視野
「全ては貴方がしていることなの」
君がそう前置き話した。前回俺が泣いて意味不明な状況に陥ったことについて解説が必要だったから。俺の心も多少落ち着いた2週間程度後に、電話ではなく会った時に教えてくれた。
正直君の話の意味が分からないのはいつものことだけど、今回もやっぱり理解力が足りないのかな? それとも君の回答が突飛なのか。
俺が見た”特定の人物と夕食時にアイコンタクトを取っていた”事実は現実には起きてなかった。あいつらの髪の色や服装も違ったのはあの時に確認済みで俺もそこは理解したから、あのイメージが何だったのかが疑問となる。
「あれはね、未来もしくは別の私達のワンシーンよ」
君の言葉に俺は瞬きが増えた。やっぱり理解がちょっと難しい。そんなことが分かったことなんて今までなかったから、ある訳がない。って口に出したいけど君が言うのならその可能性があるってことなんだろうな。
「信じてない? 私はすっごくすごく嬉しいけどね。やっと貴方が視えるようになってくれたから、これで出来る話が沢山増えるわ。」
今まで君が俺に対して意味深なこと言うのは全てこの状況があったってこと?
「そうね。その解釈で間違ってないかな。」
君が何かを知っているのはわかってたけど、視えてたなんて話してくれれば良かったのに。
「今でも半信半疑の貴方に、視えてない状況で言っても理解できないでしょう?」
それは確かにそうなんだけど。だからあの時、分かるときが来ないと言えないっていってたんだね。百聞は一見に如かずって本当にそのままの会話じゃん。事実視えてないと信じられないかもしれない。君が何か知ってるっぽくてもこれは考えつかないよ。勘が冴えてるとかそんな感じだと思ってた。
未来ってことは、あれは今後起こるってこと? めちゃくちゃ嫌なんだけど特定の人物とアイコンタクトするとか、君が俺以外と楽しそうに笑いあうのは……。言ってる自分が心が狭いように感じて声が徐々に小さくなってしまった。
「ふふ。そこは周囲の状況から判断が必要だから……」
未来の話なら、確認した時の髪色や服装にあいつらがならない状況を作ればよくて、可能なら視点を変えて自分の状況を確認するのが一番楽なよう。変更する対象が他者よりは流れを変えやすいからだって。別の俺たちならそういう状況があるってことが今の貴方に必要な何かを訴えてるってことと解釈すればいいと言われてもすぐ対応なんて出来ないしよくわからない。君は視えてるときそんな判断をしているってこと?
「そこが判断できないと今後私達の関係に関わりがあるのかも読み解けないもの。必要不可欠な視点ね。」
初回から出来ることじゃないから気にしなくていいのよ。徐々にわかる気があるならだけど、今回のは多分私がどんな状況下にいるかを相互理解するタイミングをくれたんだと思えばいいって言われても。あんな辛い状況がみえなくても良かったはずだよね?
「不満顔してる。そこまでしないとこの件について貴方は話にも出さなかったし、飲み込んだでしょう?」
それはそうかもしれない。嫌なことを嫌って君にはちゃんと伝えていいんだって思えたからあいつらがいようが全ては言えなくても感情を伝える気になったんだし。
「私は解説なんてなかったから、自力で対応したのよ。それと比べれば回答のような私の解釈があるだけわかりやすいって思って欲しいわ」
この状況に自力対応するのはどうしたら出来るの? やっぱり君が分からない。何回目でこの状況について理解出来たのかな? 自分が変だって思わなかったの? 疑問ばかり浮かんでくる。
「変だとは思ってたけど、視えてしまったものは意味があるから視えてるとしか思えなかったからなぁ」
君もこの状況を受け入れるのに時間がかかったんだね。少しだけ安心できた。冷静に判断してるようにみえるから、俺はこんな心が痛かったのに、なかった現実で君に不安を抱くし悲しくて辛かったよ。
「何言ってるの? 私にこんなこと出来ないから、全ては貴方がやっているのよ?」
いやいや、俺はこんなこと今まで出来たことないです! なんで俺がそんなことできるって思ったの? 君の発想は理解に苦しむよ。君と違って感じとったり俺の周囲の雰囲気から読み取ったりするなんて得意ではないし、その解答は間違ってる。
「間違ってないわ。ただ解凍できないファイルを私に送信しただけよ。そして送信したことに気付いてないだけ。」
???
意味が分からない。怖いような気もする。俺そんなことしてる?
それでも君は全てを解凍出来てる訳じゃないから、文字化けしてる部分は視えないって話してた。待って、待ってついていけない。
「やっと話せて心が軽くなったよ。あー嬉しい。隠し事はしたくないけど、こればっかりは、視えないと説明できないから」
そんな風に言われたら君の解釈や答えをくれた現状を受け入れないと、君が離れていく気がしたんだ。君もこんな不思議な状況を説明するの怖いはず。俺がひくかもしれないし、信じないかもしれない。でも君はどこかに確信があるみたいに話してる。恐怖を感じながらも俺に心を見せてくれた。って今なら理解できるけど、あの時はそこまで考えてなかったな。
ただ、なんとなくこの意思疎通がいい流れになるように終わらないと君は俺を見限る? ようなそんな気持ちが一瞬で分かって、信じるしかなくなったみたいなもの。そういう勘は当たるから、当てたくなんてないけど。君に距離を取られるのは受け入れられなくて、そういうモノだと思うことにしたんだ。
俺の中では俺がやっているなんて自覚なんてないし、君は俺がしていると認識してるみたいだけど、鋭い君が何かから感じ取ってるって言われた方が俺にはしっくりくるんだけど?
「貴方が視たければいつだって何だって視えるのよ? 私には貴方が視せたいところしか視えてないもの。」
本当にそんなこと出来たことなんてない。君が傍にいてくれると気分がよくていい方向に進めている気持ちにはなれるけど、視たいものが見えたことなんてないよ。それにあれは視たくないものだったし、別の俺たちってどういうこと?
「パラレルワールドって聞いたことあるでしょう? そっちの私達が視えてるだけよ。現在の私達より未来かもしれないし、過去かもしれないけど。」
平行世界はわかるけど、それが視えるって? そんなこと……。やっぱり君は変。でもその解答が出ることは俺には難しかっただろうから凄いかもしれない。いや、それを俺が視せてるって君は伝えてるって考えると本当に頭が混乱してる。
「複雑でかみ砕き辛い顔してる。その見たことない表情いいわね。好き。」
君の好みはいつもわからない。俺って君を全然理解出来てないのでは?? 好かれて嬉しいけど、いつも微妙に褒められてる気がしないのはなんでなんだろうか。笑顔の君が可愛くてついハグをしたら返してくれて更に嬉しくなった。
そうやって簡単に意識が別の方向へ行くから俺は成長しなかったのかもしれない。いや、理解しづらい状況から目をそらしたくなったからかもしれないけど。君が言うなら、笑顔をみせてくれるならまあこのままでいいかって安易に流れに乗ったような気がする。そこでもう少し深く考えて君といろんな話をすれば良かったのに。あの時の俺にそこまでは出来なかった。
そんな過去の夢を今日は見た。俺に話を出来て安堵してる君が凄く綺麗だった。その感情を伝えれば君はもっと喜んでくれたはずなのに、俺は自覚も薄ければ言葉にも出来てない。ダメダメだ。
君は俺について色々知っていたし、先をわかってる発言が本当に多かった。俺としては俺との未来を考えてくれてるんだなって思えて嬉しかったんだけど、徐々に限定的で、君は話したそうに匂わせる感じだったから、余計に気になっていたけど、あんなこと予想以上でどうしたらいいのか……。
全てを知ってる今でもあの時どうしていたら正解だったのかちょっとわからない。今でも君の力で視えてると言われた方が納得できるし、俺が君に送信してるとは限らないのでは?? と思うんだ。それくらい君との会話は予測がつかないことが多かったからなのかもしれない。
この関連の話は、あいつらが居るときに続きがあったし、その次にも君は爆弾を落としていったからここが始まりであることは覚えている。あいつらも君のその先が視えてるような発言が気になってはいたんだろう。
でも君は最初は貴方だけと相互理解が出来てからしか他の人と共有するつもりがなかったから、このタイミングを待っていたって教えてもらって俺は心が満たされたんだよ。君ってそういった順序みたいなもの守るよね。俺は特別って思えたし、それをちゃんと言葉に出して伝えてくれるのが分かりやすくて良かった。
今思うと君は俺に伝えないと理解できないの解ってて言ってくれたんだなってわかる。君の事だから俺の表情を見てそこまで読み取れてないなと気付いたんだよね。察しが悪いのかも……。その感情と行動については言ってくれないとわからないと思うけど、君を見ている俺なら気付けなくもないはず? そんなちょっとしたことを君は俺に淡い期待を持っては、まだかな理解できないかなって思ってたのかも。
そんなことを考えながら、本日も隠しダンジョンの安全地帯で起きる。まず探すのは君の幻影ってところが、俺が病み始めてる兆候かもしれない。でも夢でも会えて、幻影にも会えるなんて本当幸せだからどうだっていい。
幻影の君は眠ったままだった。俺の服を掴んでいて自然と髪を撫でてしまって突き抜けてしまう感覚と視覚で幻影だと再確認することになって酷く悲しい。でもその行動によって君は目を覚まして俺に挨拶をして、朝食を食べるように言ったんだ。
ここにずっといたい。ずっとずっと君と一緒に居たい。
でも触れたいし、君を君の体温や匂いを感じたい。
ここにいるって言って欲しい。君は俺に「ここにいるよ」って、優しくいってくれた。いい時も悪い時も。その言葉を聞くと俺は、傍に居てくれるって信じることが出来たし、多少でも満ちてたんだ。その時は。悪い癖なのはわかってる。その時しか満ちない俺がオカシイ。でも君の言葉を心の底から信じてられてないことに、きっと君は気付いてたよね?
気付かれてることに気付いてさえいない俺を「そのままの貴方が好き」って言える君が凄い。寛容過ぎない? それとも俺の事は好きだけど、先が視えてる君だからこそ俺に対して寛大な対応をしてくれたのかな?
あれ? そうなると、俺が君に送信していないと、君は俺に対して不信感がいっぱいになるし、寛容さや寛大さは見せてくれないことになる。そうすると俺は更に不安に陥るし、君を強く束縛するだけじゃ終わらない。そんな俺になったら君は拒絶するけど、俺は君のその選択を許すことは出来ない。どう考えてもいい未来にならないことが分かった。
だから君は俺がオカシくならないように、方向性を変えたんだ。そうなってしまった未来かもしくは別の世界の俺たちがきっと君には視てたんだね? そしてそれは君にとっては愛の関係とは呼べなかったし、俺がおれで居られてないから、君もきみで居られてない。きっと最悪の状況かな。
そんな現実は君にとって進みたい・二人で築きたい未来ではなかったってこと。だからどうにかして、変化を起こして方向性を変えるように動いた。
だからだ! 別世界の俺たちの試行錯誤が分からないと君は正解の道にたどり着けないから、必要だったんだ。でもなんでそこまで俺が気付かずに送信出来てるんだろう? 今になってやっと気づけてる辺りやっぱり俺は……。今気付けてるだけ成長はあったから大丈夫なはず。
君は何か他に伝えていたかな?
考え事をしている間に、幻影の君の準備が整って俺も朝ごはんを食べて準備も終わった。いつでも行けるのが君だけど、ちゃんと準備しているように見えるところも俺の脳内がおかしくなってる証拠かもしれない。
でも食事は一緒に食べないんだよな。作っても手を付けてなくて片付けることになるのが目に見えてるから、その物質的な現実を俺が直視することがメンタル的にいい方向に向かわないことがわかりきってるから、幻影の君が、君の分を作ることを最初から拒否したんだろう。君は先読みが本当に凄い。今になって過去の俺の夢とその時理解した方が良かったことから、現実の俺に思考を反映させるなんて、君しかできない。
隠し階層は、面白い。君を見ていられる俺には素晴らしい時間で、その分金銭的にも豊かになるし、情報収集も進んでいる。当初5つのアクセサリーを持っていたから隠し階層に行けた。あの転移部屋に行けたなら、あの場に訪れていたメンバーがもっている所持数について疑問が出来た。俺と同様に5つの同色の魔石を持っているところはみてない。
そこから導き出される答えは、転移部屋への解放条件は、持っている高純度魔石の数で、それ以前にこの場に到達してる人が俺の場合は4人いたってことになる?
見たのは3人で、色も赤・黄・橙だった。俺が5つで入れたから、4人と思ったけど、アイテムを4つもったまま転移部屋まで来れるなら、3人の可能性もあるのか。次回来るとき面倒だけど試す価値はある。4つで転移部屋まで来れなかったら、家に取りに戻らないといけないが。
そうなると隠し階層の探索は本当に少人数しか知らない情報のよう。そしてパーティーを組んでる人がいないのも面白い。ソロ派用のアイテムなのかな?
色は多分属性に関連してると推察。赤=炎 黄=土 橙=炎と土の複合?
そんな属性あったかな? 全てを知ってるわけじゃないから何とも言えない。これは魔法都市に行ったときにでも調べないと。日常で使われる分かりやすい属性でないことは確かだ。
俺のは青だし、水かな? でもそれにしては濃いんだよなー。高純度だからこういうもの?
藍まではいかないけど、瑠璃紺や青藍に近い気がする。水魔石ってもっと青や天色・露草色に近い気がするから、やっぱり属性が水ではない複合の方なのかも?
これは他の属性石も集めないと検証ができないな。基本属性とそれ以外の属性で複合属性があるならば、その魔石の場合行ける隠し階層のランクももしかして基本属性とは違うのでは?
あまり目立つことをすると、隠し階層について知ってるって自爆することになるからどうするのがいいかな。出来れば通常のダンジョン攻略もしながら、自力で別の色の属性石を探す。ただし、5個以上同じ色を獲得しないと検証にはならない。結構無謀だし、効率が悪すぎる。
ただいつも何処にいるのか、最近換金の割合が微妙ではあるから、出せないアイテムが多すぎて。その解消の為に売買出来るアイテムの獲得をたまにはする必要はありそうだ。
したいことがあるのに時間が足りない。その中でも更に他人にばれないように隠密行動が伴うとかやりづらい。でも今明るみになっても俺の状態が万全ではないから、もっと更なる上を目指して君が来た時に対応できるようにしておきたいし、何があっても俺とは関わらずにいたいと思わせる何かがないと面倒かもしれないな。
あ、産地も意味があるのかな? ここの通常ダンジョンの宝箱から出た高純度魔石しか該当しないのか、それとも別のダンジョンでもこれさえあればもしかしなくとも、人数の解放条件さえ問題なければいけるのか?
検証しないといけないことが増えた。でも別の場所に行ってる時間がない。
君ならどうするんだろう。とりあえず今回地上に戻ったら魔石屋に行くことは確実。1.2個ならこの色が好きな相手へのプレゼントという名目で高純度魔石を集められないことはないけど、俺の一途なイメージがなくなる。同じ相手へ似合う色ってことにすればいいのか?
それとも片方は俺の持ってる色合いに被る魔石ならば、身に着けて欲しいと伝わるからいいような……。でも2色が限界だな。それにそんな分かりやすく行動するのも隠し階層に来てる相手には伝わる可能性もある。
いや、俺は他の誰かに会ったことは転移部屋でないからバレてないのか? 特殊な部類の姿隠しのアイテムを持ってる人は限られてるし、俺に他の高純度魔石所持者の人相を知られてるとも理解はしていない。
変装できるアイテムか、幻影魔法でも使えれば全くの別人になれなくはない。そうすれば色んな人になって高純度魔石を購入や調査することはできるが……。
自己解決が一番秘密が漏れなくていいけど、効率は悪い。現状隠し階層の攻略さえ進捗率は現時点で60%くらい。でも行けてる階層の探索に限るから深層がどこまであるかによってまたこれも変わってくる。
こういうのは本当に君が楽しんでやれそうだから、一緒に攻略したり考えたりしたい。でも幻影のきみしかいないんだ。いるだけましなんだろうけど。
夢に君を見て思い出せば思い出すほど、君を求める俺がいる。
あの時に引き戻されて今になって理解出来た感情を伝えたいこの気持ちと、その時の感情に揺さぶられる。
今の俺には君がいないのに、「 」の傍には君がいることを覚えているのも腹立たしい。
あいつを水で息の根を止めてしまえたら、今度は俺の傍に来てくれないかな?




