日々楽しかった。
幻影の君がいたから。
もう幻影の君さえも俺の傍から離れてしまって、君の再現も発想の可能性は現状潰し済み。君を再現する魔法陣とダンジョンコアの実の相性は実験さえもしていない。半年の間に一体いくつの高純度魔石を食ったのか、いや俺が食わせたのか……。
最後の望みを賭けて君を再現する核にコアを選んでしまった。ただそれだけ。
緑化精霊様からの圧が徐々に減っていった。息を吸うことがいつの間にか出来るようになっていたから。ただ話すことはまだ肉体的機能が追いついてないらしく難しそうだ。
この状態から推察するに、きっと緑化精霊様は俺の心情を読めるっぽい。この回答で良かったのかは謎だけど。
「今を楽しみましょうって言っておいたよね?」
今を?? 緑化精霊様と会話したのは初めてではないってことでしょうか?
もしかして転生特典的なあの空間の記憶がないだけってことだろうか。
確かに思い出す前は楽しんではいた時もあったが、好きなことが生きることに精一杯で出来ない日が多かった。本当は以前と同じような仕事をしたかったし、多分今もやめることなんて出来ない。
でもこの世界では全てが違いすぎて俺の作ったものは受け入れられないだろう。君の幻影にはずっと披露してたよ。毎日毎晩傍に居る間はずっと。以前よりもこの身体は動きが良かったし、毎日生死と隣り合わせの生活をしているから動きが悪いなんてある訳ないんだけどさ。
「好きに生きていいとは言ったけれど、これは有を無にしようとした結果ですか?」
やっぱり緑化精霊様とあった記憶が消されてるのかな?
俺にはそんな該当する記憶なんてな……。
まさか、え。
そんなことある?
うそ、うそだよね??
ああ、今動けないんだった……。
表情を見たいただそれだけなのに少しも動けない。
人種としては魔力も高く魔法も結構出来る方だったはずなのに、こんなにも差があるなんて。
でも、前の会話からそうだったんだ。
やっとやっと
君に会えた!
計画的自殺ではないよ。ただ新たなチャレンジをして、多分失敗したみたいなだけで。
君の名前を頭の中で何度繰り返したか分からない。
嬉しい。会えた。会えた。会えた。
君と会話してるって言えるのかわからないけど、ずっと会いたかったんだ。
あんなこと言い残して俺の前から消えるなんて困るよ。
もっとずっと一緒に居たかったし、二人でしたかったことだってたくさん残ってる。
君がどうしようもなく好きなんだ。
俺には君しかいないから。
君は今を楽しんでっていったけど、俺は君がいなくて楽しめる程人間出来てないんだ。
君がいないとすぐ壊れる。
俺に出来るのは好きなことだけって君が一番よく知ってるはずだよ。
「コントロールはどうしたの? 前回学んだんじゃなかった?」
それは君が傍に居ればの話だよ。君がいなくてもコントロール出来たことは少ない。
ああ、やっぱり君なんだね。
君の名前を何度も頭の中で連呼することをやめられなくてごめん。
久々過ぎてもう。涙が止まらないから声は出すことができないかも。
出ても以前とは声の音が違うから、君には前の声で再生されてるのかな?
君の幻影は見えていたけれど、声に出して君の名前を呼ぶことが出来たのは初めの方だけで、いつの間に心の声でしか君の名前を呼べなくなっていたんだ。
口に出して君の名前を呼びたかったけど、君の幻影って気付いて理解するほどに君との差異がある訳がないのに本物に対しての罪悪感かもしれないけど、呼べなくなっていった。
今も口に出して君の名前を呼びたいし、傍に居たいし抱きしめたいよ。
でも君と俺には差がありすぎて俺はこんな状態で、君を見ることすら敵わないなんて。
ねえどうしたら、俺の傍に居てくれる?
この状態はどうすれば君を見ることが出来るのかな?
「覚えているうちに、理解しないと繰り返すことがあったはず。でも貴方はそれについて考えなかったみたいね。最大のヒントをあげたのに、私の好意を無にしたかったの?」
君の好意を無にしたかった訳じゃない。ただ生きるのに必死で、そこに縋っていないとだめだったから。気付いたら現実の時間がなくて焦るし、考えたいけど考える時間が取れなかった。君の再現さえ上手くいっていたら、ゆっくり考えるつもりだったんだよ?
でも全然上手くいかなくて、俺に出来ることはあんまりないってわかってるよね?
君の事だから前回できなかったことを今出来るようになれば成長につながるって思ったんだろうけど、俺の意識が戻ってきたら君しか見えなくなって、俺としては視界が明るくなるって感じてたけど君としては視野が狭くなるって思ったんでしょう?
君との時間を楽しみたいのに、会話も目をみながらしたいのにさせてもくれない。
どうして?
あの時君が言った言葉を今思い出したよ。
次は人間じゃないって……。その通りだね。
やっぱり君は先が視てる。
俺の力じゃないよね。君は俺が見せてるって言ったけど、どう考えてもここまでわかるなんておかしいよ?
「まだわからないのね。私嘘は言わないわ。全ては貴方がしているの。その言葉通りよ。」
君の言葉はどうして俺に染み渡るのかな。
何度も聞いたような言葉でも今君の声で俺に話しかけてくれてると思うだけで俺はさっきから笑顔がやめられないんだ。
話したいことが沢山たくさんあるんだ。
いつかと逆だね。君は俺に追いついて来てっていいながら、追いついた時点ではすでに先にいるから結局さらに俺が進まないとって話だったし、前提条件をクリア出来てないから話せないとも言ってたね。事実そんな流れの中に俺たちは居たし、俺は君が俺を導いてるんだと思ってた。
君の言葉には色んな意味が含まれる。君と違って俺は全てを理解することなんて出来やしないけど。それでもその時出来る限りの事は考えようと努力はしてた。だってしないと君はすぐにでも離れていってしまうかもしれないって不安もあったし、節目だってあったのに。
いつもいつも本当に俺でいいのか不安で仕方なくて、でも君は俺を肯定してくれて満たしてくれる。俺気付いたんだよ。仮に俺の力だったとしても、君に俺の感情や意思がみえてないと君は凄く不安だよね? 言葉で行動で俺は君に何度も何度も表現するけど、実際俺がその解答を信じられなくて……。
そんな俺をずっと受け止めて受け入れるなんて普通出来ないと思うんだ。だって苦しだろうし、一番隣にいる人が君を信じてないなんて毎日言われてるみたいだから。
「ここまで***星を無にされるのは困るのだけど? せっかくの**がマイナスになることが確定してしまったわ」
???
今も君の言語は理解しがたい。所々聞き取れないところや不自然に無音な部分もある。話している言語が違うのかな? 君は俺の思考を読み、俺に理解しやすい言語で君は会話を選んでる。日本語や別の言語で聞いたとしても、君の質問の意味を理解できないのは今も一緒みたいだ。
泣いてるのに笑ってる、これぞ歓喜と呼ぶに相応しい。この感情はほぼなったことがないよ。新しい体験を君はいつもくれる。
君を目に焼きつけたいのに、どうして俺は動けないままなのだろうか?
力が、全てが君の傍に居るのに不足しているから?
君からのチャンスを活かせてないからだろうか?
声に呆れは入っていないから、君はきっとこの状態も予想していたはず。多少は考えたよ。君に関することについて考えないなんて出来ないから。でも情報が足りなさ過ぎて自分の中に新しい発想や視点を増やしたかった。現実でもその状態が必要で、いい縁があったんだよ。
あの時君の言葉を思い出して、全てを終わらせなくて良かった。
本当に君は此処にいるのだろうか?
俺に見えている夢の可能性も考えた方がいいかな?
でも君が何を言っているのか聞き取れないのは困る。せめて君の声だけでも音だけでもはっきりとききたい。生きていて良かったと思えたのは、君にもう一度会えたから。過去の君はこんな感じだったのかな?
「貴方のせいで、復帰して、今後の発展度に期待するしか**の道がないわ。プラスになるかが運次第なのは避けたいし、終わらせる方が簡単だけど、貴方にこれ以上の試練を与えるのは厳しいかもしれないから、戻すしかなさそうね。」
俺がしたことであの星は潰えることになったみたいだ。
君にはそれがマイナスの状態で、この状況を好転させるには、星の発展が必要?
君はまだ俺の事考えてくれる?
終わらせてしまったら、次は君と一緒にいられるのかな?
でも俺は君とのことを考えられてないから、好意を無にしたことになっている。
そんな気はなくても、期限までに君に答えを渡せない自分が嫌になる。
この場にはいつまでもいられるのかな?
君とずっとずっと一緒にいたい。
せめて君を見ていたい。
触れたい。
君の声を聴きたい。
復帰と戻すと君は言ったから、俺は今の星に戻ることになるんだろう。
そうしたら今の記憶は覚えてられるのだろうか?
君がいるのに傍に居られなくて、君の好意について考える日々で正常に生きていけるのかな?
君が、君がいないと俺はまた似たようなことをするかもしれない。
その場合は君にとって今回の現象のように、デメリットが大きいと思うんだ。
どうにか、どうにかして俺と一緒に居て。
傍に居て。
お願いだから。
「お願いが効かなかったら、別の方法の破壊方法を思いつくのやめてくれない? それはお願いではなく脅しですけども? またあの時みたいに二重音声で表と裏で混沌としてる。そんな貴方の色合いが綺麗だと思う私もどうかと思うけど……いきつく思考ってあまり変わらないのね。」
君には見透かされていた。俺がこの場にとどまれないことを理解していることも、それならばどうすれば君が俺について受け入れてくれるかも。君は俺に対して甘いから、そこを突くしかないよね。君のそばに居られるなら何でもする。恥ずかしいとも、無謀とも思わない。君に今伝えないときっと君はそこまでの想いがないことだと思ってしまうから。
今後こんなタイミングが来るなんて思えない。
君とこの場にずっと居られるならそれがいいけど、俺は此処にいても君に何一つ出来ないと解ったんだ。出来るのは感情を伝えることくらい? でも俺は君に隠し事すらできなくなる。現に君は今俺の心を読んでいる訳で、俺は君の心は読めない。
君に隠し事をすることはほぼないけど、全部見てくれていい。でもきっとそれを望んでいるのは俺だけで君はそうではないことも今はわかるんだ。あの頃の俺では多分何としてでも君のそばに居ようと縋ったかもしれない。今だって似たようなことしてはいるけど、分かっていて0じゃない可能性に賭けてるくらいってことも君はわかっているよね?
「勿論。きっとそんな流れになるとは思ったわ。だからプレゼントプレゼントをあげる。大切にしながら、答えをだして、プレゼントに伝えてね。これ以上は言えないし、思っている通りこの状態の差を前回同様にすることは今は不可能に近いから、少しでも貴方の色がもっと美しく輝きますように。」
◆◆◆
世界が静止し復帰したけど、そのことについて理解しているのは俺だけで、あの場に居たことは忘れてなかった。数秒間しか見えなかったけど、すでに朧で困ったけど、君の像を作ることから始めたかった。
でも俺にそんな余裕はなかったんだ。
君からのプレゼントは、珍しい妖精種の赤子だったから。その子に触れた時、君の分身の一部だって頭に情報が入ってきた。それだけで俺はとても嬉しくて君が少しでも傍に居てくれる。少しの意味が時間ではなくて君の一部ってだけで。やっぱり君は考えが思い浮かばないことをする。
思考は赤子そのもので俺に求めてるのは育児だった。きっとあの子のこういった頃を俺は体験できなかったから償ってるつもりなのかもしれない。リアムを見てそんな気持ちになっていたけれど、赤子ではなかったし、あの時そんなことをするとは考えついてもいなかった。
俺が君に縋りながら次の手を考えて君と会おうとした卑怯なことも見抜かれてしまって、それを止めるためにきっと君は、君の一部でも俺の傍に居れば、同じ破壊衝動が生まれることはないとあの短い間に気付くなんて、これで俺は君の一部を失うことはできなくなった。
だって次があったとしても、君はきっともう一部をくれることはないだろうから。
こんなにも俺を満たしてくれる君に報いないと、いくら君の像を忘れてしまう前に作りたくても、君の一部の妖精種の育児の方が優先度が高いことくらい俺にもわかる。
リアムと一緒に楽しく食事をして日々試行錯誤しながら、君の一部を育てつつ、君の好意について答えを出して、出来る限り俺の償いの為に、星の発展に貢献できるような何かをしていきたい。
そうすれば、君はきっと俺をまだ好きで、この子を通して俺をたまにでも見てくれるよね?
新しい関係にはなってしまったけど、君を両手で抱きしめることも、触れることも、傍に居て声を聴くことも出来る。
結局君は優しくて甘いから、俺の願いを叶えて導いてくれるんだ。
以前思ったように、君にゆっくりと俺の事を教えていくから、何も心配しなくて大丈夫。
君が傍にいてさえくれれば俺は狂わない。
これからもずっと傍に居るから。
ずっと見ていて。
お読みくださり有難うございました。




