表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

想起

食事にまで気が回っていなかった。

倒れていた間に見た夢の中の君はとても楽しそうに笑っていた。


そういえば君は食事について話すことが多かった。

沢山の料理を作ってくれたし、俺の料理も美味しいと言ってくれた。

一緒に作るのも今思うと幸せだった。


きっと君なら

「ここにいる意味があるから、理解できる時がきたら貴方ならわかるから」

と意味深なことを言うんだ。


必要なタイミングになると自然と身体が動いていて、

君をみるとそれが正解って笑顔を向けてくれる。


その後、やっと解ってくれてうれしいとも伝えてくれたね。

「今ここじゃないと貴方の中に上手く響かないと思ったけど、あっていた?」

とちょっと不安そうに言うのもとても可愛かった。


俺に理解しやすい環境がそろっているのもわかるけど、君に言われたタイミングを逃したくなかった。

間違えないかの方が比重が大きかったけど、そこはあえて君には伝えなかった。

もちろんできて当然という顔をしたけど、君には読まれてる気がする。


漫画の一コマの背景がかわいいで埋まっているように

心の中で何度もかわいいを連呼しているし、日々していた。

でもあまり言いすぎても君が逃げそうだから言えなかったんだ。


この地で生きていくなんて老衰まであと何年あるのだろう。

誰か今すぐ殺してくれないだろうか?

この生が終わらないと君に会えない。


どうしたら会えるのかな。


文字だけでもいい、声だけでもいい、君と繋がりたい。


そうしたら最後まできっとここでも生きていられるかもしれない。


でもここには君がいない。


だって君がいったから。


君の言葉にはいつも嘘がなかった。


可愛いウソはたびたびあったし、

聞かないと大切なことは教えてくれないけれど。


俺が聞かないってことは「興味がないんでしょう?」と言われるからそれも間違ってないんだ。

その時は深く聞かなかっただけで、知りたい気持ちがゼロではないよ。

君だって聞かれてないことを考えることもないから答えられないのもわかってる。


解っていはいるんだ。


でも君のすべてを知りたかった。


◆◆◆


君ならなぜ今のタイミングで前の世界の記憶を思い出したのか考えるんだろうな。


この世界でいつもいつも何かが足りないと思っていた。

でも誰もそんなこと感じていなくて、理解してもらえないことが辛いことを知った。


君が思っていた辛さはこういうことなのかな?

あの時もっとこの感情を共有できたらもっと好きになってくれたかもしれないのに。


俺から離れないで、次は「 」と一緒に居ることなんてなかったかもしれないのに。


どうして今君の隣にいるのが俺じゃないんだろう。


世界が違うってなんで?


どうして違うんだ。


どうしたら君は俺の隣にずっといてくれるの?



◆◆◆


また目が覚めた。


まだ生きている、君のいないこの世界に。


一応ここでも思い出す前にだけど、いいなと思える相手が出来た時もあったんだよ。


今思えば君に多少声が似ているだけで、それ以上でも以下でもなくて、笑顔は全く似ていないし、会話のテンポも全く合わない。

差がありすぎて、結局続かなかったよ。


「相手には悪いことをしたと思ってる?」って君ならきくかな?


人に迷惑をかけるのはよくないって。


でも相手だって俺の表面しかみていなかったんだから一緒だと思うんだ。

俺が求めているのは君であって、君以外の何かじゃなかったことに気付けた。


それだけで本当に嬉しかったよ。


たとえ相手が泣いていたとしても、俺は救われた気分だった。


君を思い出すきっかけをくれたのはとても素晴らしい発見だったから!


同時にこの世界に君がいないことを思い出すまでの短い間の救いだったから報いは受けたのかもしれない。


◆◆◆


また君のいない世界で目覚めてしまった。


いい加減この肉体が朽ちてくれればいいのにと思う。

自殺したらこの世界から抜け出せるかもしれないって実行したんだ。

逝きつく先の手前でまた君の優しい声と言葉を思い出して、生きることになった。


どうして自殺すると魂が変質してしまうの?


ただ君に会いたいだけなのに。


変質すると次、君が近くに来てくれても見つけられないってどういうこと?


近くにいるのに君がわからないことなんてない。


直感で今だって君が必要だってわかるのに。


この直感がなくなるってこと?


君が近くにいるのに、俺が君を選ばない未来なんて怖くて生きていけない。


手に入れた君が君じゃないなんて。


君はきっと俺が違う誰かを選んでも、「その人でいいの?」とも言ってくれないんでしょう?

俺が見つけないと去っていく。

俺から君が去っていくなんて、その次はないかもしれないのに。


君が近くにも来てくれなかったら、どうやって俺は君を探すの?

何処にいても君が分かればよかったのに。

俺はそこまで有能じゃない。

生きているうちに会える人数なんてたかが知れている。


でも自発的に君が動いてくれなかったら?

俺は君に会えない人生を送るなんて出来るのかな?


◆◆◆


君に撫でられている夢をみたよ。


また目が覚めて現実を理解するのに時間がかかった。


君の大好きなファンタジーの世界にいるのに君が居ないなんてなんだか意味が分からないよ。


幸せだった心が、一気に冷えた。


君は生きるのは苦行だったけど、

俺に会って愛されて、俺が生を謳歌しているのを見ているのが好きだから楽しいし、

生きている意味があったって節目に言ってくれて本当にうれしかったんだ。


今はその気持ちがよくわかる。


生きているのって本当に苦行だ。


君に会いたい。


君に会いたい。


君にあって触れて欲しい。


いつもみたいにそばにいて、なでてほしい。


夜、今日あったことや出来るようになったことを話しながら笑いあいたい。

少しでも成長したり、新しい考え方や発見があって伝えたら君は褒めてくれたし、喜んでくれた。

小さいことでもどんな事でも。


「ストレスはない方がいいし、無理しないで、少しでも貴方の心が軽くなってくれたらうれしい」

って言われてもっともっと大好きになったんだ。


君を思い出して生きていくのは辛過ぎる。


でも君を思い出せなかったら、また別の誰かから君の一部を求めていたんだろう。

そして君ほど俺を理解して受けいれてくれなくて結局続かない。



そんなことを繰り返す俺をみて君はなんていうのかな?


君に俺だけを求めて欲しい。


でもそんな俺じゃきっと君は「今を楽しんで」っていうかもしれない。


「もう少し考えて付き合ったら?」とも言いそう。


君に誇れる俺じゃないことは確か。


君に好かれる俺じゃないことも真実。


君がここにいるのなら、絶対に離さないし、逃がすつもりなんてないけど。

本当にいないのか探すくらいしようかな?


でも君の言葉に嘘なんてなかったから、きっと無駄な努力ってわかっているんだ。

それでも外に行く時君を探さずにいられない。


君が言う壊れた俺ってこんな感じなのかな?


◆◆◆


ダンジョンの宝箱からいいものがでて、

高く売れたから今後の生活にちょっとだけ余裕が生まれたよ。


もし君がここにいたとしても、十分良い生活を送れる資金は出来たよ。


地球の記憶があったら不自由ばかりだからきっと君は嘆くだろうし。

衛生観念も恐怖しそうだから。


もし君が居たとしても俺の手は借りずにファンタジー世界を楽しんでいそうだけど……。


そんな現実がないと思いたい。


何処かでは俺を思い出してくれているよね?


「 」……あいつと一緒に居るなんて考えたくないけど。


「 」と笑いあっているなんて本当に腹が立つし、殺したいよ。


どうして君はいつも俺じゃない人を見ているの?


どうして俺より他の人がカッコいいっていうんだ!


俺と君だけの世界になればいいのに。


そうしたら俺以外のこと考えないよね?


ちゃんとここでも君の部屋を作ったんだよ。

前と一緒で、天蓋付きのベッドと上品なドレッサーも。

沢山コスメ用品も買ってシェアしてたよね。


君と一緒に過ごす時間が本当に本当にキレイだったんだ。


これで少しだけ前に近づけた気がした。


この部屋にいないのは君だけだよ。


君だけがいなくて、叫びながら部屋を壊しそうになった。


手を振り上げて、君ならきっと

「また自己コントロールできなくなっちゃったの?

 暴力は嫌いだよ?

 本当はコントロールできるよね?」


って空耳が聞こえた気がして、ゆっくり手をおろしたよ。


君の言葉のおかげで、この部屋は無事だった。



◆◆◆


また目が覚めた。


君が隣に居たら大好きな髪に触れて抱きしめるのに。

なんで君はここにいないんだろう。


誰が俺と君を引き離したのかな?


今君がここに居たら、君の部屋から君を出せないかもしれない。

でも君は、俺だけ冒険するなんて酷いっていうんだろうな。


ダンジョンに一緒に行けばいいじゃないっていいそうだ。

それか、出た宝箱の中身の価値で勝負しようとも言うかもしれない。


危険だから家にいて欲しいっていっても、

逆に俺が危険だから交互にしようって提案されて、

結局個々にいくなんて了承できなくて、一緒に行くことになる。


君が居たら毎日が楽しそうだ。

危険にさらすなんてしたくないから、

君がいつ来てもいいようにもっともっと不自由しないくらいにしたいんだ。


淡々とモンスターを狩る君の幻影が見えるときがあるんだ。

まるで一緒にゲームをプレイしているかのように。


君は魔法職で、俺は前衛だった?

プレイしたい職業がかぶったら大抵君が折れてくれたかな?

その時によって違ったかもしれない。

君は平等になるように色々考えてたみたいだけど。


いつ君が来てもいいようにどちらも出来るようにならないとって思ったんだ。

スキル制の上限有システムっぽい世界じゃなくてよかったよ。



そうでもしていないと、どうやってここで生きていけばいいかわからない。


君が欲しいのに君はいなくて、前に集めていた君の髪を持ってこれればよかった。

そうすれば君の人形でも作れたかな?


あの子は俺が集めた君の一部の存在を知っていたから一緒に葬ってくれたかな?

それなら俺の魂の中に君の一部があってもいいのに。


そうしたら色んな茶色の混じった指通りのいい髪にもう一度触れることが出来るから。

一時でも君を感じられて今を忘れることが出来るのかな?



◆◆◆


君に褒めて欲しくて、笑顔が見たくて

出来ることを増やしたり、努力しているうちに虫がたかる様になってきて煩わしい。


求めているのは君だけ。

でも前と一緒で君以外が俺には寄ってくるんだ。


「モテモテで選り取り見取りだよ?」って君は言うけど。

君以外いらない俺の心を分かってて言ってる?

あの時はまだわかってなかったと知ってるよ。

君も不安だったんだよね?


俺に遊ばれてるとでも思っていたのかな?

逃がすつもりも離すつもりも一切なかったけど。


君が、君が、君が、近くにきてくれたそれだけで本当に見えるものが変わったんだ。

あとは手に入れるだけ。

ゆっくりと着実にね。

急ぐと君は逃げてしまうから。


愛して愛して愛してあげるから。

俺だけを、俺だけを、俺だけをみて。

ずっとずっとそばにいて。

君の笑顔が、声が、言葉がないともう生きていけない。


ここでも同じ。

求めている、欲っしてやまない君はいないのに。

どうしてだろう?

表面しかみていない者が寄ってくる。


君は怒りそうだけど、対応も雑になるよ。

毅然とした態度でって君は言うかもしれないけど、無視が一番なんだ。

君以外と言葉すら交わしたくないのに。


早く帰って君の部屋でぼーっと過ごしたいよ。


◆◆◆


剣も魔法もそこそこまで行けるようになったよ。


相変わらずダンジョンはソロか、時折話が分かる奴と組むこともある。


まだこの身体は動くみたいだ。

君の近くに逝けるまでは長そうで本当に嫌になるよ。


寿命の長い種族じゃなくて人族だったから良かったけれど。


一番短いって程でもないかもしれないけど、死にやすい種族で職業でもあるから。

いつだって君のそばにいける準備は出来ているんだよ?


死に足掻かないと、君は「計画的自殺でしょう?」と言うだろうし、

俺は君を探せなくなるからきっと準備だけで終わるよ。


でもこの職業が一番スタイルにあっているし、金銭もいいんだ。

危険は伴うけど。


君はさ、俺に「私が居なくても貴方は夢を実現できたでしょう?」

って聞いたことがあったけど、君が居ないのに夢を実現出来ても、きっと満たされない。


君は何でもない俺を(いや、多少出来てたかもしれないけど)、無条件に信じてくれた。

表面より、内面を沢山好きになってくれて、

俺が考えていることを少しでも理解しようとしてくれたのが嬉しかったし幸せだったんだ。


それを言葉にだして伝えてくれたから、出来る限り思ったことを話すようにしたんだよ。


君は俺に沢山言葉で伝えてくれることを全然返せてないって言ったけど、

俺にはちゃんと返ってきていたから、さらに言葉を贈っていたんだ。


夢を実現出来て笑っていた俺と、君が隣にいて夢を実現できて笑っていた俺

同じ笑顔でも差があると自分でもわかる。

君が居た方がより幸福度が高いし、その先を目指せると思う。


だって君はあの時、「その先も掴み取れるでしょう?」って言っていたし。

君に「あなたが出来ない事は言わないよ?」って答えられると、俺は応えたくなるんだ。

俺の為でもあるし、でも君の為でもあるよね?


君は俺のこと好きだから。

俺が笑っていたり楽しそうにしていると嬉しいって。

不安でも言い切った言い方をすると君は「そうよ」って俺に笑顔をくれて安心させてくれる。


君の笑顔がこんなにも恋しいなんて。

今の俺を安心させて?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ