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正反対、でも…    作者: 影山 遥陽
1/1

part1

私の傷は誰にも見せない。

そう誓ったはずなのに、アナタにだけはなぜか心開いてしまう。

醜くて、痛々しいはずの傷をアナタは___。






日向(ひゅうが)さん」

クラスメートの秋山 佳澄(あきやま かすみ)さん達が私の名前を呼んだ。

「…!はい…?」

またなにかされるのではないかと構えてしまった。

私は今いじめを受けている。

秋山さんだけじゃない。

クラスのみんなに。

秋山さんはクラスの中心的な人物。

味方してくれる人もいる。でも、秋山さんの目の前で私の味方をする(逆らう)と、今度は私じゃなくて、味方をしてくれた優しい子までいじめられてしまう。

「今日うちら掃除当番なんだけど、うちらこれから遊びに行くから掃除当番代わってくれない?科学教室掃除なんだけど」

「科学教室ですか…!?あんなに広いとこ私一人でですか…?」

「そう、アンタ一人で。代わってくれるよな?」

「私も…これから用事があって…」

掃除が終わるまで帰れないし、あんなに広い教室を一人で掃除したらきっとすごく時間がかかってしまう。

「なに…?逆らう(いじめられたい)の?」

私には、拒否権はない。

「…ごめんなさい…代わります…」

「じゃあ、よろしく」

窓の外は夕焼けが綺麗だ。

オレンジの儚い光が差し込む廊下を一人で歩いていた。

一緒にお喋りをしながら歩けるような友達はいない。

「私は…ずっと一人なんだ…」

科学教室に着くと、誰もいなかった。

「よかった…。誰もいない…。誰かいたらどうしようかと思った…」

「あ、ごめん」

「わぁっ!?」

急に男の人の声がした。

「そんなに驚かないで?少しお昼寝してたとこなんだ」

お昼寝!?誰!?

私の頭の中はごちゃごちゃになってしまった。

「ごっ…ごめんなさい…お邪魔しました…」

「いや、いいよ。君は何しにここに来たの?」

「私は…科学教室掃除で…」

「科学教室掃除ってことは1年生だよね?あ、てか、そんなの上履きの色見れば分かるか」

1年生は緑、2年生は青、3年生は黒。

この人の上履きは黒だ。

この人は3年生なのか。

「お邪魔でしたよね…?すみません…」

「だから!気にしないでって。君、掃除当番でしょ?」

「そうですけど…」

「てか、掃除当番一人じゃないでしょ?」

「…一人です…」

掃除当番だけじゃない。

私はいつも、ずっと一人だ…。

「まじ?じゃあ俺も手伝うよ!」

「え」

予想外の言葉に言葉が出なくなった。

「一人でやったら、時間かかっちゃうでしょ?二人でやれば少し早く終わるでしょ?」

「いいんですか…?先輩、お昼寝してたんじゃないんですか…?」

「目が覚めちゃったし、いいよ~。その代わりさ、(後輩ちゃん)のこと、教えてよ」

「私で…良ければ…」

「やったね!じゃあやろうよ!」

そうして、私と先輩の不思議な時間が始まった。

私と先輩はホウキを持って掃除を始めた。

「名前はなんていうの?」

日向 羽美(ひゅうが うみ)です…」

「俺は鈴村 和叶(すずむら かずと)

「あっ…はい…」

会話が続けられない…。

「羽美ちゃんって呼んでいい?」

鈴村先輩…私は苦手なタイプかも…

「いいですけど…えと…」

私に…

「私に関わらない方が…鈴村先輩のためですよ…」

鈴村先輩は「はっ」としたような表情になった。

「羽美ちゃん…もしかして、いじめられてるの?」

「…」

科学教室には、梅雨の時期のような空気に包まれた。

お互い無言のまま、時間が過ぎた。

いつの間にか掃除が終わっていた。

「手伝ってくれてありがとうございます」

「おう、気にしないで」

私は逃げるように科学教室から出ようとした。

「あ、待って!」

「はい…?」

「連絡先、交換しようよ」

「え……?」

何を言っているの…?

連絡先交換…

誰と…?

また私の頭の中はごちゃごちゃになってしまった。

「嫌かな…?俺、もっと羽美ちゃんの話聞きたいかも」

「分かりました…」

私に拒否権はないのだ。

黙ってQRコードを差し出した。

「ありがとう!家帰ったらメッセージ送るね!」

初めてだ…。

誰かと連絡先交換したのは…。

ましてや男の人と。

今日は変な日だ。

きっと明日は台風だろう。

ふいに携帯が鳴った。

『今日は話してくれてありがとう』

鈴村先輩からだ。

「えぇ…なんて返したらいいの…?」

普段家族以外と連絡を取ることもないし…。

どうしたらいいか分からない…。

『私こそ、掃除手伝ってありがとうございます』

私がメッセージを送ると、すぐに既読がついた。

『1人でやるより、2人でやった方が早かったっしょ?俺、掃除好きだからさ』

『そうなんですか』

そう送ると携帯を閉じた。

カチャッ、と音を立てて真っ暗になる携帯がまるで私の心のようだった。








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