迷路へ
昼食を終えたクララ達は、予定通り迷路へと来ていた。迷路の数は、全部で五つ。どれもかなり巨大で、全部合わせた面積は、遊園地の三分の一を占める。
「五つの迷路は、それぞれ難易度が違うようですね。簡単なものから順にまわっていきましょう」
「はい」
リリンと一緒にアトラクションの説明を読んでいたサーファがある項目に目を付ける。
「あっ、全部攻略したら、景品が貰えるんだって。張り切って頑張ろう!」
「おー!」
クララとサーファは、張り切って迷路の中に入っていった。その後をリリンが追う。迷路の種類は生け垣型と石垣型の二種類となっている。最初は生け垣型の迷路だった。
「……景色が変わりませんね」
「まぁ、迷路ってそういうものだからね。また分かれ道だよ。次は、右と左、どっちに行く?」
「えっと……左です!」
迷路の攻略に関して、リリン達はあまり口出しをしない。クララが頼ってくるまでは、クララの行きたいように行くという事にしたのだった。
その結果、何度目かの行き止まりに辿り着く。
「また行き止まりです。ここって、さっき来た場所では無いですよね?」
「うん。違う場所だよ」
「じゃあ、さっきの分かれ道に戻って、逆に行きます」
「そうしよう」
最後に見つけた分かれ道に戻ってきたクララは、逆の道に向かう。そのまま進んで行くと、最初の迷路の出口に辿り着いた。
「出られました!」
「やったね! 最初の迷路攻略完了だ!」
クララは、サーファとハイタッチをする。
「良かったですね。ですが、後四つ残ってますよ。この紙に判子を押して下さい」
「は~い」
リリンから紙を受け取って、迷路を攻略した証である判子を押す。
「それじゃあ、次に迷路に行こう。二番目の迷路は、あれだって」
「早く行きましょう」
クララは、サーファの手を引っ張って、二つ目の迷路に向かう。二つ目の迷路は石垣で出来ていた。
「おぉ……何だか、さっきよりも狭い感じがしますね」
「さっきは生け垣で、今度は石垣だから、全体的に圧迫感があるんだと思うよ。さっ、中に入ろう」
「はい」
さっきとは違う雰囲気の迷路だったので、多少時間は掛かったが、何とか攻略する事が出来た。
「二つ目も攻略です!」
「順調だね。ほら、判子」
「ありがとうございます」
二つ目の判子を押したクララ達は、三つ目の迷路に挑む。今度は生け垣型の迷路だ。こっちも特に問題無く攻略する事が出来た。だが、四つ目の迷路の攻略を始めると、途端に行き詰まる事になった。
「?」
何十回目の行き止まりにクララは首を傾げる事になる。
「サーファさん、ここって」
「うん。さっきも来たところだね」
この確認ももう何度目なのか分からなくなっていた。
「えっと……迷っちゃいました……」
「だね。ヒント欲しい?」
「欲しいです!」
サーファの助けに、クララは全く葛藤せずに飛びついた。そのくらい攻略が絶望的な状況だったのだ。
「それじゃあ、クララちゃんが、同じ場所に行こうとしたら教えてあげるね」
「お願いします!」
そう言って、またクララは先頭を歩いて行く。
「サーファは、どのくらい把握していますか?」
「一応、来たところは完全に把握しています」
「それなら良いです。クララさんに教えてあげて下さい」
「はい」
サーファの手助けを受けて、ようやく四つ目の迷路を攻略する事が出来た。これまでの迷路を十分、二十分、二十分で攻略出来たのに対して、四つ目の迷路を攻略するのには、一時間近く掛かっていた。クララがかなり迷ったのもあるが、それ以上に難易度が跳ね上がりしていたのだ。
「これ、本当に子供向けですか?」
「看板には、小さなお子様には保護者が付いていく事をおすすめしますと書かれていました。子供向けは、最初の方だけのようですね。クララさん、どうしますか? ここで終わりにしておきますか?」
五つ目の迷路は、この四つ目の迷路よりも難しくなる。ここでリタイアしても仕方ないと、リリンは考えていた。
「やります! 迷路も楽しいです!」
リリンが考えていたよりも、クララのやる気は留まるところを知らないようだ。人族領では体験出来なかった事をたくさん体験しているので、テンション爆上がり状態なのだ。
「では、最後の迷路に挑みましょう」
クララ達は、最後の迷路に挑む。最後の迷路は、生け垣で出来た迷路だった。
「どうする? 最初から手助けしようか?」
「う~ん……最初は、自分でやってみます!」
「よし! 頑張って!」
四つ目の迷路と同じように、最初はクララの考えだけで進んで行く。そうして、二十分が経過する頃には、完全に迷っていた。
「うぅ……サーファさんお願いします」
「うんって言いたい事なんだけど、私も少し心配なんだよね。この迷路、全く同じ場所が複数あるから」
「確かに、確認しただけで六カ所程ありました。これが、最高難易度という事なのでしょう。サーファと協力して切り抜けてください」
「サーファさん! 頑張りましょう!」
「うん! そうだね! 取りあえず、一つ前の分かれ道に戻って逆方向に行こう!」
クララとサーファで協力し、迷路の攻略に挑む。サーファも若干惑わされていたため、少し時間が掛かったが、何とか攻略する事が出来た。この攻略にも一時間近く掛かった。
「この規模の迷路なら、もう遊園地とかじゃなくて、迷路だけで売っていった方がいい気がするんですが」
「まぁ、種族によっては簡単に攻略出来るでしょうから、難易度としては良いところなのかもしれませんね」
リリン達がそんな話をしている間に、クララは最後の判子を押す。
「五つの判子が揃いました!」
「やったね! それじゃあ、受付に行って、景品と交換しよう!」
「はい!」
クララは、サーファを連れて迷路の受付に向かう。そして、受付の係員に、判子が揃った紙を渡した。
「おめでとうございます! こちら景品になります!」
係員が取り出したのは、クララの身長の半分程もある熊のぬいぐるみだった。
「可愛いぬいぐるみだね」
「はい。ちょっと大きいですけど」
「そうですね。クララさんが持つのは大変でしょうから、預かりましょう」
「お願いします」
クララは、リリンにぬいぐるみを預ける。
「さて、他に行ってみたいところはありますか?」
「う~ん……特にないです」
「でしたら、少し遊園地の中を見て回ってから、帰りませんか?」
クララが遊びたいものがまだ残っている可能性も考えて、リリンは一度ぐるりと回ってみる事を提案した。
「良いですよ」
クララが同意した事によって、クララ達は遊園地をぐるりと見て回った。特にクララの興味を引くアトラクションは、中々なかった。
そんな中、一つだけクララが乗りたいと言ったアトラクションがあった。
「リリンさん、あれに乗ってみたいです」
「おや、クララさんにしては大人しいアトラクションですね」
それは、遊園地の入口近くにあった回転木馬だった。
「馬には乗った事が無いので、その気分だけでも体験出来たらと思いまして」
「そうでしたか。では、私達も一緒に乗りましょう」
クララとリリンは並んだ馬に乗り、サーファは一つ前の馬に乗った。他の客も乗っていったところで、動き始める。円状に回っていくだけでなく、乗っている馬が上下し出す。今までの刺激的なアトラクションと比べて、かなり穏やかなアトラクションだ。
それでもクララは、このアトラクションをとても楽しんだ。このアトラクションを最後に、クララ達は遊園地から宿へと帰った。昨日以上に遊び疲れたクララは、受け取った熊のぬいぐるみと共に、早々に就寝した。
明日は、魔物動物園に行く予定だ




