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消滅

◆◆◆


 そのまま5年が過ぎた。変わりの者の学生たちは一部卒業しその後就職先として引き続き雇っている。学園都市は卒業も地球時代とは違い飛び級もあればずっと学生のままでもいられるようだ。ただ一定の学に満たないと退学となる。飛び級での卒業と自主退学での卒業が同じ言葉だったりするのでわかりづらいが。貴族社会に強制的に戻らなければならないこともあるので自主退学はよくあるらしい。


 変わりものではあるが学はあったので雇ったメンバーは卒業して俺のところで研究を続けている。一部学生のままでいなければならない事情があるもののみ残っているが、卒業資格はとっくに満たしているようだ。収入も比較的よく、個々にあった好きな仕事が出来る職場ではあるので彼らにはもってこいなのだろうか?


 2.3年に一度変わった者はでるようで、学生の中にそんな相手を見つけたらアルバイト先として仕事を持ちかけることもしている。新しい風がある方が俺の環境にも発想にも役立つかもしれないから。君は以前よりとても薄くなってしまった。地上ではいるのはわかるけど細かい表情や仕草がわからなくなっている。君も同意見だったようで、同じままだと滞って停滞するのを避けて欲しいようだった。


 依頼の結果としては、正直100%再現できるほど進んではいない。ただ俺の知識は学園都市でも好成績をとれるレベルにはなったらしい。天才二人のまとめた資料は理解不能でやはり彼らのまとめた資料を訳すために別人に講師になって解説をいただかないと不明な点は多いが。


 それでもあの二人の天才を雇って正解だった。そしてそれを訳せるメンバーもそうとう優秀だろう。彼らは未だに全員顔を合わせたことがない。同じ職場のメンバーではあるが、在宅勤務が主である。職場を欲しているメンバーには個別に仕事場を与えてはいるが。


 君の幻影を再現できるほどではないが、再現に近い状況は得ることが出来た。ただし君の幻影と同じく触ることが出来ない。この問題はいまだクリア出来ていない。今後に期待するしかない。


 5年の間にダンジョンの隠し階層やその隠し部屋の転移先を調べたり、素材収集を繰り返しつつ資金を稼ぎリアムのいる家付近のダンジョンから周囲の領地、隣国に至るまで結構な数のダンジョンを探索し君との日々を楽しみつつ情報収集と資金集めをした。


 その甲斐あってか、探索者としても一応一目置かれるレベルにはなれて、不要だが放出するのは面倒なアイテムを売却できるようにもなった。感覚で使用していた魔法が魔法の基礎と応用を理解することで多少魔力効率が上がったため、身体能力や魔法の威力の変化があったことも理由かもしれない。あまり目立つつもりはなかったが、一定期間で一定量を卸せるのはやはりギルドからすると得難い人材のようであった。


 そろそろ本格的に俺も魔法陣について対応するのもいいかもしれない。一つ思っていることがあるのだ。調べた結果になるが、所持属性でない高純度魔石を持っていても隠し階層には行けなかったからだ。未所持属性は結構あり、高純度魔石を色んな領地や町・国でかき集めた結果、未所持属性の高純度魔石が沢山になってしまった。


 大きいだけの魔石より俺としては高純度魔石の方が素材としていい役割をするのではないかと疑問が前からあったのだ。これでインクを作ればどんなものができるのか楽しみである。ただそれには対応できる素材がいる。リアムのいる家のダンジョンが一番攻略が進んで最下層まで行けてはいる。あのダンジョンの最下層の、更に隠し階層の素材なら対応できるかもしれない?


 それで対応出来ない場合はどうしようかとも思うが、ダンジョンから出たならダンジョンの素材で対応するのがいいのではないだろうか。ただ最下層は結構ハードだ。以前だったら行くのも躊躇するレベルではあるが、5年の間に俺も多少成長したのかそれともただの慣れなのか。君はレベル上げ本当に好きだよね。同じ場所で狩をするのが好きらしく、そして効率ついでに稼ぎさえも求めているようでそんな君についていくのが精一杯の5年でした。


 ついていき一緒に狩をして、君を見て過ごしているただそれだけで幸せ。それで大量の素材と金銭が入ってくるのだから笑顔にもなるが、日々君が淡くなっていくのを地上に戻る度感じると笑顔が徐々に曇っているが、そこは再現するために動いてもらっているから任せる他ない。


 焦りもあるけれど俺に全てを対応する時間はない。金銭を稼ぎ雇ったメンバーへの給料を支払い、最終的に君を再現できればいいのだから。まだダンジョン内なら君は淡くないから、もう少しは時間があるはず。


◆◆◆


 10年が過ぎた……。地上で君を見ることが出来なくなって何年経つだろうか?

 ダンジョンから地上へ戻ってきて君が消えてしまって俺が壊れた話でもある。解り切ったことだったことだったのにそうなる可能性を考えて行動していたはずだけど、君が目の前から消えてしまったら冷静で居られることなんて出来なかった。


 小休止を入れるための補給のタイミングだったから、リアムの食事をアイテムバックを交換し、ギルドに素材を一定量売り払う。そのころには家用の素材収集残アイテムバックに素材を保管していた。一定量をリアムに売り払ってもらう仕事も追加したのだ。


 在庫あり状況が続いているのだが、それについてはリアムしか知らない。ギルドに売り払う時間すら惜しい時だったのだ。1か月に1度くらいはギルドに直接顔を出し、功績をタグに追加して貰っていた。そこで新しい素材についてや必要な依頼をピックアップし、狩場の選定をしたりもする。


 リアムにはそのままだと危険が伴う可能性もあったため、安全対策を施した魔道具をいくつかプレゼントしているが、大々的に素材を卸しているのがリアムだとはバレていない内は危険は少ない。何度か素材の件以外で色々あったらしいが、害する者が気絶し所持品が減る事態があったようだ。ただその辺りで気絶していれば、金目のものが奪われるのは日常茶飯事のためリアムのみが疑われることはなかった。


 一応予備として俺自身にも合図が来るようにはしてあるので、下層にいるとすぐに救出は厳しいかもしれないが、数日間のリアムの安全は確保されているから間に合うとは思う。君がリアムを好きだったから俺もあの子に似ているリアムを大切にする気持ちはあるんだ。君の好意は全て俺に向けて欲しいけど、あの子を見ている君はとても綺麗だったから飲み込むことにした。


 そんな現状で、君が地上から消えて俺は壊れた。自分の部屋にまた5日くらい引きこもってぐるぐると考えて考えて、リアムに心配を掛けていたかと思えば、多少は心配していたけど、働きすぎていたから休養中と勘違いされていたようだった。確かにその付近は忙しく補給してはダンジョンへ舞い戻る日々であった。


 誰かに壊れたところを見られた訳ではないからセーフかもしれない。君が求めてない思考が浮かんでは消えてを繰り返してなぜここに君がいないのかを理解するのが辛すぎて目を背けていたかった。でも会いたくて見ていたくて、淡かった君が下層では濃かったのだからとやっと回答がおりてきた気がして、長期間でも君を探せるようにたっぷりと補給を巻きでしてから、君へ会いにダンジョンへ向かった。


 隠し階層の部屋に君は居た。補給が遅いと怒られていつもの日常が戻ってきて俺は泣いた。君は泣いてる俺を優しくあの頃みたいに慰めてくれた。君が居る、君がいるそれだけでこんなにも嬉しいなんて。


 この日から俺は今まで以上にダンジョンへいる頻度が上がり、殆どダンジョンに住んでいると言っても過言ではないくらいだった。ただこのままだと君がいつどうなってしまうのか不安で仕方がなかったのに、君は次の効率の良い狩場の選定が済んでたみたいで、別の国のダンジョンの隠し階層の探索を進めたいとのこと。


 いつだって君は前向きだよね。俺が地上で君を見えなくなったことも気付いているはずなのに焦りもしないし、俺ばっかり君を好きなのかと分かり切ってたことだけど思っていたら君からキスをくれたんだ。触れることは出来ないから気分みたいなものだけど、初めてのその行動に俺は気持ちが高ぶって仕方がなかった。精神的に揺さぶられ過ぎていたからかもしれない。


 出来る限り傍にいるから、今出来ることをしようってことを君は伝えたかった。俺に出来るのは狩で金銭と素材を集め、出来れば少しでも魔法について理解を深めること。狩の合間に魔法の勉強を追加した。ただ睡眠や休憩を削ってまでしようとしたら君に「計画的自殺ですか?」と久々に笑顔で聞かれて、「違います寝ます」と呆れられないように言葉を続けたのは覚えている。


 でも君だって楽しいと睡眠を削ってまで色々続けるの知っているんだよって言いたかったけど、ダンジョンでのこの行為は即、死につながるからってことを理解してたから言い返せなかった。


 新規開拓中も君の勘は冴えわたり、隠し階層の隠し部屋を当てるのはもう日常の一部で、さらに色んな国に行けるようになった。この世界は国々で言語が統一されているから楽だった。ここに別の言語まで習得する必要があったら魔法についても解釈が違いそうで、時間がないのに困るところだったからその点はよかった。多少の文化の違いはあれど、ギルド自体は何処でもあるのでどうにかなった。


 そろそろ金銭を稼ぐ理由はない状態まで宝箱からのアイテムで稼げてしまっていたが、君に会えるダンジョンへ俺が行かない訳もなく。探索の日々。長期遠征でたまにしか地上に行きたくない状況になってしまったので、魔法についての進捗は壊れた当初は滞っていた。


 彼らへの支払いもあるため、一定金額を振り込めるようにしたかったが、そこまでのシステムがこの世界にある訳もなく魔道具を支給してそこへ送金する形に対応した。天才やその他たちからは魔道具制作に関して色々聞かれもしたが、答える時間の余裕がなかったため後回しになってしまっていた。


 数年が過ぎてこの生活を続けていても、君の再現には変化が必要とずっと理解していたことに目を向ける気になれた。君と離れるのはつらく悲しいけど、月に1週間は地上にいて天才の提出物を理解するための講義を聞く日になったり、自分で考える時間を作ってみたりもした。


 当初よりは君を再現できるようにはなれた未所持属性の魔石で魔法陣のインクを作り、隠し階層の素材を使用して魔法的に革命が起きたと言ってもいいと思うが、誰かに伝える気などなれない。やはり肉体がないため触れることはできないから、この問題が解決しないと俺の理想の君が再現されたことにはならない。


◆◆◆


 更に2年が経って最下層でも君は視えず、最下層の隠し階層へ行かないと会えなくなった。最下層の隠し階層の宝箱からダンジョンコアの種と名の付くアイテムを獲得した。


 君に会うために他のダンジョンでも最下層には行けるように探索しつつ整えていたから、君が場所を変えてクルクルと探索してた結果ともいえるけど。他の場所でもダンジョンコアの種と似たようなアイテムも獲得している。


 そろそろ俺もいい年になってしまった。君に会えても君は俺を好きになってくれるのだろうか?

 若くて可愛いを貫ける年齢でもない。君に可愛いと言われるだけで嬉しかったあの頃はいつ戻ってくるのだろう?

 日々君への想いは募るのに、藻掻いて足掻いて進みが見えない現状に打ち勝てない気持ちが沸き上がる。肉体がなければゴーレムでも作ればいいと思っていたけど上手くはいかなかった。


 その前から徐々に俺は狂ってきていたんだと今なら解る。止める君が見えないし聞こえなくなってもきてやはり現実は苦行の連続でまた生きる意味が分からなくなっていた。


 ある日ダンジョンコアの種に高純度魔石を食わせてみようとふと魔が差したのか思い即実行した。いろんな地域を回る度に買い集めていたので未所持属性に限らず沢山ある。ペットのように感じでダンジョンコアの種へ日々高純度魔石を捧げることが日常になった。


 半年ほどたち、ダンジョンコアの種はダンジョンコアの実へと変化を遂げた。確実に成長を感じ、地上ではダンジョンコアの成長、ダンジョン最下層では君を見つめることで俺はどうにかその日を生きていた。


 それから数週間後、最下層でも君を見ることが出来なくなって俺は本格的狂ってしまった。精神的不安定な状態に危険なものを所持させるのは間違っている。君を再現する魔法陣に高純度魔石をベースに作成したインクを使い、その素材にダンジョンコアの実を使ってしまった。


 最初は綺麗な魔法陣が再現された君とダンジョンコアの実が統合されていき、眩しい光を放って俺の再現したかった君が出来ればよかったのだけど、そんな甘い世界でもなく。魔法陣は暴走してしまい地上の空一面に広がっていった。ダンジョンの最下層で行っていればまた結果は違ったかもしれない。


 でも君が俺の目で見たものをずっと見ているからと伝えられて、最後に君は空がみたいと言ったんだ。俺には空って聞こえたけど、今思えば宇宙のことだったのかもしれない。狂いつつも君の遺言? にはいつも素直に従うから、地上に戻ってとある国と国の境目くらいにあるダンジョンの近くにある海を見ながら俺はダンジョンコアの実を使って最終手段を試したんだ。

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